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(経済記事から)NO.10

※NO.をクリックするとその記事を見れます。(記事には一切手を加えていません)
 ※ページ作成者 去ト立不動産 柴立俊朗

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記事―10  目 次
NO 記事年月日 記 事 元 記 事 内 容
233 2008/12/25 nikkei  米政府、ノンバンクにも資本注入
232 2008/12/18 nikkei  米、初のゼロ金利
231 2008/12/12 nikkei  経済急降下の11月
230 2008/12/06 nikkei  米雇用、53万人減
229 2008/11/27 nikkei  潜在リスク760兆円
228 2008/11/21 nikkei  米、「量的緩和」も視野
227 2008/11/12 nikkei  世界のマネー 伸び鈍化
226 2008/11/07 nikkei  欧州、一斉利下げ
225 2008/10/29 nikkei  米住宅価格、下げ最大
224 2008/10/26 nikkei  世界の時価総額、半減
223 2008/10/19 nikkei  動揺、金融から実体経済へ
222 2008/10/07 nikkei  過剰流動性という怪物【大機小機】
221 2008/10/01 nikkei  時価総額 2000兆円目減り
220 2008/09/27 nikkei  米銀6位破綻  淘汰の波、銀行にも
219 2008/09/23 nikkei  米、 銀・証の垣根消滅へ
218 2008/09/18 nikkei  AIG米政府管理下に
217 2008/09/17 nikkei  リーマン破綻
216 2008/09/09 n;ikkei  鉄鉱石 追加値上げ要請
215 2008/09/07 nikkei  (社説)新興国賃金上昇の意味
214 2008/08/24 nikkei  国民年金積立金 2047年度に枯渇
213 2008/08/23 nikkei  外貨準備 ドル比率最低に
212 2008/08/17 nikkei  中国産の輸入物価 上昇
211 2008/08/15 nikkei  日米欧、景気に後退色
210 2008/08/07 nikkei  中国、金融引き締め修正
209 2008/07/30 nikkei  米住宅価格 最大の下げ
208 2008/07/15 nikkei  米、長期金利の上昇警戒
207 2008/06/28 nikkei  NY原油 一時142ドル台
206 2008/06/25 nikkei  米住宅価格16.3%下落
205 2008/06/08 nikkei  NY原油 139ドルに急騰
204 2008/06/06 nikkei  東南ア、金融引き締め強化
203 2008/06/04 nikkei  米金融政策、踊り場に
202 2008/05/23 nikkei  NY原油 一時初の135ドル台
201 2008/05/06 nikkei  NY原油 初の120ドル台
200 2008/05/01 nikkei  米景気低迷、長期化の懸念
199 2008/04/25 nikkei  米住宅販売、3月8.5%減
198 2008/04/09 nikkei  金融機関 損失97兆円に
197 2008/03/26 nikkei  地価変調-(上)
196 2008/03/14 nikkei  マンション発売 15年ぶり低水準
195 2008/02/28 南日本  世界人口の半数 33億人都市集中
194 2008/02/09 nikkei  国富 9年ぶり増加
193 2008/01/23 nikkei  米、0.75%緊急利下げ
192 2008/01/04 nikkei  原油、一時100ドル


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NO.233  2008/12/25(木) 日本経済新聞より

 米政府 ノンバンクにも資本注入

 
アメックスなど 個人向け金融 安定狙う

 【ニューヨーク=財満大介】
 米政府が公的資金による資本注入の対象をノンバンクにも広げ始めた。米財務相は23日、クレジットカード大手アメリカン・エキスプレスと金融大手CITグループに対し、金融安定化法に基づく資本注入を承認した。カードローンなどの焦げ付きに苦しむノンバンクの資本を増強し、個人向け金融の安定を目指す。銀行への資本注入を想定していた金融安定化法は保険会社のアメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)、自動車大手、ノンバンクと対象が拡大の一途をたどっている。

