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※ページ作成者 (有)柴立不動産 柴立俊朗


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記事‐2    
NO
40 2002.5.22 nikkei  「新幹線 早期に整備」
39 2002.5.16 nikkei  米景気の断面 グリニッチ(NY近郊)
38 2002.5.10 nikkei  台湾半導体7社 設備投資を拡大
37 2002.5.2 南日本新聞  新幹線新八代―西鹿児島間
36 2002.5.1 nikkei  日銀  成長見通し上方修正
35 2002.4.30 nikkei  日本、競争力30位に後退 
34 2002.4.28 nikkei  著書「デフレの進行をどう読むか」 
33 2002.4.23 nikkei  産業力  企業再生 私の意見@
32 2002.4.24 nikkei  シャープ、液晶新工場
31 2002.4.8 nikkei  産業力 ジャパンモード
30 2002.4.6 nikkei  在宅勤務300万人に
29 2002.4.6 nikkei  IT利用3人に2人 内閣府調査 
28 2002.4.6 nikkei  景気先行指数 2月も50%越す





NO.40  2002.5.22(水)日本経済新聞より

 JR九州石原次期社長
 「新幹線 早期に整備」
 株上場 任期中の実現に努力


 JR九州の次期社長に内定した石原進専務(57)は21日、福岡市で記者会見を行い、九州新幹線鹿児島ルートの早期整備と株式上場実現を任期中の「重大な使命」として挙げた。

 石原氏は「高速バスなどとの競争激化、デフレ、定期券収入に響く少子化で経営をめぐる情勢は厳しい」としながらも、「新幹線という競争力のある輸送機関を活用したい。2年後の新八代ー西鹿児島開業後は1時間2往復は走らせたい」と話した。

 当初目標よりずれ込んでいる上場の時期は「新幹線で収益構造が変わるだろうから、開業後の05,06年ごろがターゲット」と述べた。又上場のためには、現在営業赤字を補っている経営安定基金の扱いなど財務面の再検討が必要、との考えを示した。

 小倉駅や長崎駅を例に「駅ビルをきれいにしたら乗客も増え、増収に結びつく。社内にノウハウも蓄積されているので、当面は西鹿児島駅を手がけ、新幹線が全線開業するまでに博多駅も何とかしたい」と話した。

 会長に就任する田中浩二社長は「変化の厳しい時代なので若返りを図った」と強調、今回の役員移動は2月の列車衝突事故の引責ではないとした。石原氏については「行動範囲も交友関係も広く、アイデアにすぐれている」と話した。

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NO.39  2002.5.16(木)日本経済新聞より
 米景気の断面
 グリニッチ(NY均衡)住宅ブーム過熱気味
 物件不足 投資目的も
 米国でニューヨークなど大都市近郊を中心に戸建住宅ブームが盛り上がっている。低金利などが持ち家の取得意欲を刺激しているからだ。ただ日本のバブル期のように物件不足で「買いたくても買えない」という光景も見られ、過熱を懸念する声も出ている。

 マンハッタンまで鉄道で1時間足らずの距離にあるコネティカット州グリニッチ。ニューヨーク近郊に点在する緑に覆われた典型的な高級住宅地だ。四月、中古住宅が1軒売りに出ると、売却物件が少ない地域とあって購入希望者が殺到、週末の2日間だけで申し込みは12人に上った。

 寝室4つとバスルーム2つで売却希望価格は50万ドル(6400万円)しかし購入希望者が「入札」で競った結果、落札価格は売却希望価格を上回った。

 完全な売り手市場だけに、買い手は物件を見つけてから資金計画を立てても間に合わない。事前に銀行に自分の収入などを伝えて融資限度額を決めてもらいその範囲内の物件に「入札」する。それでもなかなか買えない状況に買い手のいらだちが強まっている

