.

「風 を 読 む!」  経済記事スクラップブック 

(経済記事から)NO.8

※NO.をクリックするとその記事を見れます。(記事には一切手を加えていません)
 ※ページ作成者 去ト立不動産 柴立俊朗

総合目次へ戻る   トップページ   mail

記事‐8  目   次
NO. 記事年月日 記 事 元   記  事  内 容
150 2007/02/16 nikkei  小糸九州、工場増設へ
149 2007/02/01 nikkei  不動産ファンド 投資加速
148 2007/01/24 nikkei  遊休不動産 活用へ団結
147 2007/01/12 nikkei  人口、再び大都市集中
146 2006/12/19 nikkei  賃上げしない理由 {大機小機」より
145 2006/12/06 nikkei  上場企業 配当 最高の4兆5000億円
144 2006/11/10 南日本  鹿県人口 20年後22万人減
143 2006/10/04 nikkei  流れ込む不動産マネー 収益性で国土を3分
142 2006/09/09 nikkei  人口自然減 21,266人
141 2006/08/31 nikkei  家計の株・投信 値上がり益最高62兆円
140 2006/07/28 nikkei  キャノン純利益22%増・・・ほか
139 2006/07/16 南日本  不動産証券化 地方に拡大
138 2006/07/15 nikkei  ゼロ金利解除 5年4ヶ月ぶり
137 2006/06/24 南日本  国の借金 827兆円
136 2006/06/15 nikkei  民間企業 資金調達 10年ぶり増 
135 2006/05/20 nikkei  銀行資産再び拡大 
134 2006/05/02 nikkei  余裕資金 4年ぶり減 企業、設備投資に充当
133 2006/04/30 南日本  大手銀行最高益3兆3000億円
132 2006/04/15 nikkei  工場立地、20%増
131 2006/03/24 nikkei  2006年 地価公示
130 2006/03/05 nikkei  バブル論の杞憂
129 2006/02/08 nikkei  膨らむ 不動産マネー
128 2006/01/26 nikkei  中国9.9%成長 
127 2006/01/12 南日本  地銀の不動産融資急増
126 2005/12/31 nikkei  株式市場 記録ずくめ 日経平均、今年4割上昇
125 2005/11/18 nikkei  三菱UFJ 純利益 6350億円
124 2005/10/18 nikkei  ご異見 拝聴 @
123 2005/09/21 南日本  鹿中央駅周辺 商業地が上昇(基準地価発表)
122 2005/09/21 nikkei  基準地価(都道府県地価調査)発表
121 2005/09/14 南日本  外資の不動産買収急増
120 2005/08/23 nikkei  (不動産) 資金流入続く、二極化鮮明
119 2005/07/09 週刊ダイヤ  これから買っていい不動産は
118 2005/06/25 南日本  国の借金781兆円 地方含め初の1000兆円台
117 2005/05/15 nikkei  地価下げ止まりは本物?
116 2005/03/26 nikkei  国の借金 最悪751兆円 昨年末
115 2004/12/26 南日本  危機の財政
114 2004/12/11 南日本  ドバイに世界最高層ビル
113 2004/11/20 nikkei  【大機小機】 「地価は十分下がったか」

 トップページ

目次へ戻る


.

NO.150  2007/02/16(金) 日本経済新聞より

 小糸九州、工場増設へ

 照明器、生産能力1.5倍に

 自動車生産増に対応


 小糸製作所の生産子会社、小糸九州(佐賀市、菊池光雄社長)はヘッドランプなど自動車用照明器工場の増設を検討する。
九州などの自動車生産台数が予想以上に伸びていることから、2009年度にも生産能力を現在の約1.5倍の年間百五十万台に引き上げる必要があると判断した。工場操業からわずか四ヶ月で生産体制を抜本的に見直すことになった。

 小糸九州は小糸製作所の本拠地である東海地区以外では初めての国内主要工場。昨年十月の操業開始当初は年間百万台のフル生産時期を09年度中と想定していたが、08年度中にほぼフル操業に近い年間九十五万台生産に達する見込み。

 現在
、トヨタ自動車九州(福岡県宮若市)向けのハリアー、レクサス用ヘッドランプ、コンビネーションランプ、標識灯のほか、ダイハツ九州(大分県中津市)向けにミラ、アトレー、ハイゼット用ランプも生産。今年五月以降は日産自動車九州工場(福岡県苅田町)向けの大型車、中型セダン用も生産する予定。このほか中国地区のマツダ、三菱自動車向けのランプ製造も想定している。

 
このため、佐賀市の久保泉工業団地にある敷地(約八万千四百平方メートル)内の工場増床の検討に入った。現在は一つの工場(延べ床面積約三万二千六百平方メートル)でヘッドランプ類と標識灯の製造ラインを混在させているが、現在の駐車場用地に標識灯専用工場を新設してラインを移管。 更に近隣の工場用地を確保する方向で検討している。

 操業開始時で三百二十二人(小糸製作所からの出向十五人を含む)の従業員数も大幅に増やす。

 
今年四月に四百五十人体制にするほか、08年度に計画していた約八百人の人員計画も見直す。新規採用では「製造ライン従事者のほかに管理者の増強も進めていく」(菊池社長)方針だ。



目次へ戻る
.

NO.149  2007/02/01(木) 日本経済新聞より

 不動産ファンド 投資加速

 モルガン 最大二兆円規模

 国内勢 昨年末 十一兆円に


 

 国内外の不動産ファンドが投資を加速している。外資では米モルガン・スタンレーが日本で新たに最大二兆円規模の投資に踏み切るほか、米大手のブラックストーン・グループも参入を決定。国内勢の運用資産も約十一兆五千億円と、一年前に比べ約五割増えた。ただ、優良物件を巡る取得競争の激化で都心部では過熱感も出ており、資金力や運用実績でファンド間の格差が広がりそうだ。

 
都心部に過熱感も

 モルガンは近く、世界の不動産に投資する新ファンドの資金調達を完了する。機関投資家などから
総額八十億ドル(約九千六百億円)を集め、現段階では世界の不動産ファンドで最大規模だ。同社は東京都心部のオフィス空室率低下などから「今後も賃料上昇が見込める」としており、総資金の最大四割程度を日本に振り向けると見られる。

 モルガンの日本の不動産投資はすでに約二兆円と外資最大。外部から調達する借入金も加えて、今後数年の投資余力はこれに匹敵する規模になる。

 
ブラックストーンは、百億ドル(約一兆二千億円)超の不動産ファンドの募集準備に入っており、調達資金の一部を日本に振り向ける意向。同社は全日本空輸が昨年末から買い手を募っている十三ホテルの入札に名乗りをあげ、有力候補に浮上しているようだ。

 【不動産ファンド】
 投資家から資金を募って不動産を取得し、賃料収入や物件の売却益を配当として分配する金融商品。 
証券取引所に上場する不動産投資信託(REIT)と私募ファンドの2種類がある。オフィスビルや賃貸住宅に投資するファンドが代表的だが、より高い利回りを求めて商業施設やホテルに投資するものもある。
REITの運用期間は無期限であるのに対し、私募は3〜7年程度。ファンド資金に借入金を加えて投資額を拡大、出資金の利回り引き上げを狙う
REITの投資家は個人が約4割を占め、私慕には金融機関や年金資金の流入が増えている。


     (主な国内不動産ファンドの運用資産規模)

     ダヴィンチ・アドバイザーズ 9614億円(06年12月)
     パシフィックマネジメント  8293億円(06年11月)
     日本ビルファンド      7193億円(06年11月)
     シンプレクス・インベストメント・アンドバイザーズ5383億円(06年9月)

      


目次へ戻る
.

NO.148  2007/01/12(水) 日本経済新聞より

 遊休不動産 活用へ団結

 三井物産戦略研など7社・団体

 管理者を育成

 

三井物産戦略研究所など七社・団体は24日、企業が保有する不動産の有効利用を推進する企業連合を設立する。不動産の価値を正確に把握し管理するソフトの標準化や、人材育成などに取り組む。日本企業の総資産の4割は不動産だが、適切に運用されていない場合が多い。遊休資産を活用し、経営効率化に役立ててもらう狙い。

 設立するのは「CREマネジメント推進コンソーシアム(CREC)」。
参加するのは物産戦略研のほか、サン・マイクロシステムズ日本法人、伊藤忠テクノソリューションズ、三井情報開発などIT(情報技術)企業や日本土地建物など。不動産鑑定士の団体である日本不動産カウンセラー協会も立ち上げに加わる。参加企業は今後も増やす。

 CRECは企業経営者が自社の保有不動産の価値やリスクを的確に把握できる管理ソフトを開発する。欧米で標準化されているデータベースの規格を基に、日本の企業会計などにあったシステムに仕上げ、遊休不動産の証券化などにも活用できるようにする。

 開発したシステムは参加企業が販売するほか、ソフトの期間貸し、(ASP)などの形態でサービス提供することも視野に入れる。不動産の総合的な管理・運用に不可欠な人材の育成も手掛ける。

 
日本企業が保有する資産の三十六パーセントは不動産。国内不動産資産二千二百兆円のうち、約五百兆円分を企業が保有している。だが、総資産に占める割合が高いにもかかわらず、情報管理の不徹底などからあまり有効活用されず、死蔵されていた。

目次へ戻る
.

NO.147  2007/01/12(金) 日本経済新聞より

 人口、再び大都市集中

 東京圏転入超過 バブル期並み

 名古屋圏も高水準

 

 
大都市への人口集中が再び加速している。総務省の住民基本台帳の人口移動報告によると、昨年は東京圏に移り住んだ人が転出した人の数を十三万人強上回り、バブル期並みの多さになったもよう。名古屋圏への転入超過も1970年代初め以来の高水準。景気回復が続く中、雇用環境がより良い大都市への移住に拍車がかかった。地方に手厚い公共投資の見直しや地方財政の運営効率化につながる道州制の導入など、政策面での議論も急務になりそうだ。

 公共投資、見直し急務

 人口移動報告は人の移動を把握する調査。昨年十一月までの実績値を基にした2006年の推計値は東京圏(神奈川、埼玉、千葉県を含む)への転入超過数が05年より一万九千人多い十三万四千人と87年の十六万三千人に迫る見通しだ。

 雇用の受け皿増加

 東京圏への移住はバブル崩壊後に減速。94‐95年に転出超過になったが、景気回復でサービス業などを中心に雇用の受け皿が増加。地方からの移住が再び増えてきた。02年から五年間の転入超過数の合計は五十八万人と、バブル期の累積五十一万人を上回る。これが少子化の影響を超えて同圏の人口が増える結果にもつながった。

 名古屋圏(愛知、岐阜、三重県)でも03年から移住が転出を上回り、06年の転入超過数は一万八千人と高度成長期後の73年に肩を並べる規模になるもよう。東海地区の有効求人倍率が1.6倍と突出して高いことが背景にある。

 三大都市圏では唯一、大阪圏(大阪、京都府、兵庫、奈良県)が一万四千人弱の転出超過となった見込だが、その幅は86年以来の低い水準に縮まった。

 生産性向上効果も

 地方圏は少子化による自然減と大都市への流出で人口減少が一段と加速する。ただ、地方圏でも福岡市や札幌市、広島市などの中核大都市は転入超過が進んでいる。

 大都市への人口集中は日本全体の人口が減少に向かう中で、公共サービスなどを効率化し、日本の生産性を高める効果があるとの指摘がある

 マンション建設が活発な東京都では港区や八王子市などで学校にプレハブ校舎を建て、生徒数の急増に急きょ対応する例も出ている。

 地方に手厚い公共投資のあり方を見直し、大都市のインフラ整備をより拡充する必要も高まりそうだ。

 逆に人口減が加速する地方では財政運営がさらに厳しくなる可能性もある。都道府県と市町村を合わせた05年度の地方税収は前年度比一兆三千億円増えたが、半分は東京都と愛知県、千葉県での増加分。地方は景気回復の恩恵も限定的だ。
 

目次へ戻る

.