 アメックスへの注入額は三十三億九千万ドル、CITは二十三億三千万ドル。両社が発行する優先株とワラント(株式購入権)を米政府が引き受ける。アメックスはカリフォルニア州などで積極的に顧客開拓したが、こうした地域は住宅の値下がりが大きく、返済力が低下した個人のカードローンが焦げ付いた。CITも住宅ローンで多額の焦げ付きが発生している。

 預金を持たないノンバンクは事業資金を市場からの調達に頼っている。だが信用危機で銀行からの追加融資を受けられず、ローン債券を証券化して売却することもできなくなった。アメックスとCITは銀行持ち株会社への業態変更を米連邦準備理事会(FRB)に申請して認められた。銀行になれば公的資金注入を受けられるうえ、FRBの公定歩合融資を利用して資金繰りも改善する。

 米国ではクレジットカード会社などノンバンクが個人向け金融で大きなシェアを占める。FRBは各種ローン債券の証券化商品を買い入れるなどして資金繰りを支援しており、財務省の資本注入も同市場の重要性を考慮した結果だ。

 ノンバンクではゼネラル・モーターズ(GM)の金融関係会社で自動車ローンを手掛けGMACも銀行への移行を申請中。ただ、財務内容の悪さがネックとなって承認されるかどうかは不透明な情勢だ。

 金融安定化法の七千億ドルの総枠のうち、議会の承認を経ずに利用できる最初の三千五百億ドルはほぼ上限に達しており、財務省は残りの資金枠の追加承認手続きに向けた調整に入っている。



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NO.232  2008/12/18(木) 日本経済新聞より

 米、初のゼロ金利

 
大幅利下げ、FF 0.0―0.25%に

 国債買い入れ検討 量的緩和を導入


 【ワシントン=米山雄介】
 米連邦準備理事会(FRB)は16日開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で、最重要の政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を現在の年1.0%から大幅に引き下げ、年0.0−0.25%にすることを全会一致で決定、即日実施した。米国として史上初めて事実上のゼロ金利政策に踏み込む。同時に長期国債の買い入れ検討なども表明。市場への資金供給量の拡大を金融政策の柱とする量的緩和の導入を正式に決めた。

 FOMC「政策を総動員」

 米政策金利の誘導目標がゼロ台に低下したのは初めて。金融不安と景気後退が連鎖するグローバル危機の克服に向け、米金融政策は未踏の領域に入った。FF金利の誘導目標は日銀の政策金利である無担保コール翌日物金利の誘導目標(年0.3%前後)を下回った。日米の政策金利の逆転は1993年2月以来、約十六年ぶりとなる。

 FRBがFF金利の誘導目標に幅を持たせたのは初めて。ゼロ金利が近ずき、FF金利を一定水準に厳密に日々誘導するのが困難になったためとみられる。

 FOMC終了後に公表した声明は「景気回復と物価安定へすべての手段を動員する」と宣言。特にFF金利について「しばらくの間、例外的に低い水準になる可能性がある」と説明した。歴史的な超低金利を当面続ける姿勢を示すことで、金融緩和効果を高める「時間軸効果」を狙う。

 声明は市場への流動性供給で既に膨らんでいるFRBのバランスシート(貸借対照表)を債券買い入れなどを通じ、「高い水準で維持する」と言明。金融機能の回復と景気刺激に向け、市場への資金供給を拡大する。「量的緩和」の導入をFOMCで始めて確認した。

 ただ日銀が2001年3月からの量的緩和策で導入した資金供給量の数値目標の明示には踏み込んでいない。

 量的緩和の手段として具体的には「今後、数四半期にわたり多額の政府機関債や住宅ローン担保証券(MBS)を購入する」と説明。「状況に応じてさらに拡大する用意がある」と強調した。住宅ローンの供給を促し、住宅市場てこ入れを目指す。