 同じグリニッチで建築中のある新築住宅の価格は100万ドルを上回る。発注主はニューヨークにある金融機関の経営者。10年ほど前に買った近くの戸建住宅を売却、手にした「30万〜40万ドルの値上がり益」(地元の不動産会社)が元手の一部とみられている。

 住民の平均所得が全米トップクラスとされる、この一帯の住宅価格は1999年以降、毎年10%以上の上昇が続く。昨年9月の同時テロの後はさすがに頭打ちを予測する声が広がった。ところがテロのあったマンハッタンを嫌い郊外に住居を移そうとする人がかえって増加、勢いは衰えない。

 投資目的で購入する人も増加。購入価格の10%前後を年間の家賃にするといわれ、住宅価格につれて賃貸料も上昇。家賃が月5000ドルを超える家が珍しくない。

 グリニッチに近接するニューヨーク州ウエストチェスター郡の昨年の1戸建て中古住宅の平均的な売買価格は60万ドル弱。90年代前半は30万ドル台で推移していたが、98年ごろから急速に上昇、昨年も前年より6%あまり値上がりした。「今年に入ってからも市場は強いままだ」(不動産会社リダック)という。

 住宅ブームは大都市近郊にほぼ共通する現象。ロサンゼルスに近いアーバインでは、比較的安い物件が過熱気味という。

 寝室が一つだけの1戸建て住宅は18万ドル前後、寝室が二つなら25万ドル前後。それでもわずか2〜3年でいずれも10万ドル近く上昇した。競って買っているのは中国系などの移民。「値上がり期待の転売を前提にした購入ばかり」(不動産業者)という。
 
 米国全体で見れば住宅価格の上昇率は昨年初めから少しずつ低くなっているが、ニューヨーク近郊などは落ち着く様子がない。

 「住宅価格の上昇は1部に行き過ぎが見られる。大都市では価格が下落する可能性がある」(シラー・エール大教授)といった指摘もある。(コネティカット州グリニッチで、山崎宏)


米住宅価格の上昇続く


 米国の住宅市場を住宅着工件数でみると、2001年は160万戸。1998年以降150万戸を上回り続けており、80年代半ばに続く住宅ブームとなっている。

 その原因としては10年間に及んだ好況で家計の所得環境の好転が続いたことや金利の低下があげられる、戦後生まれのベビーブーマーと呼ばれる団塊世代の所得がピークを迎える時期とちょうど重なったことも大きい。

 グリーンスパン米連邦準備理事会(FRB)議長は移民の増加を大きな要因に挙げる。ヒスパニックの持ち家比率は90年代後半に3.4ポイント上がって45.2%。白人などより上昇率が高く、住宅取得意欲が強い。住宅ブームは過熱気味とはいえ、根っこの部分に人口増加という実需がある。

 このため価格上昇の行き過ぎ分は調整されても「日本のように大きく崩れない」(不動産協会)という見方が大勢だ。

 懸念材料は、今回のブームを通じて住宅価格の上昇が生活に組み込まれたことだ。
 一例が「ホーム・エクイティ・ローン」。住宅の資産価値から住宅ローン残高を引いた残りの部分を担保にするローンで、住宅を保有したまま値上がり益を享受できる。金融機関は99年ごろからローン残高を毎年1から2割増やしてきた。

 FRBの調査によると、家計は借りた資金の33%を自宅の改築に、18%を消費に振り向けている。株価下落にもかかわらず個人消費が堅調さを保った背景にこうした住宅の資産効果がある。ただ住宅価格が下落すると、歯車が逆回転し、家計は住宅価格の影響を受けやすい。

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NO.38  2002.5.10(金)日本経済新聞より
 台湾半導体7社 設備投資を拡大
 日本の4倍超 7500億円
 欧米各社と提携加速

 (台北=村山宏)