NO.146  2006/12/19(火) 日本経済新聞より

 「大機小機」より

 賃上げしない理由


 企業利潤は増えたが、賃金が上がらない。そのため、せっかくの長期景気回復も実感できず、経済沈滞色が払拭されない。こういう声が高まってきたように思える。

 しかし、もし当事者が賃金を上げれば経済がうまくいくと確信しているならば、当事者自ら賃上げを図るであろう。特に勤労者の利益を代弁すべき労働組合が真っ先にその声を上げるはずである。だが、これまではボーナス増額を勝ち取る程度で、声高な要求は聞こえてこない。

 当事者に聞いて回ったわけではないが、私には労使の慎重さには根拠があるように思える。

 
グローバル化は人口大国中国・インドなどを世界市場に組み入れ、その急成長を促した。そのことで現在の世界市場は従来の豊かな西欧社会に比べて労働力が豊かになった。それだけ先進国では賃金が上がりにくくなっている。

 
新興国の発展はその技術向上を促した。経済理論では技術が同水準(生産関数が同じ)で、貿易が自由なら生産要素価格(賃金、利潤)は均等化するという定理がある。技術差が縮小するだけでも均等化圧力がじわじわ効いてきておかしくない。資本移動が活発化すればなおさらだ。

 景気回復について中国特需説が唱えられてきた。確かに輸出は大きいが、輸入も大きい。本年上期についてみると日本の対中国本土経常収支は1.2兆円の赤字、これに香港を加えて約八千億円の黒字で対韓国の六割にすぎない。

 この期間に日本の対中国(本土と香港)直接投資は五千億円に達した。直接投資はそれに伴って現地向け資本財、生産財の輸出を拡大しただろう。一方、工場の現地進出で工程間分業が深まり、現地の付加価値を含めた価格で生産財、消費財が日本に逆輸入される場合もあるはずだ。

 
直接投資の立地選択や工程間分業は、日本の賃金と中国のそれをじかに比較する。グローバル化の中で投資立地競争の優劣は、当事者には肌身にしみて感じられる。さりとて海外投資をやめれば企業規模の拡大は望めず、海外利益もなくなり、さらに行き詰まる。

 日本が高コスト国になり、追いつかれる側に回った現実は、1980年代半ばから続いている。
イノベーションに成功し生産性を高めない限り、デフレに耐える状況は完全には克服できないのだ。
(逆境)  


 トップページ

目次へ戻る

.

NO.145  2006/12/06(水) 日本経済新聞より

 上場企業 配当 最高の4兆5000億円

 自社株買い5兆円超


 上場企業が株主への利益配分を拡大している。2007年3月期に株主に支払う配当金の総額は、前期比10%増の4兆4900億円と、過去最高を更新する見通しだ。自社株買いも4〜11月で五兆円を突破。すでに過去最高だった前期を上回った。好調な業績に連動して利益配分を拡大する企業が増えている。ただ、配当は利益の増加ほど伸びず、配当性向は横ばいにとどまっており、投資家から一段の利益配分を求める声が高まる可能性もある。

 
今期 業績連動で株主配分

 配当金の総額は、三月期決算の上場企業(金融、新興市場を除く)のうち、03年3月期から継続比較可能な計千八百一社を対象に集計した。

 増配が目立つのは、為替相場の円安を追い風に利益を伸ばす輸出関連企業。自動車・部品は配当総額が20%増える。日産自動車は年間配当を五円増の三十四円とし七期連続で増配する。

 電機も配当総額が13%増える。松下電器産業が1.5倍の30円、シャープは2円増の24円と七期連続の増配を予定。集計対象ではないが、みずほファイナンシャルグループが三千円増の七千円にするなど、大手銀行でも増配が目立つ。

 自社株買いも活発だ。野村證券の集計では4〜11月の自社株買い実施額は約五兆四千三百億円(速報ベース)で、過去最高だった前期の五兆一千億円を超ええている。

 武田薬品工業は今期から初めて自社株買いを始め、すでに千五百億円超を買い入れた。JFEホールディングスも11月に千二百億円を上限とする自社株買いを初めて実施すると発表。
自社株買いは株式を市場から吸い上げ、一株利益の増加につながるため、利益配分と位置づけられる。

 相次ぐ増配や自社株買いの背景には、配当性向など株主配分に関するする目標値を明示する企業が増えていることがある。東京エレクトロンは連結配当性向20%を公約。ホンダは純利益の三割を配当と自社株買いにまわす方針を表明している。

 各企業は将来の成長に向け設備投資も加速。九月中間期の上場企業の純現金収支はマイナスとなった。本業で稼いだ以上の投資をしたことを意味するが、この数年の業績回復で手元資金は積みあがっており、株主配分の原資は以前豊富だ。

 もっとも、今期の上場企業全体の連結配当性向は前期比0.6ポイント減の24.5%と、04年3月期以降ほぼ横ばいが続いている。一方、米国の05年度実績はS&P500ベースで29%に達しており、日本の配当性向は米国をなお下回る。

 トップページ

目次へ戻る

.

NO.144  2006/11/10 (金) 南日本新聞より

 鹿県人口 20年後22万人減

 65歳以上3割超

 超高齢化対策が急務


 鹿児島市の鹿児島地域経済研究所が行った県の将来人口推計によると、県人口は2025年に百五十三万四千六百十三人になり05年の百七十五万三千百八十人を12.5%下回ることが分かった。65歳以上の割合を示す高齢化率は24.8%が32.3%に伸び、三人に一人が高齢者となる見通し。

 同研究所は「国に十年先行する形で高齢化が進んできた鹿児島県では、人口減少と超高齢化が一層深刻化する事態を前提とした対策が急務」と指摘している。

 05年の国勢調査(速報値)を基に、生残率や社会移動率などを勘案して五年ごとの数値を県全体、各市町村、別々に算出した。ただ、町村別推計人口は規模が小さく誤差が生じやすいため郡単位でまとめた。

・・・・中略・・・

 低位推計では、県人口は20年に百六十万人を割り込み、25年には百五十一万人になる。

・・・中略・・・

 25年推計人口は、姶良町を除く全市町村で減少する。支部の減少率は大口市の29.6%が最も高く、郡部は肝属郡の32.9%が最高。鹿児島市は10年まではわずかに増加するが、15年には減少に転じ、20年には六十万人を割り込む。霧島市は15年までは増加が続くが、20年からは減少に転じる。

 一方、高齢化は全市町村で進み、25年には高齢化率40%以上が11市町村となる。最も高くなるのは宇検村の49.7%、次いで南大隅町47.8%、錦江町45.1%などとなっている。

最も低いのは霧島市26.7%姶良町28.1%鹿児島市28.5%と続く。

 調査報告した古江孝徳研究主査は「机上の計算であり、今後の社会情勢や住環境の変化によって、大きく異なることも考えられるが、人口減少、高齢化対策を検討する上で目安となる」と説明している。




 トップページ

目次へ戻る
.

NO.143  2006/10/04(水) 日本経済新聞より

 流れ込む不動産マネー

 収益性で国土を3分


 不動産投資マネーの伸びが加速している。投資先は東京以外にも広がり、収益性という尺度で国土を再評価し始めた。投資対象となった地方では地価が上昇、一方、対象外の地方は下落が続いている。

 九月末、不動産投資信託(REIT)の日本リーテルファンド投資法人が京都市中京区の商業ビル、河原町のOPAを買った。取得価格百八十五億円はREITによる取得では京都で最大。同区では地価上昇率が30%を超える地点が現れた。

 REITの六月末の投資残高は四兆四千二百億円。前年同期比70%増え、増加率は前年の53%を上回った。私募ファンドの投資残高は六兆円超で、不動産投資マネーは十兆円を超えた。

 金融庁は銀行にREIT向けなど不動産融資を慎重にするよう求めている。しかし個人や海外からREITへの資金流入は止まらず、それが不動産投資に向かっている。

 地価押し上げ

 マネーは一律ではなく収益性で不動産を選別しながら地方に向かう。それによって国土は三極化の様相を呈している。

 ひとつは、再開発で不動産の収益性が上がり、マネーが流入している地域。東京23区と名古屋、大阪の中心部だ。

 景気回復を背景に企業のビル取得意欲が強い。オフィス空室率が低下し、賃料が上昇。この収益性向上が地価を押し上げている。好循環は二、三年続くとの見方が多い。

 二つ目は、地域分散などの目的でマネーが流れ込む地域。東京の優良物件の投資利回り低下が背景で、東京、大阪の周辺と地方中核都市が中心だ。

 駅前の再開発やバイバス沿いのショッピングセンターなど一部の収益物件にマネーが流入。収益性向上は局所的で東京のように面的な広がりはないものの、地価は下げ止まり感が出始めた。

 そうしたマネーの流入県では経済の正常化が進む。約二年前からREITが投資を始めた岡山市では中心部で地価が上昇。地価下落が経営を圧迫しなくなった中国銀行は地場企業向け貸し出しに力を入れている。

 空白県は低迷

 ただ、地方の不動産市場は規模が小さく、マネーの流入が急増すると収益性の伸びを大幅に超えて地価が上がる。京都のほか千葉、神戸、札幌などで、、そうした地価のゆがみが広がっている。

 三つ目はマネーが流れ込まない空白県だ。収益の見込める投資物件がほとんどないため、マネーに見放された格好だ。

 十六の空白県の商業地の地価下落率は平均で5.4%。地域金融機関の不良債権の減少ペースは緩慢で、貸し出し余力が限られる。そのため景気低迷が続きやすく、マネーをひき付けられない悪循環から抜けきれない。

 収益性で動く投資マネーが地価の格差を広げるのは確か。ただ医療施設、リゾートなど地方で成り立つ投資物件もある。

地方に必要なのは補助金獲得ではなく、REITマネーをひきつける創意工夫にほかならない。
(編集委員 太田康夫)


 トップページ

目次へ戻る
.


NO.142  2006/09/09(土) 日本経済新聞より

 人口自然減21,266人
 
 昨年確定、厚労省推計の2倍超


 2005年の人口の自然減少数は二万一千二百六十六人。厚生労働省が八日に発表した人口動態統計で、現在の形式で統計を取り始めた1899年(明治32年)以降で初めての自然減が確定した。厚労省は昨年末に公表した同統計の推計で、自然減が始まったと指摘していたが、規模は当初推計(一万人)の二倍超。改めて日本が人口減少社会に突入したことを印象づけた。

 確定数によると、出生数は百六万二千五百三十人で、前年より四万八千百九十一人減。死亡数は百八万三千七百九十六人と前年より五万五千百九十四人増。出生数から死亡数を引いた自然増加数は二万一千二百六十六人のマイナスとなった。

・・・・・中略

白書は急激な人口減少は、国や社会の存立基盤にかかわる問題」と指摘。国民の間にも不安が生じているとして、少子高齢化が進んでも機能する社会の安全網を調える必要があるとしている。

 トップページ

目次へ戻る

.

NO.141  2006/08/31(木) 日本経済新聞より

 家計の株・投信

 値上がり益最高、六十二兆円

 昨年度 個人消費後押し


 
個人が保有する株式や投資信託の値上がり益(含み益と売却益の合計は2005年度に六十二兆四千億円と、過去最高となったことが日銀の資金循環統計で明らかになった。名目国内総生産(GDP)における個人消費約二百九十兆円の二割強に相当する。投資利益が家計を下支えし、個人消費を後押しする要因になっていることがうかがえる。

 
日経平均株価は今年三月末までの一年間に46%上昇し五年七ヶ月ぶりに一万七千円台を回復した。資金循環統計によると、株価上昇などに伴って家計の「株式・出資金」と「投資信託」の値上がり益が膨張。04年度の14.3倍となり、これまで過去最高だった1999年度の五十一兆八千億円を大幅に上回った。

 五月以降、日経平均は下落し、一時1万4千円台まで落ち込んだ。しかし八月に入ってからは回復基調に戻り、家計の値上がり益も再び増加に転じたもようだ。

 
家計が保有株式などから得る配当所得も大幅に膨らんでいる。

 日銀の推計によると
05年度は六兆三千億円に達し、前の年度に比べ三割近く増えたと見られる

 第一生命経済研究所の熊野英生主席エコノミストは「個人は株価が上昇すると常に一定の利益を確定する。05年度はその額が約二兆円に達しており、七割が消費に回ると名目個人消費を0.5%押し上げる効果がある」とみている。

 ゼロ金利政策の解除後も預金金利の上昇はわずかにとどまっているだけに、
「貯蓄から投資へ」の流れは当面続くとの見方が多い。


目次へ戻る

トップページ
.

NO.140  2006/07/28(金) 日本経済新聞より

 キャノン純利益22%増 6月中間 

 カラー複写機などけん引

 デジカメの販売拡大


 キャノンが27日発表した2006年6月中間期の連結決算(米国会計基準)は、純利益が二千百四十一億円と前年同期比二十二%増えた。カラー対応の複写機やデジタルカメラの販売が世界で拡大。円安も寄与した。06年12月期通期の業績予想を上方修正し、7期連続で最高益更新となる。年間配当は百円で、6月末に実施し株式分割前を基準にした比較では実質25円の増配となる。

 中間期の売上高は11%増の一兆九千五百二十二億円。デジカメはコンパクト、一眼レフともに増え、販売台数は25%増。金額ベースでも24%増収となった。主力事務機はカラー多機能複写機やレーザービームプリンターがけん引し、7%増えた。

 営業利益は三千三百八十四億円と25%増えた。デジカメや事務機の増収効果に加え、調達先の絞込みなど原価低減が貢献。為替がドル、ユーロともに円安で推移したこともあり、前年同期に比べて営業利益で四百三十億円の押し上げ効果があった。

 06年12月期通期の売上高は前期比10%増の四兆千三百億円と初の四兆円のせ、純利益は15%増の四千四百億円を見込む。売上高は為替影響を考慮して従来予想より百億円下げたが、純利益は八十億円引き上げた。けん引するのはデジカメで、「下記も一眼レフ本体や交換レンズで高い収益を維持できる」(田中捻三専務)とみている。

 これまで期末配当を四十円としていたが、業績が好調なことから十円増配する。キャノンは6月末に1対1.5の株式分割を実施済み。分割前基準で計算すれば、今期(前期は百円)中間期末50円、期末75円で計125円となる。



 
 京セラ増益 2.1倍に 4−6月税引き前

 部品事業が好調

 
 京セラが27日発表した2006年4−6月期の連結決算(米国会計基準)は、税引き前利益が前年同期比2.1倍の三百六十九億円となった。デジタル家電向けの部品が好調だったうえ、携帯電話端末など機器事業の損益が改善した。売上高は10%増の二千九百二十六億円、純利益は2.3倍の二百億円だった。前年同期が部品需要の低迷期だったため、伸びが大きかった。

 部品事業は携帯電話端末や薄型テレビ向け部品の需要が拡大したほか、半導体製造装置用セラミック部品も伸びた。部品価格の下落は平均5−10%にとどまり、数量増で吸収した。機器事業では国内で携帯端末やPHS端末が好調。米携帯子会社や光学機器の損益も改善し、部門の税引き前利益が黒字転換した。

 会見した川村誠社長は「業績は期初計画を上回った。7−9月も電子部品需要は高水準で推移しそう」と語った。ただ07年3月期通期は原材料高など不透明要因があるため従来予想を据え置いた。




 TDK 営業益40%増 4−6月

 TDKが27日発表した2006年4−6月期の連結決算(米国会計基準)は営業利益が前年同期比40%増の百八十億円だった。薄型テレビやパソコン向けのコンデンサーや電源系コイルの販売が増加した。ハードディスク駆動装置(HDD)用磁気ヘッドも大口顧客向けが減少したが他用途で補った。売上高は22%増の二千三十六億円。・・・・・・・・以下省略




 コマツ純利益23%増 今期

 建設・鉱山機械伸びる


 コマツは27日、2007年3月期通期の連結純利益(米国会計基準)が、従来予想を二百十億円上回り前期比23%増の千四百十億円になりそうだと発表した。資源開発需要の拡大などで、想定以上に建設・鉱山機械が伸びる。・・・・・・以下省略





 トヨタグループの4−6月

 主要9社、経常増益に

 関東自除き2ケタ増収


 ・・・・・省略



 ヤマダ電、経常益19%増 4-6月

 サッカーW杯追い風

 大型薄型テレビ好調

 ヤマダ電機が27日発表した2006年4−6月期の連結業績は、経常利益が前年同期比19%増の八十六億円だった。サッカーワールドカップ開催も追い風に、大型薄型テレビの販売好調がけん引した。9月中間期、07年3月期通期の見通しは据え置いた。

 売上高は三千二百五十六億円と18%増えた。店舗数は六店舗の純増。台数や平均単価が伸びる傾向のテレビはワールドカップ直前の5月から6月初旬にかけて売れ行きが加速した。洗濯機などの白物家電や調理家電も高価格品が人気で営業利益は29%増え四十九億円となった。純利益は13%増の五十億円弱。

 ワールドカップ終了後も、大型薄型テレビの好調は持続。天候要因で6月は不振だったエアコンが7月に盛り返すなど、第2四半期も順調に推移している模様。




 住友電、営業利益10%増 4―6月

 情報通信が黒字転換




 
 旭化成、営業益12%増 4―6月



 オムロン営業益 4―6月 5%増

 ニコンの純利益 4―6月 90%増 

 日電産、営業益57%増 4―6月

 いすず純利益 4―6月 44%増
 

目次へ戻る

トップページ
.

NO.139  2006/07/16(日) 南日本新聞より

 不動産証券化 地方に拡大

 専門家 一万人育成  

 国交省方針


 国土交通省は15日、不動産を証券の形で投資家に売る不動産証券化市場を地方に拡大させるため、専門知識を持った不動産鑑定士などの人材を育成する計画を2007年度からスタートさせることを決めた。

 5年間で一万人の証券化スペシャリスト育成を目指す。同年度予算概算要求に盛り込む方針。

 不動産証券化は、ビルやマンションを証券化して資金を調達し、不動産に投資。賃料などの収益を投資家への配当金に充てる仕組み。バブル崩壊後の不良債権処理を目的に始まったが、低金利下で投資家のニーズの高まりなどを受け、急速に拡大した。

 しかし証券化対象の物件は東京など大都市のオフィスビルに集中し、地方は、市場から取り残されているのが現状。国交省は、地方の活性化や日本の市場全体の底上げのためにも、地方への普及が不可欠として、対策を検討していた。

 証券化には金融や不動産の高度な知識が必要とされており、同省は、地方の不動産、金融関係者や、Uターン、Iターン希望者らを対象にした研修を支援する。

 このほか地方の不動産業者らが実験的に証券化事業を実施する際、不動産鑑定の費用などを助成する制度も創設する。


 トップページ

目次へ戻る
.

NO.138  2006/07/15(土) 日本経済新聞より

 ゼロ金利 解除 5年4ヶ月ぶり

 「連続利上げ 意図せず」日銀総裁

  景気は拡大過程
 
 日銀は十四日の政策委員会・金融政策決定会合で、短期金利をほぼゼロ%に抑え込んできた「ゼロ金利政策」の解除を全員一致で決めた。政策的に誘導する無担保コール翌日物金利の目標をゼロから0.25%に引き上げ、即日実施した。福井俊彦総裁は同日の記者会見で、先行きの金融政策運営について「連続利上げを意図しているということではない。金利水準の調整は経済・物価情勢を見極めながらゆっくりと進めて行く」と述べ、追加利上げを急がない方針を強調した。

 政策金利の引き上げは2000年8月のゼロ金利解除以来、ほぼ六年ぶり。短期金融市場で金利が復活するのは、01年3月の量的緩和政策の導入で翌日物金利がゼロ%になって以来、5年4ヶ月ぶりとなる。

 ・・・・・・中略

 日銀は十四日発表の七月の金融経済月報で、足元の景気判断を前月までの「着実に回復」から「緩やかに拡大」に変更した。経済全体の需要と供給の差を示す「需給ギャップ」が需要超過に転じたためだ。福井総裁は「デフレに戻るリスクはほぼ解消している」と強調した。

 日銀は会合後に声明を発表、ゼロ金利を続けると「将来、経済・物価が大きく変動する可能性がある」と指摘。景気過熱を防ぎ、息の長い景気拡大を実現するための解除だと説明した。今後の金融政策については「極めて低い金利水準による緩和的な金融環境が当面維持される可能性が高い」と表明した。連続利上げの意図を否定した福井総裁の発言は、ここ二年間の米連邦準備理事会(FRB)のように連邦公開市場委員会(FOMC)のたびに利上げをする展開を想定していないことを強調したものだ。

 金融機関が日銀に担保を差し入れて資金を借り入れる「補完貸付制度」の基準金利(公定歩合)も、現行の0.1%から0.4%に引き上げることを六対三の賛成多数で決めた。長期国債を市場から毎月一兆二千億円ずつ買い入れる措置を当面継続する方針も決定した。

 金融政策変更の骨子
○ゼロ金利政策を解除し、無担保コール翌日物金利を0.25%前後で推移するように促す
○金融機関が日銀に担保を差し入れて資金を借りる「補完貸付制度」の基準金利(公定歩合)を現在の0.1%から0.4%に引き上げる
○長期国債の買い入れ額は現在の月額1兆二千億円を維持する。
○先行きについては、極めて低い金利水準による緩和的な金融環境が当面維持される可能性が高い。
○景気の現状判断を「着実な回復」から「拡大」に変更する


トップページ

目次へ戻る

.

NO.137  2006/06/24(土) 南日本新聞より

 国の借金 827兆円 (06年3月末時点) 

 国民一人当たり 648万円

 財務省は23日、国債と借入金、政府短期証券を合わせた国の債務残高(借金)が2006年3月末時点で八百二十七兆四千八百五億円になったと発表した。05年3月末に比べ四十五兆九千二百八十八億円増えた。国民一人当たり約六百四十八万円の借金を抱えている計算になる。

 増加分の大半は国債分で、05年3月末に比べ四十四兆二千百六十一億円膨らんだ。05年度の新規発行国債は抑制傾向にあったが、これまで発行した国債を償還するための借款債発行が増えており、厳しい財政状況が続いている。
 
 景気回復により国の05年度税収は当初見込みより約五兆円増の四十九兆円台になる見通しだが、借金残高はその約十七年分に当たる。
 

 トップページ

目次へ戻る

.

NO.136  2006/06/15(金) 日本経済新聞より

 民間企業 
 資金調達 10年ぶり増
 昨年度 設備投資やM&A活発

 
 
日銀が15日発表した2005年度の資金循環統計によると、金融機関を除く民間企業が資金調達した金額(新規調達から返済を差し引いた金額)は十二兆二千億円となり、十年ぶりに増加に転じた。

 過剰債務の圧縮にメドをつけた企業が株式発行や銀行借入を積極的に活用し、設備投資やM&A(企業の合併・買収)向けなど資金調達に動いたもようだ。
 
 企業が抱える金融負債残高(借り入れや株式・出資金、社債などの合計。簿価ベース)は06年3月末時点で八百四十一兆円と、年度末ベースでは十年ぶりに増加に転じた。バブル崩壊後に過剰債務を抱えた企業は借金の返済を優先、負債を圧縮してきたが、こうした傾向に歯止めがかかった。

 企業は金融機関などからの借入金を04年度に六兆六千億円減らしたが、05年度は二兆六千億円増やした。増資など株式発行額(出資金を含む)は04年度より減ったものの、約四兆円と高水準。国内外の社債など株式発行以外の調達額も05年度は増加に転じた。


 トップページ

目次へ戻る
.