 台湾の主要半導体メーカー7社の2002年12月期の設備投資の総額が約59億ドル(7500億円)にのぼることが日本経済新聞社の集計で明らかになった。
 日本の主要5社の4倍以上の金額となり、台湾各社は生産能力を急拡大する。欧米各社との提携も加速し、アジアの半導体生産では台湾企業の主導的立場が一段と強まりそうだ。

 半導体ファウンドリー(受託生産)最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は九日、設備投資額を当初計画の16億5000万ドルから25億ドルに引き上げると発表した。半導体の設備投資では韓国のサムスン電子を上回り、米インテルの55億ドルに次ぐと見られる。

 TSMCはサイエンスパークの新竹に300ミリの大口径ウエハーを使った最新鋭工場を稼動済み。年末には台南のサイエンスパークで建設中の300ミリ対応工場に生産設備を搬入、来年の4−6月期からの稼動を目指す

 これとは別に今年末には新竹と台南で新工場を着工する計画。来年の着工予定だったが、景気回復をにらんで前倒しを決断した。新工場はそれぞれウエハー換算で月間3万枚の生産能力とする。

 TSMCは三月、回路線幅の縮小など微細加工技術で欧州大手のSTマイクロエレクトロニクス、フィリップスとの提携を発表、米国からだけでなく、欧州からの受注獲得にも動き出した。

 韓国企業が強いメモリー分野でも、台湾企業が巻き返しに出てきた。メモリー大手の南亜科技はインフィニオンと合弁で、年内に台湾内に300ミリウエハー対応工場を建設する。力晶半導体も今月から300ミリウエハー対応工場が稼動する予定だ。

 300ミリウエハー対応工場は従来の200ミリ対応工場に比べて生産コストが3割ほど下がるとされる。日本の東芝など大手5社の今年度の設備投資総額は1810億円。300ミリ対応工場も日立製作所の一工場のみにとどまり、台湾勢との競争力格差が開きつつある。

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NO.37  2002.5.2(木)南日本新聞より
 
 1時間に2往復運行  新幹線新八代―西鹿児島間
 JR九州社長が言及  直通と各駅停車で 
 
 2004年春の開業が予定されている九州新幹線新八代―西鹿児島間について、九州旅客鉄道(JR九州)の田中浩二社長はこのほど、同区間をノンストップで結ぶ「ひかり」型と各新幹線駅(川内、出水、新水俣)で停車する「こだま」型を、それぞれ一時間に一往復運行したい意向を明らかにした。
 
 同社経営企画部によると、田中社長は4月26日に熊本であった熊本経済同友会の記念講演「九州新幹線とJR九州の取り組みについて」の中で、「最低でも一時間二往復させたい。通勤などによる朝夕のラッシュ時の増便は全社をあげて取り組みたい」などと話したという。

 博多までの全線開通については、「政府は11年後の2013年をめどにしているが、なるべく開通までの期間を短くしたい」と意欲を見せた。新幹線の概要や開通に伴う地域づくりなどについて話した後、会場からの質問に答える形で運行本数などに言及した。車両の愛称や運行スケジュールは今後決定される。

新八代ー西鹿児島間に導入されるのは800系と呼ぶ最新型で、最高速は260キロ。ノンストップの場合、同区間を34分で結ぶ。

 田中社長は昨年十二月の記者会見で「現在、特急つばめは一時間一本だが、新幹線は2本程度になるのではないか」などと話していた。

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NO.36  2002.5.1(水)日本経済新聞より
 日銀  成長見通し上方修正
 今年度  マイナス0.5%以上に


 日銀は30日に公表した「経済・物価の将来展望」で、2002年度の実質国内総生産(GDP)成長率はマイナス0.5―プラス0.1%との見通しを示した。昨年10月時点(マイナス1.1−プラス0.1%)から下限値を上方修正した。年度後半にかけ景気が下げ止まると判断している

 ただ、自立的な回復力は乏しいと見ており、現行の量的金融緩和政策を当分続ける可能性が高い。同日の政策委員会・金融政策決定会合でも、金融面での景気下支え継続が必要と判断し、全員一致で現行の緩和策を維持することを決めた。