NO.135  2006/05/20(土) 日本経済新聞より

 銀行資産再び拡大 

 引当金急減 融資も回復


 
2月末、4年半ぶりの伸び 

 銀行の資産が再び拡大し始めた。全国の銀行が保有する総資産の前年比伸び率は二月末に2.3%増と四年半ぶりの高さに達した。融資先の業績改善を背景に、銀行が貸し倒れ引当金を減らすと同時に貸し出しを増やしたため。金融の正常化が着実に進んでいることを示している。

 日銀によると、全国の大手銀行や地方銀行が持つ資産は二月末で七百五十三兆八千九百十四億円。国際決済銀行(BSI)が規定する自己資本比率(国際業務を手掛ける場合は8%以上)を維持するために銀行が続けてきた
資産圧縮の動きが一服、2002年4月以来の水準にまで回復した。

 大手銀行グループでは、みずほファイナンシャルグループの総資産が昨年末時点で約百五十兆円と前年同期比8.4%増加。三井住友ファイナンシャルグループも同3.3%増えた。その後も「中小企業向け融資など業容拡大に伴う資産増加の流れが続いている。(大手銀行幹部)という。

 銀行の資産が増えているのは、貸出先の倒産に備えて積んでおく貸し倒れ引当金の残高が急減したことが大きい。二月末の引当金は約七兆九千億円と前年比20.7%減った。

 
企業や個人向け融資も回復している。二月末の貸出残高は約四百五兆円と前年比1.1%増え、4ヶ月連続で前年実績を上回った。不動産向けなどが伸びており、資産を押し上げている。銀行が保有する有価証券も百九十九兆円と前年比2.5%増。預金残高が増え続けており、銀行はこうした資金を国内企業の社債や米国債で運用している。


 トップページ

目次へ戻る
.

NO.134  2006/05/02(火) 日本経済新聞より

 余裕資金 4年ぶり減

 昨年 企業、設備投資に充当

 銀行借り入れ 返済を上回る


  
企業が自由に使える余裕資金を取り崩す動きが鮮明になってきた。財務省の法人企業統計から推計した2005年の余裕資金は前年に比べ約八千億円減の二十兆二千億円と、4年ぶりに減った。景気回復を受け、企業が設備投資に積極的になったためだ。取り崩した資金はM&A(企業の合併・買収)や賃上げにも回っているとみられ、滞り気味だったおカネが経済を回り始めた。

 企業の余裕資金(フリーキャッシュフロー)は営業で稼いだおカネである現金収入から設備投資を差し引いた金額、法人統計の対象企業百十八万社の05年の現金収入(推計)は約六十六兆円。好業績を反映して過去最高になったものの、設備投資の増加額がの方が大きく余裕資金は減小した。

 一方、借金は増えている。日銀の資金循環統計では、05年の企業の民間金融機関からの新規借り入れは返済を一兆七千億円上回り、七年ぶりに借り入れ超になった。

 余裕資金は投資が旺盛だった1991年にマイナス十三兆円を記録。バブル崩壊後、設備、雇用、債務の「三つの過剰」に苦しんだ企業が借金返済を優先し、設備投資を現金収入の範囲内に抑えたため増加に転じた。04年には二十一兆円まで積みあがったが、「ようやく積極的な資金の使い方ができる段階に入った」(みずほ証券の清水康和シニアマーケットエコノミスト)

 余裕資金は設備投資だけでなく、M&Aや賃上げにも向かっている。M&A仲介のレフコがまとめた05年の国内企業のM&A金額(公表ベース)は十一兆円一千億円で5年前の二倍以上。今年もソフトバンクによるボーダフォン日本法人の買収などが相次ぎ、三月まですでに四兆五千億円に達した。

 企業が生み出す付加価値のうち人件費に回す割合を示す「労働分配率」は昨年十〜十二月まで五・四半期連続で77%台。低下傾向に歯止めがかかり、企業の賃金抑制姿勢も変わり始めた。

 トップページ

目次へ戻る
.

NO.133  2006/04/30(日) 南日本新聞より
 
 大手銀行最高益3兆3000億円

 06年度3月期決算 前期比4.5倍

 
 大手銀行六グループの2006年3月期連結決算の最終利益は、合計で三兆三千億円程度と前期の4.5倍に膨らみ、過去最高の規模になることが二十九日、明らかになった。

 不良債権処理費が大幅減
 
 景気回復で不良債権の処理費用が大幅に減少。新たな収益源である投資信託販売などの手数料収入も順調に伸びた。三菱UFJ、みずほ、三井住友の三大グループは、今年秋までに公的資金を完済し、本格的な「攻めの経営」に転じる考えだ。

 ただ、金融安定化のために投入された公的資金に支えられての復活だけに、今後は預金金利引き上げや手数料引き下げなど利用者、取引先への利益還元が重要課題となる。

 全国銀行協会によると、全国の銀行の最終利益は、バブル期の1990年3月期で計上した二兆二千億円がピークだった。06年3月期では、六グループだけでこれを大きく上回る。

 三菱UFJグループの最終利益は一兆二千億円程度と見られ、日本企業トップのトヨタ自動車にほぼ匹敵する。経営悪化していた融資先企業の多くが景気好転で立ち直ったため、貸し倒れに備えた引当金を約五千億円取り崩し利益に繰り入れることが出来た。

 みずほグループも昨年11月時点で予想した六千三百億円を大幅に上回るのは確実。三井住友グループは六千九百億円、りそなグループは三千七百億円と見込んでいる。三井トラスト、三井信託銀行の二グループも前期を上回る利益を確保する。
 
 本業のもうけを示す実質業務純益は六グループで四兆円程度と、05年3月期とほぼ同じ。ここから不良債権処理の損失などを差し引き、銀行の手元に残るのが最終利益となる。06年3月期の不良債権処理費用は、前期の二兆円から五千億円以下に大きく縮小する。

 ズーム
 銀行収益構造
 銀行は預金などで集めた資金を企業や個人に融資して、利ざやを稼いでいるほか、株式や債券の運用で利益を上げている。最近は投資信託の販売をはじめ、株式、債券の売買注文を取り次ぐ証券仲介業務、企業や富裕層に対するコンサルティング業務などによる手数料収入が伸びている。1990年代後半からは不良債権処理の費用がかさみ、最終損益が赤字になる銀行も少なくなかった。


 トップページ

目次へ戻る
.

NO.132  2006/04/15(土) 日本経済新聞より

 工場立地、20%増

 産経局 昨年7県 設備投資は1000億円増

 自動車・半導体・大型投資背景に


 九州で企業の進出や増産投資が相次いでいる。九州経済産業局が14日発表した工場立地動向調査によると、2005年の九州7県の工場立地件数は前年比20.5%増の194件と三年連続で二ケタ増となった。05年の設備投資も約三千三百億円と前年から約一千億円増えた。自動車関連の投資に加え、半導体や液晶関連の大型投資が相次いだことが背景だ。

 県別の立地件数では福岡県が前年比六件増の五十八件と最も多く、食品産業の立地が十件あった長崎県が三十件と前年の十二件から2.5倍に増加。大分県を除く各県で前年を上回り、熊本県は年度ベースで過去十年で最高の二十二件となった。

 北部九州では昨年、トヨタ自動車九州(福岡県宮若市)が高級車レクサスを生産するための宮田工場を増設したほか、エンジン工場を稼動。プレス大手の豊田鉄工も同県で新工場を建設した。ヘッドランプの小糸製作所が佐賀県に進出を決めるなど、「06年以降も北部九州で部品産業の集積はさらに進みそう」(福岡県企業立地課)

 自動車関連以外でも大型投資が相次いだ。ソニーセミコンダクタ九州(福岡市)は五百億円を投じ、熊本県菊陽町にデジタル家電向けCMOS(相補性金属酸化膜半導体)イメージセンサーの量産工場を建設、今年五月末から本格操業を開始する。鹿児島県霧島市では百億円をかけリアプロジェクション(背面投射型)テレビ用画像処理LSI(大規模集積回路)の新工場を着工した。

 大分県でも自動車用シートの富士シートや内・外荘部品のしげる工業など自動車関連の投資が増えたが、投資額や雇用者数が最も大きかったのはキャノンの生産子会社の第二工場。総投資額は約八百億円で、千百人の雇用が創出される見通し。宮崎県では富士通日立プラズマディスプレイ、(国富町)が07年7月までにプラズマパネルの生産能力を三倍にする方針で、新たに六百人〜千百人雇用が増える見通しだ。佐賀県では唐津市、伊万里市、鹿島市など全域にわたっての企業進出が目立った。長崎県では県南・県北地域ともに立地件数は前年の倍以上に増えた。

 トップページ

目次へ戻る
.

NO.131  2006/03/24(金) 日本経済新聞より

 2006年 地価公示

 商業集積地 上昇目立つ

 住宅地 下落2.7%に縮小


 国土交通省が23日発表した2006年1月1日時点の公示地価は、住宅地が全国平均で2.7%の下落となった。15年連続の下落だが、下げ幅は前年より1.9%縮小し、大都市を中心に下げ止まり感が強まっている。商業地の下落率も2.7%で、下げ幅は2.9%縮小した。三大都市圏が上昇に転じたほか、ほとんどの都道府県で下げ幅が縮小している。

 【住宅地】

 三大都市圏別では、東京圏は4年連続で下落幅が縮小し、0.9%のマイナスと、ほぼ横ばいの水準まで浮上した。

 東京都は0.8%上昇と全都道府県で唯一プラスに転じ23区は全区が上昇または横ばいになった。特に港区(18%)、渋谷区(9.2%)などの上昇率が高く、都心部に近接した武蔵野市や三鷹市、調布市なども上昇している、

 大阪圏は1.6%下落した。ただ、中心となる大阪市は0.5%の下落と、ほぼ横ばい。大阪市内の福島・西・天王寺・浪速・北・中央の中心6区はすべての地点が上昇した。

 名古屋圏の下落率は1.3%で、3年連続で下落幅が縮小した。

 名古屋市は15年ぶりに上層に転じた。

 地方圏の下落率は4.2%。前年より下落幅が拡大したのは香川など9県にどどまった。

 札幌市が15年ぶりに上昇したほか、地方ブロックの中心都市のうち、仙台市、広島市、福岡市で上昇地点が広がっている。

 【商業地】

 三大都市圏がそろって15年ぶりに上昇した。都道府県別でも東京、愛知、京都、大阪の4都府県が上昇に転じた。商業機能が集積した地域の上昇が目立ち、東京都渋谷区の表参道ヒルズ前などは3割を越える上昇となった。東京都武蔵野市、立川市など地域の商圏の中心都市も上昇している。

 大阪圏では大阪市が上昇に転じ、再開発が進んでいる大阪駅周辺では2割を超える上昇地点もあった。名古屋圏では名古屋駅周辺や栄地区で、3割を超える上昇率を記録した。

 地方圏は5.5%の下落で下落幅は2ポイント縮小した。

 札幌市、福岡市で1割以上の上昇地点がある。岡山市や金沢市などでも上昇または横ばいの地点が現れた。

 トップページ

目次へ戻る
.

NO.130  2006/03/05(木) 日本経済新聞より

 けいざい解説 バブル論の杞憂

 編集委員 太田康夫


 東京で不動産バブルを警戒する声が広がっている。しかし、不動産の価値はその生み出す収益をもとにはかる仕組みが定着し、1980年代のバブル期とは構造が変わった。バブルの芽を摘む時期が来ているのかどうか―――

   ?   ?

 オフィス賃料が一部で高騰している。昨年12月までの3ヶ月の平均募集賃料(月額)は青山で4%、六本木で2.2%上がった。 同潤会青山アパートや防衛庁跡地の再開発で人気が出たもので、賃料の上昇は地価を押し上げる。

 昨年末、国土交通省で開いた国土審議会の土地政策分科会。出席者から「入札で鑑定評価額の二倍以上はついている」「不動産ファンドで個人投資家が思いがけないリスクを背負わされる」などと、バブル懸念があいついだ。

 ただ、よく見ると80年代とはずいぶん違う。

 ひとつは、値上がりの程度だ。80年代後半は全国で地価が上がり、都区部の平均上昇率は一時、70%を越えていた。今回は、都区部でようやく上昇に転じたところだ。グリーンスパン前米連邦準備理事会(FRB)議長は全米平均で年率12%の住宅価格の上昇をバブルより軽い「一部でのフロス(泡)」と指摘したが、東京はフロスのさらに手前である。

 二つ目は値上がりのメカニズムだ。不動産投資は本来、「値上がり」と「賃料で稼ぐ利回り」の両面を見て実施する。生駒データサービスシステムの分析では80年代の借入金利を引いた実質的な利回り(イールドギャップ)はマイナス3〜4%で、投資はほとんど値上がり期待だった。

 絵に描いたような土地投機といえ、それが原動力になった地価上昇は紛れもないバブルだった。

 いまは利回りへの期待が中心だ。賃料などの収益率は4%近くあり、そこから国債利回りを引いた実質的な利回りは約2.5%。これはニューヨークなどのほぼ2倍で、東京の不動産取得は必ずしも不合理とはいえない。

 三つ目は土地利用だ。80年代は転売で利益をあげたり、含み益を増やしたりするのが狙いだった。上物は取り壊しにお金がかかるのでグラウンドのように更地に近い状態で抱える企業が多かった。土地の有効利用は望むべくもなかった。

   ?     ?

 それに対し、収益還元は賃料収入が前提になる。IT(情報技術)対応や耐震性能の良さなどで賃料上げようとするので、土地の付加価値は高まるこれは投機とは異なり、潜在成長率が低くなる中で土地の生産性を向上させる有力な手法になる。

 しかも、投資した不動産は不動産投資信託(REIT)などを通じて小口化され、債券や株式と比べられるようになった。銀行の店頭でも個人向けにREITをパッケージしたファンドが売られ、国策となっている「貯蓄から投資」の流れを後押ししている。

 個別には過熱気味の事例もあるし、収益還元でも国民が投機に浮かれればバブルは起きる。しかし、不動産はかってとは違う形で経済の推進力となる可能性を秘めている。金融庁や日銀は不動産に監視の目を光らせているが、80年代的な感覚は杞憂。

 あつもの懲りてなますを吹くのは賢明ではない。
 

 トップページ

目次へ戻る
.

NO.129  2006/02/08(水) 日本経済新聞より

 膨らむ不動産マネー 局地バブル?

 高騰支える銀行融資


 景気回復や超低金利を背景に不動産へのマネー流入が続いている。東京23区の基準地価は2005年に15年ぶりに上昇。路線化の数倍で取引される土地も相次いで現れた。後ろ盾は銀行融資や個人マネーだ。地下が本来の価値を超えて高騰する「バブル」が局地的に発生していると指摘する声もあり、金融当局も警戒し始めた。

 「東京・丸の内再開発地に一坪(敷地面積3.3u)一億円超の高値がついた。」昨年暮れ、不動産業界に情報が駆け巡った。買い手とされるのは米保険大手のAIGグループ。周辺の公示価格の2〜3倍の高値だ。「この4年でロンドンやニューヨークの地価は1.5倍から2倍に上昇。東京はまだ割安で世界的に注目されている」(大手デベロッパー)

 「六本木の更地が路線化の5倍で落札された」「銀座のブランド店の家賃はバブル期を超える一坪25万円」・・・・・。歴史的な超低金利に加え、容積率の上限引き上げなど、土地利用をめぐる規制緩和を背景に、東京の地価高騰は進む。支えるのは銀行融資だ。

 東京・丸の内の住友信託銀行。昨年、不動産融資のコンサルティング事業を始めたところ、「東京都内の不動産事業に融資したい」と地方銀行から問い合わせが殺到した。住友信託はすでに北海道銀行などと契約したが、申し込みの多さに対応しきれず、4、5行が順番待ちだという。

 大阪でも似た現象が起きている。「うちが年3%で融資を考えていた不動産案件に、メガバンクは年1%の低利を提示してくる」。関西の地銀幹部はこう嘆く。大手銀が関西のオフィスや宅地開発の事業に攻勢をかけ、地銀も巻き込んだ金利引下げ競争が起きているというのだ。

 東北や四国の地価は今も前年比10%近い下落が続く。「収益性の低い地域の地価は数年後に今の半分になる」(みずほ証券の石沢卓志氏)との予測もある。地方から都市部へ資金が動き、東京や大阪、名古屋などに集中、不動産価格上昇につながっている。

 不動産向け貸し出しの過熱振りはデータでも明らかだ。昨年9月末の大手銀の不動産事業向け融資残高は4.5兆円。前年同期の1.5倍に膨らんだ。

 急増する不動産融資に銀行の審査部門が懸念し始めた。「このビル開発にこんなに資金を出して本当に大丈夫か」。大手銀で不動産融資を担当する小林裕氏(仮名)がとった電話から、心配する声が聞こえてきた。相手は審査担当の幹部だ。

 景気回復とはいえ、企業の資金需要はなお低い水準。「銀行にとって不動産やファンドは数少ない得意先。逃がしたくない」(小林氏)。「賃料収入など収益性は吟味した。土地の値上がり期待で融資したバブル期とは違う」と力説し、難色を示した審査部門を納得させて融資を決めた。

 物件の将来のもうけがどのくらいあるかを予測して評価する「収益還元法」。大半の銀行は過去数年で不動産の評価を新手法に切り替えた。02年秋、竹中平蔵金融相(当時)が多額の不良債権にあえいでいた大手銀に厳格な資産査定を求めた「金融再生プログラム」がきっかけとなった。

 ところが、一部で異変が起きているという。ある都内の不動産鑑定士は「収益見通しを高くして実態より評価額を高めてくれという銀行が昨年から増え始めた」と明かす。収益還元法でも賃料などの見通しを甘くすれば評価額は上がり、融資できる額は増える盲点がある。一部では、銀行との取引が減ることを恐れる鑑定士が評価額をあげた例もあるという。

 今年に入って不動産価格の高騰は少し落ち着きを見せつつある。だがバブルの香りが混濁した不動産マネーの膨張は当面続きそうだ。

 トップページ

目次へ戻る
.

NO.128  2006/01/26(木) 日本経済新聞より

 中国、9.9%成長 昨年

 中国国家統計局は25日、2005年の国内総生産(GDP)の前年比伸び率が物価変動の影響を除いた実質ベースで9.9%に達したと発表した。一千億ドル(11兆5千億円)を超える巨額の貿易黒字と投資が牽引し、三年連続で10%前後の高成長となった。今年も雇用確保を優先し、成長率の大幅な鈍化は避ける考えだ。

 名目GDPは18兆2千3百21億元(約259兆円)。昨年の平均為替レート(1ドル=8.19元)換算で2兆2千2百57億ドルと、初めて2兆ドルを超えた。統計局は昨年12月20日に04年のGDPを上方修正し、イタリアを抜いて米日独英仏に続く世界6位になったと発表した。換算為替レートにも左右されるが、05年はフランスを抜いて5位に躍進した可能性もある。

 トップページ

目次へ戻る

.

NO.127  2006/01/12(木) 南日本新聞より

 地銀の不動産融資急増

 超低金利でカネ余り

 利益狙い都心へ注目  バブル懸念も

 
地方銀行が超低金利によるカネ余りから東京や大阪など都心部向けの不動産向け融資を大幅に拡大していることが11日、分かった。企業融資が伸び悩むなど地元で運用先が見つからない中、通常融資よりも利ざやがとれるためだ。2005年9月末の残高は前年同月比二けた以上の伸び率を記録した地銀も多く、地価が上昇に転じた都心部では「ミニバブル」を懸念する声も出始めた。昨年10月以降も同じ状況が続いていると見られ、金融庁や日銀は検査、考査で融資状況の重点チェックを始めるなど監視を強化、問題がある場合は、融資残高の圧縮など改善を求める。

 日銀の統計では、昨年7から9月期の国内全銀行の不動産業向け新規融資は2兆6千8百9拾5億円で、前年同月比44%増とバブル期の1987年7から9月期の74%増以来の高い伸びを示した。

 不動産融資の中でも目立つのは、特定の不動産事業の将来利益を重視して貸すノンリコースローンと呼ばれる新しい手法の融資。従来は大手行中心だったが、最近は地銀がこぞって積極参入している。企業側にも借りやすい利点がある。

 福岡銀行(福岡市)は同ローンを積極的に推進し、05年9月末の同ローン残高は約1千億円で前年同月末の約4百8拾億円から2倍以上に拡大。

 首都圏が地盤の東京スター銀行も、不動産融資を昨年9月末残高で2千5百9拾2億円と前年同月末比27%の大幅増とした。うちノンりコースローンが6割強を占めており、東京スター銀行は「引き続き案件があればどんどんやっていく」と説明。山梨中央銀行(甲府市)も、05年9月末の不動産融資全体の残高が1千9百4拾7億円と3割以上増やした。

 地銀の攻勢で大手銀行の一部のシェア(占有率)は低下しており、中央三井信託は「地銀が低い金利を打ち出し金利競争になっているため、融資を抑えた」とする。

 不動産融資はバブル期とは異なり、担保価値ではなく将来の収益性をもとに判断していることから問題は少ないとの見方がある。ただ、大手行は「一部の地銀は体力以上のリスクを抱え込みつつある」と懸念している。

 トップページ

目次へ戻る

.