成長率見通しは小幅ながら上方修正したが、日銀は今年度も2年連続でマイナス成長になる可能性がなお高いと見ている。輸出改善や在庫調整で生産が回復し、製造業を中心に企業収益や設備投資の持ち直しにつながると分析した。ただ雇用調整が長引くため、製造業の回復が非製造業や家計に波及するには時間がかかると判断した。

懸念材料として、個人消費や設備投資など国内民間需要の回復力や、米景気の持続性や為替相場など海外経済の動向しだいで、見通しが変わる可能性にも言及した。
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NO.35 2000.4.30(月)日本経済新聞より

日本、競争力30位に後退――  IMD調査
 【ジュネーブ=清水真人】

 欧州有数のビジネススクールであるスイスのIMD(経営開発国際研究所)は30日、国・地域別の2002年国際競争力ランキングを発表した。1990年代後半から低迷が続く日本は49カ国・地域中、昨年の26位から始めて30位まで後退した。IMDは日本が老化を自覚して気力を失った「中年の危機」と診断した。

 日本の民間ビジネス環境は「企業化精神」「株主の権利や責任」など個別の項目で最下位。政府部門でも「大学教育と経済ニーズ」「外国人労働者の雇用に関する法律」などで評価が低かった。

 「産業用電力コスト」(48位)や「中央政府の財政赤字」(同)も「際立つ弱点」と指摘した。総合順位でアジアではマレーシア、韓国に始めて抜かれ、中国も31位に迫った、IMDは「日本は従来のように世界経済の回復に貢献できない」と悲観的に予測。ドルに変わる通過の座についても円はユーロに敗退するとの見解を表明した。

 競争力世界一は「企業家精神」「株式市場の厚み」などで幅広く評価を受けた米国が堅持した。二位には「経済のグローバル化」で米国を押さえたフィンランドが浮上。十位以内では欧州の小国デンマークとスイスが目立って順位を上げた。アジア勢でトップのシンガポール、二位の香港ともややランクを落とした。

 ランキングは各国・地域を「経済状況「」政府の効率性」「ビジネスの効率性」「インフラ整備」の4分野、314項目にわたって分析して作成した。IMDは89年から公表しており、日本は現在の基準では97年の17位を最高に後退を続けている。

 


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NO.34  2002.4.28(日)日本経済新聞より

 

著書紹介 「デフレの進行をどう読むか」  副題―――見落とされた利潤圧  縮メカニズム
 出版――(岩波書店¥1600円)
 著者 橋本寿朗(はしもとじゅろう) 46年生まれ。東大社会科学研究所教授を経て、法 政大教授。1月急性大動脈剥離で死去。

 利潤圧縮するメカニズムを検証

 著者は日本経済論の第一人者だった。過去形で紹介するのは、今年の1月15日に55歳で急逝、本書が最後の著作となったためだ。著者の視点は経済史、経営史まで含む幅広さが特徴だった。歴史を踏まえつつ、日本経済が抱える今日的テーマを常に実証的に追い続けてきた一人だった。

 本書もまさに日本経済が直面する最大の今日的テーマであるデフレの意味と、その要因を丹念なデータ分析で解明を試みた労作である。著者は日本経済が陥ったデフレが景気循環論的な現象ではなく。19世紀から20世紀にかけての世界的な物価変動の「第3の局面」の先取りと位置づける。

 すなわち、第1局面は第2次大戦までの循環的変動と物価水準の安定期、第2局面は大戦後の持続的インフレ期、第3局面が1990年代以降のディス・インフレからデフレへの転換期。日本のデフレを、日本の問題ではなく、世界的な資本主義の変化の先駆けとみる見方は、クルーグマン米プリンストン大教授らとも共通する。