NO.126  2005(平成17年)12/31(土) 日本経済新聞より

 株式市場 記録ずくめ
 
 日経平均 今年4割上昇

 デフレ脱却へ期待感


 2005年の東京株式市場では相場の大幅上昇や活況に伴う記録が続出した。歴史的な年となった背景には、世界的な景気拡大と日本のデフレ脱却・構造改革進展への期待が重なり、投資家層が大きく拡大したことがある。半面、証券取引所や証券会社で相次いだシステム障害は、こうした市場の変化に対応が追いつかない状況を印象付けた。

 外国人の日本買い加速

 世界主要市場でもトップクラスの相場上昇のけん引役は外国人投資家だった。年間買越額は初めて十兆円を突破。資金配分を増やすだけでなく新たに日本株投資を始める投資家も相次いだ。

 公社債を含む外国人の証券投資額も年間で十九兆円の買い越しとなる見通しだ。04年の十五兆円を上回り2年連続で過去最高を更新「日本買い」が加速している。

 長く売り手だった国内投資家の姿勢の変化も相場上昇を後押しした。特に事業法人は自社株買いなどを進め3年ぶりに買い越しに転じ、買越額は1990年以来15年ぶりに一兆円を超えた。投資信託も買い越し額は00年以来5年ぶりの規模になったもようだ。銀行などによる持ち合い解消の売り圧力は大幅に縮小しており、「売り手が減り買い手に回る構図」が鮮明になった。

 大商い、1日平均19億株超

 株式市場は空前の活況に沸いた。東京証券取引所第一部の売買高、売買代金は年間累計でともに過去最高。一日あたり平均の売買高は19億株超に達した。従来の「大商い」の目安だった10億株を下回ったのは年初の半日立会い日など2日のみ。売買代金も2兆円超えが秋以降常態化した。

 未曾有の大商いは海外投資家の大量売買に並び、インターネット経由で頻繁に売り買いする個人投資家の台頭による。委託売買全体に占める個人のシェアは、売買高で21年ぶりに5割を突破。売買代金でも外国人(45%)に迫った。

 結果として、東証一部の年間売買高を上場株式数(年末時点)で割った売買高回転率は1.48倍で、昨年の1.02倍を大きく上回った。全上場株式が1.5回売り買いされた形で、長期保有よりも短期売買で利ざやを稼ぐネット投資家の増加を投影している。


 過熱感、システム障害も

 年前半の相場は膠着感が強く、日経平均株価はき極めて狭い範囲で推移したが、夏場から一転。上昇ピッチが加速し、相場過熱への警戒感も台頭した。日経平均の二百日移動平均線からの上方乖離率は、今月29日時点で29.7%に達した。53年2月25日(30.0%)以来約半世紀ぶりの高水準。短期間に異例の勢いで上昇したことが分かる。

 市場環境の急変に対応しきれず、市場インフラがほころびを露呈する出来事が相次いだ。11月1日の東証システム障害、12月8日のみずほ証券によるジェイコム株の誤発注から生じた混乱が象徴例だが、大量の売買注文で負荷が増した取引所や証券会社のシステム遅延なども頻発した。

 各社は売買システムの能力増強に動いているが、実際の作業を引き受けるシステム会社は技術者が圧倒的に不足しており、受注の急増に応じきれないのが実情だ。記録が続出するような変化にも安定した市場運営が保たれるか、06年は正念場といえそうだ。

2005年の株式相場の記録
 指数上昇率、欧米しのぐ
 日経平均株価の
 上昇率
40.2% 1950年以降で7番目
 日経平均株価の上昇幅 4622円67銭 同5番目
 売買は空前の活況(東証一部)
 年間累計売買高 4741億1765万株 過去最高
 年間累計売買代金 418兆5891億円 過去最高
 一日の売買高 45億5805万株
(11月8日)
過去最高
 一日の売買代金 4兆6494億円
(12月9日)
過去最高
 時価総額
 (発行済み株式数ペース)
500兆円突破
(12月2日)
1990年7月20日以来
 台頭する個人パワー(東京、大阪、名古屋3市場)
 外国人の買越額 10兆2102億円 過去最高の1999年を
上回るペース
 売買高の個人シェア 53.6% 1984年以来の高水準
 売買代金の個人シェア 37.5% 1986年以来の高水準

(注)売買代金は概算。時価総額は発行済み株式数ベース。
外国人、個人の売買動向は12月22日までの数値



  トップページ

目次へ戻る

.

NO.125  2005(平成17年)11/18(金) 日本経済新聞より

 三菱UFJ 純利益6350億円
 
 9月中間 上方修正 トヨタ抜き国内最大

 
三菱UFJフィナンシャル・グループは17日、2005年9月中間期の業績予想の上方修正を発表した。連結純利益は六千三百五十億円と期初予想(5月予想)の2.3倍に膨らみ、国内最大のトヨタ自動車の五千七百五億円を上回る。不良債権処理に多額の費用を投じる必要がなくなったうえ、手数料収入などのもうけが増えた。

 旧三菱東京フィナンシャル・グループは9月に中間期の連結純利益の予想を期初の千四百億円から二千三百億円に修正。さらに今回三千億円に再修正した。旧UFJホールディングスも9月に連結純利益の予想を千四百億円から三千三百五十億円に引き上げた。三菱UFJとしての連結純利益は計六千億円を超え、他の大手銀行を大きく上回るだけでなく、日本企業で最高水準となる。

 利益拡大の主因は前期で不良債権処理が峠を越し、今期はその負担が減ったことだ。02年3月には旧三菱東京と旧UFJの合計で二兆八千億円を超えていた貸し倒れ引当金は、今年3月末に半分未満の一兆三千二百七十五億円に減少。9月中間期にはさらに大口融資先の業績改善で、傘下銀行の貸し倒れ引当金の一部が期初予想に比べて三千億円程度多く戻ってきた。

 他の大手銀行も利益が大きく改善。みずほフィナンシャルグループは8月に、9月中間期の連結純利益を期初予想の二千二百億円から二千七百億円に上方修正。今月、三千三百億円に再修正した。三井住友フィナンシャルグループも今月、連結純利益の予想を二千百億円から三千九百二十億円に上方修正した。

 トップページ

目次へ戻る

.

NO.124  2005(平成17年)10/18(火) 日本経済新聞より

 ご異見拝聴 @

 団塊の世代の退職で成長率は鈍る、IT(情報技術)の浸透で生産性は上がった、地価は底を打った―――いずれも日ごろ耳にする常識論。ところが、それに異を唱える識者もいる。通念に挑む人の「理屈」に、ちょっと耳を傾けてみよう。

 みずほ証券チーフエコノミスト 佐治信行氏

 ―――2013年まで景気回復が続くと見ていますが、ほんとうですか。

 「もちろんだ。今年は大型景気の始まりの年と見ている。近年の日本経済の回復ぶりは1980年代前半の米経済とそっくりだ。家計部門が苦しくなり、今までより稼がないといけない状況に陥った。そこで女性が現れて家計を救った。」

 ―――女性の出現?

 「たくさんの女性が働き始めて家計を支えた。米国では1975年〜85年の間に、25〜34歳の女性の労働参加率が55%から71%に急上昇した。すると女性を中心とした個人消費が良くなり、景気回復の呼び水となった。」
 
 「日本もそうだ。厚生年金の保険料負担などが増え、配偶者の特別控除も見直された。その結果、昨年度までの二年で家計部門は約一兆五千億円も負担が増えたが、その間に家計所得は三兆円も稼ぎ返した」
 
 「なぜか。日本でも25年前は五割以下だった女性の労働参加率が現在は67%に跳ね上がったからだ、女性がお金を使い始めた証拠として、最近はパリ行きパック旅行や料理教室の価格も上がっている。政府の増税が景気回復という皮肉な結果を生み出した」

 ―――団塊世代の退職もあるのに今後八年間も景気拡大が続きますか。

 「調整局面はあるだろうが、実質年率で2.5%〜3%の経済成長ペースを保つと予想している。まず設備投資がけん引する。団塊世代の08年、09年の大量退職はむしろ職人不足ととらえた方がいい。産業界では07年までに自動化の設備投資が加速。年率8%前後ペースの増加は見込める。」

 「08年以降は消費に再び火がつく。団塊世代の子供が四十代にさしかかり、教養や娯楽にお金をかけ始めるためだ。四十代で結婚しない人は今より増えるだろうから友達を巻き込んでの消費も増加する。典型が旅行やゴルフ、習い事。この世代は約七百八十万人おり、消費は13年まで年率3%を超える伸びが期待できる。女性の労働参加率も5ポイント上がり米国並みの72%程度になって消費を刺激し続ける」

 ―――その頃には消費税率が上がり、年金など社会保障負担も一段と重くなるはずですが。

 「確かに社会保障の負担は若干響くだろう。ただ、過去の消費税導入時と税率引き上げを振り返ると、影響がでた期間はそれぞれ九ヶ月ほど。それが過ぎれば、ほとんどマイナス面はない」

 「忘れてならないのは景気拡大で税収が増えること。バブル期は自然増収が三兆七千億円。今後の税収は悪くても5%増えていく。そのときに消費税率引き上げの議論なんて、まだあるんですかね(笑)。国民の税負担への忍耐力も年々高くなっている。




 聞き手から

 長期成長予測「最強気」の人

 最新の政府公表資料では2006〜12年度の実質国内総生産(GDP)成長率は1%台半ば、設備投資は3%弱、消費は1%強にすぎない。佐治氏の予測はこれらを大きく上回る。

 民間エコノミストの間では団塊世代の退職で08年以降は成長率が鈍るとの見方が多い。一般的には少子高齢化による活力低下も指摘されるなか、13年まで成長が続くとの主張は”最も強気”の人と言える。経済分析には定評があり、日経金融新聞人気ランキングのエコノミスト部門で7年連続の首位。
(馬場燃)

 トップページ

目次へ戻る
.

NO.123  2005(平成17年)09/21(水) 南日本新聞より

 鹿児島県

 鹿中央駅周辺 商業地が上昇

 下落幅2年連続縮小

 住宅地も横ばいに転換


 鹿児島県が20日発表した7月1日現在の基準地価によると、県内の住宅地は8年連続、商業地は14年連続で下がったが、住宅地の下落幅は2001年から続いていた拡大に歯止めがかかり縮小、商業地は2年連続で縮小した。鹿児島市のJR鹿児島中央駅周辺の商業地が上昇、住宅地で横ばいに転じるなど、「鹿児島市を中心に地域的には回復の傾向がみられる」(県企画調整課)としている。県内の商業地で上昇地点があったのは1997年の鹿児島市真砂町以来8年ぶり。

 ―中略―


 ○住宅地

 ―中略― プラスになった市町村はなく、マイナスになった市町村のうち変動幅が大きかったのは国分市で4.4%、次いで南大隅町3.3%隼人町3.1%となっている。

 基準地別で上昇地点はないが、鹿児島市の鹿児島中央駅周辺、荒田地区などで横ばいに転じた地点が目立った。最も変動率の大きかったのは鹿屋市王子町4367-13でマイナス6.5%。

 基準地価の上位10傑は鹿児島市に集中。最高価格は2年連続で西田2丁目18-10、21万1000円。前年価格と横ばいだった。

 鹿児島市の地域別では吉野地区が4年連続、荒田地区は14年連続、谷山地区は7年連続、市街地周辺部の団地は5年連続でマイナス変動だった。マンション需要などで荒田地区の下落幅は縮小した。



 ○商業地

 ―中略― プラスの市町村はなく、マイナスになった市町村のうち変動幅が大きかったのは南大隅町で7.6%。次い国分市で7.4%、姶良町5.9%と続いている。

 基準地で唯一上昇したのは鹿児島市中央町24-25で28万2000円、上昇率は0.7%。九州内で商業地のプラス変動があったのは福岡と鹿児島だけだった。

 鹿児島中央駅周辺は九州新幹線一部開業後、駅ビルへの客足が持続していることや、再開発ビル計画への期待が高いことを反映したと見られる。ドルフィンポートの開業で周辺の易居町、住吉町などの地点の下落幅も縮小した。最も変動率が大きかったのは南大隅町佐多伊座敷字伊座敷3904―3でマイナス9.8%だった。基準地の上位10傑も鹿児島市が独占した。東千石町8-24が18年連続1位で77万円。対前年変動率はマイナス2.5%だった。天文館、荒田周辺、その他の地区でも14年連続のマイナスだったが、下落幅はいずれも縮小した。



 鹿児島市
 
 商業地での上昇8年ぶり
 
 住宅地は中心部で活況


 
人口10万人以上の地方都市で上昇が見られたのは、公共施設や大型店、企業の多くが中心部に集まり「コンパクトシティの好例」(国交省)とされる鹿児島市と郊外の再開発が進む那覇市。

 国交省などは来年の通常国会で、中心市街地活性化法など「まちづくり三法」を改正し、地域主体の都市再生を後押しする方針。市町村ごとの取り組みの差が、地価の動向にも影響を及ぼす可能性がある。

 
鹿児島市では、昨年開業した九州新幹線のターミナル駅に近い商業地で8年ぶりに上昇地点が出現、住宅地も横ばいが目立つ。鹿児島県宅地建物取引業協会は「市街地ではマンションの建設ラッシュ。郊外の宅地は売れ残りが目立ち始めた」と中心部の活況を語る。

 那覇市では米軍住宅跡地に商業施設や地方合同庁舎などが集まる新都心の開発が進み、付近の基準地価が前年の横ばいから上昇に転じた。

 一方、
北海道旭川市や秋田市、茨城県土浦市、甲府市などは下落率が12%以上と全国平均の倍の高水準。15.1%と人口の10万以上の都市で下落率トップの土浦市では、東京やつくばに顧客が流出し大型店が撤退したことも響いている。



 
宮崎県
 
 全用途平均1.7%下落

 
―中略―
 変動率がプラスの地点はなく、過去最多の238地点でマイナス変動となった。
 商業地の平均価格は1u当たり58800円。
変動幅が最も大きかった市町村は宮崎市のマイナス8.8%。下落率は前年より0.6ポイント拡大した。次いで高鍋町のマイナス5.7%、清武町の同5.6%。

 住宅地の地価は6年連続して下がった。1u当たりの平均価格は28800円で、変動率はマイナス1.0%。宮崎市や川南町、西米良村など31市町村で変動率がマイナスになった。―中略―

 最高価格地点は22年続けて宮崎市橘通東3丁目の商業地「旭屋」。1u当たりの価格は26万円で、前年より6万円下落した。変動率は全調査地点の中で最高のマイナス18.8%。ピーク時の1991年の価格は136万円だった。

 県地域振興課は「商業形態が郊外型へと変化し、中心商業地の不動産需要減が続いている。景気の低迷で、住宅地の需要も減少している」としている。

 トップページ

目次へ戻る
.