 そうした位置づけの上に、著者はなぜ日本がデフレで先行したのかとの問いに、「利潤圧縮メカニズム」のぞんざいを提起する。需要不足は原因ではなく結果であり、労働分配率の上昇による企業収益率の低迷こそが、長期低迷の原因だと問い返す。同メカニズムから脱却するには、労使による「協調賃下げ」を提唱する。

 「高すぎる賃金論」には、賃下げによる所得減が消費減につながり、デフレを加速するとの反論が常にある。著者は、同メカニズムを温存すると、企業倒産を引き起こし、雇用不安も起こす。従って、雇用維持を前提に同メカニズムを除去すれば、むしろ企業の設備投資を誘い、結果として消費性向を高める可能性もあると説く。

 デフレ要因については,労働コストの安い中国などのアジア諸国で生産した低価格商品が大量に流入する「ユニクロ現象」の影響がある。著者はこの点では国内市場への逆輸入でなければ、産業空洞化につながらないとみるが、中国シフトと利潤圧縮メカニズムとの関係はもう少し質問したいところだ。だが、その見極めはわれわれに残された課題となった。
(編集委員  藤井良広)


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NO.33  2002.4.23(火)日本経済新聞より
 産業力 
 企業再生 私の意見@ 京セラ名誉会長 稲盛 和夫氏
 民間の自立した競争力を政府の側面支援力が補完する産業力。日本の21世紀は企業を再生し、産業力の新しいモード(型)をどうつくるかにかかる。経営者や識者にその方途を聞くインタビューシリーズ。初回は戦後生まれの部品ベンチャーを世界的ハイテク企業に育てた稲盛和夫・京セラ名誉会長だ。

 ―――「世界の工場」、中国の台頭。日本は製造業を守れるか。
 
 「可能だ。日本企業はまず製造コストの安さをあてにして中国への進出を加速した。だが今、現地で起きているのは力をつけ、競争心をあらわにする中国企業が仕掛ける、デフレの消耗戦だ」

 「中国が生産大国となって世界の物価を安くするのは結構。だが、中国で生産すれば生き残れると思っていた日本企業はえらいことになる。そうなると特殊なもの、付加価値の高いものは日本でつくるという方がいよいよ現実味を帯びる」

 「普通の創意工夫ではだめ、ひと味もふた味も違うものを生み出す。革新的な開発技術による新製品はもちろんだが、世界に追いつかれたといわれる生産技術にだって革新の余地はある』

 ―――京セラは何をしているのか。

 「今、社長以下が血眼になって取り組んでいるのが『歩留まり』の発想からの脱却だ。超高精密、超小型のセラミックの製造工程では必ず不良品が発生する。この歩留まりを何%にするかが従来の発想だった」

 「千個作れば千個を完全な良品にする。これが新しい挑戦。歩留り100%になれば検査工程は不要。附随する機会や人もいらない。最後にチェックすればいいではなくて、各工程が責任を持って次ぎの工程へ完全無欠のものを渡す。こんなことがほかの国でできますか?常識を疑う。不可能と思われたことにチャレンジする。日本の製造業にはまだまだプライドがある」

 ―――国は何ができる。

 「産業力を強化、経常黒字を維持して日本を繁栄させるには、まず法人税を地方税を含め米国並みの実効税率に引き下げなければならない」

 「もう一つは償却の問題。業種ごとに償却年限を決めるやり方はいいとして、問題はその業種が世界的のどのような競争環境にあるかを官が意識していない点だ。設備の技術革新が早い業種は償却年限などもそれに合わせてあげないと国際競争力を失いかねない。2年に1回は見直し、実態に合わせるべきだ」

 「誤解のないようにしたいが、産業力回復の基本はあくまで民間の努力だ。私は業績堅調な企業の労使でさえベア・定昇ゼロはおろか、賃下げまで受容し始めたところに時代の好変化を感じる。賃下げを容認できるのは、会社の生き残りにそれが不可欠ということもあるが、生活に必要なモノやサービスの価格が下がっているからだろう。その意味ではデフレは悪いことばかりではない」

 「企業も国も本当に出直しを決意したとき、そのときは過去の価値観によるリーダーシップの出番ではない。おそらく私の世代ではなく、下から沸きあがってくる若い世代のパワーがこの国をかえる」

 「日本も40歳代ぐらいが政官を含めトップを占めるようにならないとね。明治維新のときも、第2次大戦後も、混とんとした状況を若さと柔軟な発想で切り抜けてきた。京セラもおそらく2年、いや1年以内に(社長が)40代ぐらいに若返っているかもしれない」


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NO.32  2002.4.24(水)日本経済新聞より
 シャープ、液晶新工場
 国内で高付加価値品
 三洋も増産


 液晶最大手のシャープは携帯電話などを薄く軽くできる次世代の小型液晶の新工場を三重県に建設する。三洋電機も大画面の液晶テレビ向け生産ラインを鳥取県に増設する。投資額は両社合計で800億円近い。液晶の市況に底入れ感が出ており、高付加価値品に焦点を合わせた国内大型投資で、急伸する韓国、台湾などのメーカーに対抗する。

 シャープの新工場(三重県多気町)の投資額は約500億円。大型液晶などを生産している三重工場(同)の隣接地に今夏めどに着工、来年秋稼動の予定。液晶画面に周辺回路を一本化した独自開発の『システム液晶』を製造し、携帯電話や携帯情報端末(PDA)向けに供給する。
同社は先行して今年10月から天理工場(奈良県天理市)でシステム液晶を携帯電話に換算して月200万台分を生産する計画。しかし受注が急増しており、生産能力増強が欠かせないと判断した。新工場は天理工場の2倍程度の生産能力になる。

三洋電機は子会社の鳥取三洋電機(鳥取市)の工場内に約270億円を投資して大型液晶パネルの生産ラインを増設する。来年度中に同パネルの生産規模を一日1800枚と2倍に増やす。

パソコン向けの19インチ以下のパネルのほか、韓国メーカーなどが力を入れている大画面液晶テレビ向けに29インチや40インチの液晶パネルを生産する。
大型液晶パネルはパソコン向け需要が急増しており、三洋は設備投資を拡大して攻勢に転じることにした。

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NO.31  2002.4.8(月) 日本経済新聞より

 産業力  ジャパンモード
 最強企業 深い危機感
 衰退のふちから。世界をリードする強さ再び。

 プロデュースたち@

 トヨタ自動車会長の奥田(69)が会う人ごとに一読を勧める本がある。昨年末に出版された「ライオンは眠れない」というぐう話風の小説だ。

 竜の国(中国)とワシの国(米国)の間で経済が低迷するねずみの国の日本。そこに小泉純一郎首相を思わせるライオンが登場し、悩んだあげく民間資産の3割を国家が吸い上げる財産税を導入する。その結果、ねずみ国は財政破綻を免れるが、一方で個人と企業が痛みをこうむる――
こんな非常事態を本気で心配しているわけではない。「危機感を持続するため、常にワースト(最悪)シナリオを想定する」という奥田流の発想が、無名の著者による近未来ストーリーに共鳴したのだ。

 奥田には二つの顔がある。ひとつはトヨタという私企業のトップ。もうひとつは日経連会長や経済財政諮問会議の議員を務める公的リーダーの顔だ。主要7カ国で最悪の財政赤字と最低の信用力が象徴するように、今、日本の国は弱く、トヨタは強い。

 財務諸表には「兆円」がずらりと並ぶ。利益は1兆円を突破(今年3月期実績見込み)し、手持ち資金は2兆円超。株式時価総額は米ビッグスリーの合計に匹敵する13兆円。その気になればライバルをのみ込める。しかし、奥田に安住の気配はない。