NO.122  2005(平成17年)09/21(水) 日本経済新聞より

 基準地価

 東京23区 15年ぶり上昇

 大阪など大都市圏 底入れ感広がる


 国土交通省が20日発表した2005年の基準地価(7月1日時点)は東京23区の住宅地で前年比0.5%、商業地で同0.6%それぞれ上昇した。いずれも15年ぶりのプラスで、大阪や名古屋でも上昇地点が増えた。大都市圏で地価の底入れ感が広がり、反転への流れが明確になりつつある。堅調なオフィス需要や不動産市場への投資マネーの流入などが地価上昇をけん引している。

 地価の全国平均は4.2%下落と14年連続のマイナスだが、下落幅は1.0ポイント縮小した。住宅地は3.8%、商業地は5.0%下落した。バブル期のピーク(1991年)と比べると、住宅地は33%下落し85年をやや下回る水準。商業地は約6割下げ、比較可能な77年以降では最低の水準が続いている。

 東京・名古屋・大阪の三大都市圏をみると、住宅地と商業地の上昇地点は昨年の80ヵ所から520ヵ所に急増。横ばいも加えた「下げ止まり」地点は全体の4.4%から20%に拡大した。

 特に目立つのが首都圏の回復ぶりだ。東京23区では千代田・港・渋谷など都心部に加え、目黒・世田谷・中野・杉並などJR山手線の外側でもエリア全体で上昇する地域が出てきた。

 住宅地では東京都武蔵野市(1.2%上昇)や千葉県市川(1.3%上昇)浦安(4.0%上昇)両市など利便性と住環境のよさを兼ね備えた郊外の上昇も目立つ。茨城県守谷市は鉄道新線「つくばエクスプレス」の開業に伴う宅地需要への期待感から、住宅地が2.6%の上昇に転じた。

 大阪市の中心6区(北・福島・中央・西・天王寺・浪速)では住宅地が0.2%の下落とほぼ横ばい圏に入ったほか、商業地も前年よりも5.0%改善し1.5%の下落にとどまった。名古屋圏では再開発が進むJR名古屋駅前で30%を越す上昇地点が2ヵ所出た。

 地方圏は住宅地が4.1%、商業地が6.1%下落。下落幅は住宅地は8年ぶり、商業地は2年連続で縮小した。札幌市では商業地の46地点中30地点が上昇か横ばいで、市全体でも横ばいに転換した。福岡市でも上昇地点が拡大、仙台市や鹿児島市には上昇地点が現れた。

 人口流出など構造問題を抱える地方都市は、なお大幅な下落が続いている。ただ、北海道旭川市や秋田市の商業地が1割下げる一方、中心部で再開発が進んでいる富山市は6ポイント近く下落幅が縮まるなど地方の中でも格差が広がっている。
 

 トップページ

目次へ戻る

.

NO.121  2005(平成17年)09/14(水)  南日本新聞より

 外資の不動産買収急増

 数年間で3、4兆円規模に

 9割が都心部、地方波及も


 
外資系の金融機関やファンドによる国内不動産の買収が急増し、この数年間で3、4兆円規模に達したことが、不動産業界などの試算で13日、明らかになった。地価下落によって、土地やビルが割安になったことや、経済情勢の好転でオフィス需要が回復してきたことを背景に、日本市場参入に名乗りを上げる欧米勢が相次ぎ、都心の地価回復を支えている。

 外資による不動産買収の9割は東京都心部が対象だが景気好調な名古屋、福岡にも買収を目指す動きが出てきた。「都心買い」に集中してきた海外マネーは、地方中核都市に向けて走り出そうとしている。

 1980年代後半のバブル経済期には、三菱地所がニュウヨークのロックフェラーセンターを買収するなどジャパンマネーが世界の不動産市場を席巻したが、バブル崩壊による地価暴落とデフレ不況で情勢は一変した。

 経営が悪化した企業は不動産売却を銀行に迫られ、ダイエー銀座ビルはシャネルに、国際自動車の国際赤坂ビルは米国系ファンドのローンスターに売却された。

 日本の不動産市場に最も資金を投入している米モルガン・スタンレーグループは、2003年春に品川の再開発地区に完成した三菱自動車の本社ビルを、昨年末に約1400億円で買収。対日投資を目的とする不動産ファンドに1兆円の資金を集めたもようで、01年から今年初めまでに、ホテル、マンション、商業施設などの大型優良物件に3000億円以上投資した。

 外資の都心買いは、不動産を証券の形で投資家に売る不動産証券化市場の成長によって拡大した。証券化市場は04年度には累計で約20兆円となったが、専門家の間では「全体の半分は外資が関連する取引ではないか」(みずほ証券の石沢卓志チーフ不動産アナリスト)との見方がある。

 トップページ

目次へ戻る

.

NO.120  2005(平成17年)08/23(火)  日本経済新聞より

 九州景気を読む
 不動産
 資金流入続く、二極化鮮明 


 不動産業界の景況について、全国で初めて地域版の不動産投資信託(REIT)を設立した福岡リアルティの松尾正俊社長に聞いた。

 ――現在の不動産市況は

 「去年の後半ぐらいから福岡都市圏を中心にビルなどの価格が上がっている。東京の不動産ファンド(基金)などが血眼になって投資物件を探しているためだ。これまでは、福岡市内の物件は東京の資本から正当な評価は受けておらず、売買価格は低かったが、徐々に正当な評価になりつつあると思う」

 「ただ、こうしたファンドが奪い合うのは福岡市の中央区や博多区の一部の物件。安定した家賃収入が見込め、投資利回りが計算できる物件に限られる。このため、全体として不動産売買の市況が良くなっているとはいえない。ビルの賃料が上昇したり、空室率が下がっていたりするという景気回復の実感はない」

 ――福岡市内の現状をミニバブルと指摘する声もあるようだが。

 「他社では過熱気味と感じる高い価格の売買はある。しかし、バブルではない。現在、ファンドが買う場合は賃料収入の水準で購入価格を決める。必然的に賃料収入でまかなえる範囲の価格しか提示しない。バブル期のように高値売却を狙った物件取得のケースはかなり少なく、バブルは起こらないのではないか。ただ、私募ファンドなどを中心にさらにお金が流れ込んでくる可能性はある」

 ――福岡市以外の県庁所在地はどうか。

 「多くの地方都市は人口が減少しており、良い状況ではない。ただ、熊本、鹿児島など人口が50万人以上の都市は投資しても面白いかもしれない。それなりに安定した賃料の見込める物件があるはずだ」

 ――投資先は今後も中央区、博多区などに限られそうか。

 「そんなことはない。鹿児島も注目しているし、地方都市の郊外型の中規模ショッピングセンターなど十分投資の対象になり得る。要は地域で集客力の強い商業施設であれば十分収益が見込めるということだ。ただ、全体的に上向くというより、魅力ある商業施設などがスポット的に良くなるという傾向だろう」

 ――中期的な不動産市況は

 「ファンドによる投資資金の流入は今後2・3年は続くだろう。ただ物件の収益に左右されるので、高く取引される物件とそうでない物件の二極化がより鮮明になる。東京では既に二極化が顕著で一年遅れぐらいで福岡にも波及するのでははいか」

 ――ファンド資金を用いて新しい商業施設を造ろうとする動きは。

 「それは増えていく。投資ファンドが何を買うかを理解した上で、売れる物件を作ろうというデベロッパーは九州でも増えるだろう。新しい物件の建設が増え、不動産市況が持ち直すこともあり得る」
福岡リアルティ社長 松尾正俊氏
 〈記者の視点〉投資物件限られ全体の回復まだ
 福岡・熊本両国税局が発表した九州7県の平均路線価は一平方メートル当たり65000円。十三年連続の前年割れとなったが、下落率は5年ぶりに縮小した。けん引役は集客力の高い福岡中心部。不動産投資マネーが注目しており「天神一極集中」の構図は当面続きそうだ。
 不動産開発・販売のディックスクロキの幹部は「熊本、鹿児島の市内を中心に積極的に不動産事業を展開していきたい」と話す。九州新幹線の部分開業などを背景に「九州南部でも高利回りを確保できる物件の開発が期待できるからだ」という。
 ただ、九州全体を見渡せば、人口減少に歯止めがかからない県も多い。投資対象となる物件は限られそうで、不動産業界全体が上向くにはさらに時間が必要だろう。 川瀬智浄


 トップページ

目次へ戻る

.

NO.119  2005(平成17年)07/09(土) 週刊ダイヤモンドより

 これから買っていい不動産は
 「貸せる物件」「勝ち組の街」


 不動産の価値は三種類ある。第一は自分のニーズや好みに合うこと――いうなれば「私情価値」。第二はいくらで貸せるかという「収益還元価値」。第三がいくらで売れるかという「換金価値」だ。

 多くの人が重視する私情価値は財産形成という点では意味がない。重視すべきは「第三者に高く貸せるかまたは売れるか」という価値だ。特に、高く貸せる物件は、万が一ローンの返済が苦しくなったときや、転勤などで住めなくなったときでも、すぐに貸せてローンの返済額以上の家賃が入ってくるので心強い。
 言い換えれば、ローンの支払いに見合う賃料の得られない物件、ローン残債以下でしか売れない物件は財産にならない。不動産の購入は「街を買うこと」にほかならない。財産形成につながる、「高く貸せる、または売れる不動産」を買うことは、「勝ち組の街」を買うことだといえる。

 ――中略――

 「勝ち組」と呼ばれている人々が好む街、つまり高いお金を出しても借りたい、買いたいと思うような地域は将来的にも需要が衰えることはないだろう。東京都内でいえば港区の麻布や青山のような都心ブランド地域は有望である。時間を節約でき、「働く」「楽しむ」が高度に実現できる街に人びとは流入し、二極化は加速している。

 ――中略――

 自由ヶ丘や田園調布のような郊外(都心周辺)ブランド地域、下北沢や吉祥寺のような若者に人気がある郊外も安定している。前者は1戸建て、マンション共に安定した需要がある街。後者は駅近くの賃貸物件が人気で賃料が安定している点がポイントだ。ちなみに「郊外」といても、都心から30分程度の地域までである。

 先行きが不透明なのが、都心との物理的距離は近いが街の厚みがない地域だ。典型的なのは品川や豊洲などの湾岸エリア。将来性は都市計画に左右されるし、地震リスクは永遠にネックとなる。工場や倉庫の跡地開発のため、新規供給が多い点も気になる。

以上の基準で見ると、都心から遠く街の厚みも乏しく、供給圧力も強いベッドタウンやニュウタウンと呼ばれている地域は、不動産価格的には没落あるのみといえる。いくら気に入っても、財産形成という観点からは、勝ち組以外の街の購入はお勧めできない。賃貸で十分だろう。
不動産コンサルタント / ファイナンシャルプランナー 山崎 隆


 トップページ

目次へ戻る

.