 収益力という企業の質では世界首位のトヨタも、販売台数が示す量の面では依然、米ゼネラル・モーターズ(GM)、米フォード・モーターに次ぐ3番手に甘んじているからだ。
 トヨタは、1日発表した「2010年ビジョン」で、現在約10%の世界シェアを15%程度まで高める目標を掲げた。実はそこには壮大な野望が隠されている。2010年代の早い時期にGMとフォードを抜き、世界最大メーカーにのし上がろうとする奥田の意思だ。米国で自動車の大量生産が始まって1世紀。トヨタがついに「世界トップ」の座を本家の米国勢から奪いに行く決意を固めたのだ。

 日本の空洞化を考えるとき、重要なのはこの拡大戦略の「中身」である。
トヨタグループの世界生産台数は現在年約600万台。900万台近くを生産するGMグループを抜くには300万台もの生産拡大が必要になる。しかし奥田の頭の中に、日本での増産の絵はほとんど描かれていない。
増産分のほぼすべてを中国など新興国を含む海外にゆだねる腹づもりだ。「雇用は守る」というのが奥田の年来の公約。日本ではそれを果たせる年330万台程度の今の水準を死守するが、増やしもしない。

 成長力と生産力の両面で輝きを失い始めた日本への冷徹な視線
 日経連と経団連が統合し5月に発足する日本経済団体連合会(JBF)の初代会長に就任する奥田の現状認識は、シンプルな3段論法だ。
「日本経済の高成長は当面望めない」「企業にとって主な成長の舞台は海外になる」「国内事業は短期的にはコスト削減で競争力低下を食い止め、次世代技術のイノベーションで長期の成長を期す」

 自分がJBF会長にいるのは2年。それで辞める。短期決戦をひそかに決意した奥田は、就任を待たずに動き始めた。各社の労務担当者が集まった3月の日経連会合。奥田はベアを多少積む意向を示したトヨタの幹部を「君、それはトヨタ首脳陣の共通認識なのか」と怒鳴りつけた。史上初のベアゼロ春闘の流れが決まった瞬間だ。「高コスト体質の是正こそ、日本が産業力を取り戻す第1歩なんだ」

 企業が付加価値の何%を人件費に振り向けたかを示す労働分配率。国際証券の調べでは、日本の大手製造業はこの比率が上昇傾向にあり、2001年第4・4半期には過去最高水準の85.3%まで跳ね上がった。電気に限れば119.2%と、”人件費倒産”しかねない状況にある。奥田が「来年もベアゼロ」と漏らすのは、従来の発想を捨てモードを切り替える必要を痛感するからだ。

 こんな話がある。
中部国際空港は日本の公共事業史上初めて、実際の工事費が予定を下回り、700億円を超える余資が生じる見通しだ。この会社の社長はトヨタ出身。資材調達を徹底的にたたき、非効率の代名詞の建設分野でも「原価低減」が立派に通用することを実証しつつある。コスト膨張に苦しむ関西国際空港とは好対照だ。
半導体不況に直面するNEC、経営再建中のダイエー、中古本をネット販売するイーブックオフ。トヨタ流の生産・物流効率化策を導入する企業は今や業種や新旧、規模の大小を問わない。

 衰退のふちにある日本にいながら、世界最強かつ最大を目指すトヨタ。その強さを手本に、日本の産業界がしゃにむに効率化と、量から付加価値への転換を進める。それを政策が全力でサポートする。この骨太の道筋しか、日本が富や雇用を生み出す産業力を取り戻し、21世紀に再起するてだてはない。=(敬称略)


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NO.30  2002.4.6(土) 日本経済新聞より
 在宅勤務300万人に  今年度 労働人口の5%弱
 自宅などで企業の仕事に携わる在宅勤務者が2002年度中に300万人を突破することが確実になった。1996年度の約4倍で、日本の全労働人口6766万人(2000年)の5%弱にあたる。インタネットの普及が背景にあり、新たな雇用形態として定着しつつある。