NO.118  2005(平成17年)06/25(土) 南日本新聞より

 国の借金781兆円
 地方含め初の1000兆円台 3月末


 財務省は24日、今年3月末時点での国の借金が781兆5517億円で、過去最高を更新したと発表した。国債や政府短期証券(FB)の発行残高、民間からの借入金を合計したもので、国と地方の借金の合計は初めて一千兆円を超えた可能性が高い。

 国の借金残高は昨年3月末に比べ、78兆4038億円増加。このうち、普通国債の残高が42兆401億円増加し、499兆137億円となった。国際の一種で財政投融資資金を賄う財投債は、29兆7042億円増えて121兆5533億円、為替介入資金を調達するFBは9兆9503億円増の96兆762億円だった。
 
 民間などからの借入金は、1兆4935億円減って59兆1122億円だった。


 トップページ

目次へ戻る

.

NO.117  2005(平成17年)05/15(日) 日本経済新聞より

 地価下げ止まりは本物?

 今年の公示地価で東京の都心五区は商業地が十四年ぶりのプラスに転じるなど、地価の下げ止まり傾向が広がってきた。証券化手法の普及やファンドの台頭で不動産の金融商品化が進み、資金が流入した都心の地価はミニバブルの様相だ。半面、地方は下落が続く。地価の下げ止まり、反転は本物なのか。森トラストの森章社長に聞いた。

 −−都市部では地価が上昇に転じてきた。

 「新大阪のビルは1991年に比べ十分の一の価格にとどまっている。底入れといっても東京都心など一部の現象に過ぎない。ただ、企業のオフィス需要が一極集中する東京の都心三区は過熱気味。都内で路線化の2倍、3倍が珍しくないほどマンション用地が高騰するのも、人口流入で住宅需要が衰えないためだ」

 「商業施設も郊外から人のいる都市部にシフトせざるを得ないだろう。かつてドーナツ現象といわれた人口の郊外流出が、都心回帰で中心部に還流している。少子化で高齢世帯が利便性の高い都心に移り住む例も多い。名古屋、札幌、仙台なども都市型住宅の集積が進んできた。一部の郊外型の大型スーパーが苦戦していることも、少子高齢化や都心回帰の動きを裏付けて入る」

 −−地方の地価下落は続くのか。

 「例えばスキー場はバブル期にゲレンデ大型化など拡張が相次いだが、近年はスキー人口の減少に直面している。形態も日帰りが増え、地元にカネが落ちなくなった。利用価値が地価を決めるという観点では、消費者も労働者もいない地域と都心との格差は拡大するだろう。バブル期と異なり、現在は土地の利用価値、つまり賃貸料など収益力が地価を左右する。全国一律の地価上昇はありえない」

 −−低金利が続き、行き場のないおカネが都市部の地価をあおっているとの見方がある。

 「認知度が高まってきた不動産投資信託(REIT)は雨後のタケノコのように増えている。好物件の取得が難しくなり、今後はREIT間の格差も大きくなる。それ以上に心配なのが私募ファンドや開発型SPC(特定目的会社)の乱立だ。いま、銀行は私募ファンドやSPCにいとも簡単に融資している。開発ブームの様相だが、粗製乱造で収益価値を生まない状況に陥りかねない」

 −−バブルなのか。

 「マネーゲームとは言い切れないのが難しいところだ。不動産の金融商品化は構造が複雑なため、コンサルタントや弁護士などの雇用を生み出す面もある」

 「利用価値の高い土地は上がる。その意味でバブルではない。問題は透明性だ。入札が主流の土地取得はある意味で時価といえるが、企業などが抱える土地の時価会計の算定基準はいまだに鑑定価格。両者の差が大きければリスクも増す。REITは情報公開しているが、私募ファンドやSPCは十分とはいえない。不透明な地価形成が続けば、その揺り戻しでバブル崩壊と似た状況も懸念される」


 トップページ

目次へ戻る

.

NO.116  2005(平成17年)03/26(土) 日本経済新聞より

 国の借金 最悪 751兆円 昨年末

 財務省は25日、昨年12月末時点の国債、借入金などの「国の借金」が751兆円になったと発表した。昨年9月末より20兆円(2.8%)増え、過去最高を更新した。

 普通国債は9月末より12兆円多い489兆円だった。10年債など長期国債が7兆円増えたほか、個人向け国債の発行で中期国債も4兆円増えた。

 財政投融資の財源に充てる財投債も8兆円増の111兆円になった。借入金は2兆円増の59兆円だった。為替介入の原資となる政府短期証券は1兆円減の86兆円だった。

 地方債務は約200兆円なので、国と地方を合わせた借金は今年3月末に約1000兆円になる見通しだ。

 トップページ

目次へ戻る


.

NO.115  2004(平成16年)12/26(日) 南日本新聞より

 危機の財政

 年金や雇用など、多くの国民が将来の生活に不安を抱いている。そんな人々の会話をいたるところで聞く。私たちの生活を支える国の財政が破綻に近づいている。という予感と恐れがこの国に漂っている。

 国と地方自治体が積み上げた借金は750兆円を超え、国内総生産(GDP)500兆円のほぼ1.5倍。その意味がすぐにのみ込めなくても、第二次世界大戦中に戦費調達に追われた1940年代前半と同じ水準だと知れば、「平和が続いたのになぜ借金が増えたのか」と強い疑問がわいてくる。さすがに主要先進国の間で最悪という事実は広く知られてきた。

 2005年度予算の政府案が決まったのを機に、財政破綻へのメカニズムを再確認し、危機から抜け出す道を模索しておくのは無駄ではない。

 借金が多くなると、その利子を返済するために新たに借金をするはめになるが、国もそうした状態である。政府案では、政府が予定する収入のうち4割強を借金(国債)で賄っている。その額は34兆円。過去の国債の元利返済の費用(国債費)が18兆円に上るので、新たな借金の半分は古い借金の返済に充てられている格好だ。いわゆる自転車操業である。

 税収の伸びが国債費の伸びを上回る状態が続けば、税金から返済する分が増えて自転車操業から抜け出せるのだが、実際には国債費の伸びの方が大きい状況は続く。

 来年度は政府が予定する税収は44兆円。国の借金残高は600兆円。個人で言えば440万円の年収に対して借金は6000万円。破産宣告されてもおかしくない。

 政府が発行した国債は国内の金融機関、一般企業、個人などが購入している。米国の国債のように海外の人に多く買ってもらえないのは、国債の信用度が高くないためだ。だが海外に頼るようになってはまずいのも事実である。

 経済活動は地方自治体を含めた政府、企業、個人(家計)の三部門で成り立ち、個人が得た収入や支出、さらに預貯金などが企業や政府を通じて循環しているのが基本的な構図だ。

 バブル崩壊から十数年、個人は堅実に蓄えを増やし、企業はやっと借金を減らした。政府だけが借金を増やし続けた。

 預貯金、株式、債券など個人が蓄えた金融資産は1400兆円。銀行は個人から預かった金を元手に国債を大量に買う。預金金利との利ざやを稼げるからだが、もろ刃の剣でもある。

 国債がこのまま増えていくと市場の需給バランスが崩れ、その価格は下がっていく。国債保有者は損失を出すまいと先を争って売りに出る。土地バブル崩壊と同じメカニズムで、株も連動して下がり、個人の金融資産は一挙に減ってしまう。国債価格の下落は金利上昇と裏腹だから、借り手の打撃も大きい。

 価格暴落を防ごうと日銀が国債を大量に買い込み市場に流通する量を減らそうとすれば、購入に必要なマネーが大量に出回り物価が上がる。第二次世界大戦後に起きた猛烈なインフレの再来である。
  (共同通信編集委員 秦野盛博)

 トップページ

目次へ戻る


.
NO.114  2004(平成16年)12/11(土) 南日本新聞より

 ドバイに世界最高層ビル

 160階、700m以上


 【ソウル9日共同】

 韓国の大手商社、サムスン物産は9日、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイに世界最高層となる700m以上の超高層ビルを建設する計画を発表した。来年1月に着工し2008年11月に完成予定。

 160階以上で、台湾の台北にある世界最高層のオフィスビル「TAIPEI 101」(508m)を200〜300m上回るとしているが、最終的な高さは確定していないという。

 デザインは「砂漠の花」と呼ばれる青ヒヤシンスをイメージし、イスラム建築様式を取り入れた。ホテル、オフィス、マンション、商業施設が入る複合ビルで延べ床面積は約50万平方メートル。

 UAE政府が進める開発事業の一環で、サムスン物産が八億八千万ドル(約920億円)で受注した。

 トップページ

目次へ戻る



NO.113  2004(平成16年)11/20(土) 日本経済新聞より
 
  【大気小機】
 「地価は十分下がったか」

 
 長期デフレの出口へ向かう日本経済で、足取りの重さが目立つのが地価である。東京、大阪、名古屋など大都市の中心部では上昇に転じるところも表れ、変化の兆しはみえている。しかし、先行きへの楽観をうち消すのが地方都市における終わりの見えない地価下落である。

 二極化の象徴的な存在が大都市に近接する地方都市の中心商業地である。甲府市の商業地は今年の基準地価が前年比マイナス15%。中心部では20%を越す下落率を記録したところもある。札幌から近い旭川市も市内目抜き通りの地価がマイナス19%と急落した。

 週末の夕刻ともなると、札幌や博多駅から各地へ向かう列車の網棚には、デパートなどの買い物袋が並ぶ。周辺地域の顧客を大都市が吸い上げ、地元の商店街は「シャッター通り」と化す、ストロー現象が顕著になっている。

 さらに拍車がかかる兆候もある。東京で鮮明になってきた住民の都心回帰が地方にも波及し始めていることだ。札幌はマンション建設ラッシュになっているが、リタイア層などが利便性を求めて道内各地から流れ込んでいるからだという。

 こうした潮流のなかで地方の中都市が競争力を取り戻すのは容易ではない。歴史など伝統資産をてこに活性化を果たしたところもある。ただ、多くは町おこしへの新たな投資を呼び込めないまま、停滞しているのが実情だ。

 障害の一つは地価に潜んでいる。地価評価ではオフィス賃料など収益をベースに算定する収益還元法が浸透してきた。国土交通省は公示地価などもこの手法を加味しており、実勢と格差はないと説明している。しかし、民間機関の分析では、とくに地方で収益還元法による価格に比べ公示価格が高止まりしているケースが多い。実力ベースの地価は公示地価の6割程度との見方もある。

 ストロー現象の広がりなどを考えると、地方都市のオフィス賃料は地価よりさらに速い速度で下落している可能性がある。取引の物差しとなる公示地価も、投資する側から見れば採算水準と比べてまだ高すぎると映っている。

 地価下落を食い止めるカギは地価そのものにある。「実力」を反映した地価の形成によって不動産取引を促し、中核になる店舗や再開発への新たな投資を呼び込むなど、攻めの対応も求められている。(空拳)

 トップページ

目次へ戻る