 社団法人に本テレワーク協会(東京・千代田、大星浩二会長)によると、96年度に81万人だった在宅勤務者は2000年度に約246万人となり、今年度は少なくとも300万人、多ければ350万人程度に膨らむ見込み。2000年度に調べた全国7都市5千社を追跡調査する中で判明した。
2005年度には445万人になる見通しだ。

 同協会の調べでは、2000年度時点で上場企業の2割、全体でも13%が在宅勤務制度を採用している。対象職種も広がっており、従来の営業・事務職から、最近は情報通信や食品などの企画・調査職、ソフト開発職で増えている。

 在宅勤務は企業にとって、これまで介護や育児を理由にやめていた優秀な社員を確保できるほか、柔軟な勤務体系で社員の能力を引き出しやすくなる。オフィスの費用や交通費を削減できる利点もある。日本IBMでは昨年12月から「勤続1年以上で自宅勤務可能な職種」を条件に同制度を導入。NECも育児・介護が必要な社員に限り在宅勤務を認めている。

 
インターネットも大きな要因で、野村総合研究所の昨年9月の調査では自宅生活者のうち、パソコンでネットを利用する人の割合は、44.9%にもなった。追加料金を気にせずネットを利用できるブロードバンド(高速大容量)の普及で、在宅勤務しやすい環境が一段と整いつつある。


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NO.29  2002.4.6(土) 日本経済新聞より

 IT利用3人に2人 内閣府調査 若年層ほど活用

 パソコンや形態電話の利用は3人に2人の割合に―。
 内閣府は5日、情報技術(IT)の影響実態調査をまとめた。

 それによると、パソコンや携帯電話でインターネットを利用している人は全体の43%。携帯電話の通話のみの利用を含めると65%になる。年齢別に見ると、20代以下のIT利用率は89%。これに対し、50代は49%、60代は26%にとどまり、若年層ほど、IT利用率が高いことがわかった。

 ITの利用による変化の調査(複数回答)では、「時間を気にせず友人と連絡が取れる」が最も多く、全体の48%。「家族を気にせず友人と連絡が取れる」(35%)などが上位を占めた。


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NO.28  2002.4.6 (土) 日本経済新聞より

 景気先行指数 2月も50%越す 電気・鉄鋼・在庫調整進む

 内閣府が5日発表した2月の景気動向指数(速報値)は、先行指数が66.7%と、2ヶ月連続で判断の分かれ目の50%を上回った。電気機械や鉄鋼などで在庫調整が進み、1年半ぶりの高い水準となった。現状をしめす一致指数は50%を下回っているが、循環的には景気が底を探る動きが強まってきた。

 景気動向指数は景気の方向性を総合的に示す統計。3ヶ月前に比べて改善した指標の数が全体に占める割合で表す。50%を超えれば、景気は上向きと判断される。
 5〜6ヶ月先の景気の動きを示す先行指数は速報値を構成する9指標のうち6指標がプラス。掘削機やトラックの在庫が減り、最終需要財の在庫率指数が改善。電気や鉄鋼、化学の在庫調整の進展で、生産財の在庫率指数も2ヶ月連続で改善した。鉄鋼や天然ゴムなどの価格上昇が寄与し、日経商品指数は3ヶ月連続のプラスとなった。

 一致指数は33.3%で1年2ヶ月連続の50%割れ。百貨店販売額や有効求人倍率などがマイナスだった。ただ、鉱工業生産と生産財出荷指数が1年2ヶ月ぶりにプラス。残業時間を示す所定外労働時間も1年3ヶ月ぶりに改善し、方向性に変化が見られる。

 消費や雇用の指標は厳しい状況が続くが、内閣府は「生産関連は下げ止まりの動きがある」と指摘。景気循環から見れば、後退期から拡大期への転換点である「谷」が近づいていることをにじませた。

 景気の現状よりも遅れて動く遅行指数は16.7%。7ヶ月連続で50%を下回った。


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