 声明は長期国債の買い入れについても「利点を検討している」と表明。長期金利の低下要因となる国債買い入れを本格的に視野に入れていることを明らかにした。

 民間金融機関向けの貸出金利である公定歩合は0.75%ひき下げ、年0.5%とした。金融機関が一定額以上をFRBに預け入れる準備預金に0.25%の金利を付けることも決めた。


 

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NO.231  2008/12/12(金) 日本経済新聞より

 経済急降下の11月

 金融危機が波及、記録的な指標悪化

 
企業・家計で鮮明に

 日本経済は11月に急降下した。12月に入ってか明らかになった11月の経済指標は軒並み記録的な悪化を示している。米欧発の金融危機が実体経済に波及して世界経済が失速、その影響が日本の企業や家計にもはっきりと表れてきたからだ。グローバル化の進展で海外経済の悪化や市場の動揺が瞬時に波及、非正規社員の増加など雇用調整の変化も相まって、これまでにない急激で深い調整が進んでいる。

 グローバル化が進んだ世界経済で初めて起こった大規模な金融・経済危機。ヒト、モノ、カネが高速度で自由に動き回り相互連動性の増したグローバル経済では、不況期には経済の調整も、世界で同時に高速度で進む。

 「瞬時に台風」

 米国や中国など新興国でも11月の経済指標は軒並み悪化した。米国では、雇用者数が五十三万人減り、およそ三十四年ぶりの減少幅を記録。中国でも輸出が七年五ヶ月ぶりに減少した。

 予想を超えるスピードの海外需要の冷え込みで、日本の輸出額は11月上中旬で前年比24.7%減少。日本企業に大きな調整圧力をもたらした。

 11月の工作機械の受注額(速報値)は前年同月比62%減と過去最大の落ち込みとなった。米証券大手リーマン・ブラザーズが破綻した九月(20%減)、十月(40%減)と月を追うごとに状況は悪化、オオクマの花木義麿社長は「快晴から瞬時に大嵐になった」と驚きを隠せない。

 米自動車大手の経営危機に象徴される世界的な自動車の需要急減に対応し、部品メーカーみ一斉に新規投資の延期・凍結に動いた。中堅工作機械メーカー、ツガミの西嶋尚生社長は、「世界中、どこの企業を探しても設備投資に動く気配が感じられない」とため息をつく。

 企業は減産、設備投資の抑制、そして雇用調整を一気に進めた。非正規雇用者や派遣社員を中心に人員削減を加速。厚生労働省の調べでは、今年十月から来年三月までの間に失業、あるいは失業する見通しの非正規労働者は全国で三万人。来春卒業する高校・大学生の採用内定取り消しも三百三十一人に上る。

 雇用構造が変化

 雇用者全体に占める非正規雇用者の割合は2008年7―9月期で34.5%。十年前に比べ10ポイント高まった。非正規雇用の増加という雇用構造の変化が、今回の高速度の調整につながっている側面もある。

 雇用などへの先行き不安から消費者も財布のヒモを急激に引き締めた。十一月の国内新車販売は、軽自動車を除く登録車で27.3%減と11月としては過去最大の落ち込みとなった。百貨店売上高も、十月に前年同月比6.8%減と、過去15年で最大の落ち込みを記録。11月も速報段階では松坂屋が16.8%減と大幅となったほか、三越(7.8%減)大丸(7.7%減)も低調だ。

 素早く対応できない企業は即座に市場から退出を迫られる。東京商工リサーチによると、9月から11月までの三ヶ月間の上場企業の倒産は18件。三ヶ月間の数字としては、02年2−4月の14件を超え、過去最多となった。

 企業の資金繰りも急速に悪化、11月の社債発行額は急減した。市場で資金が取れなくなった企業は銀行に駆け込み、全国銀行の11月の貸出残高は16年7ヶ月ぶりの高い伸びとなった。 大手銀幹部は「すべての融資要請には応じられない」と苦りきった表情を浮かべる。世界的な信用収縮は日本にも津波のように押し寄せた。

 11月の経済指標は記録ずくめ

 ※国内新車販売(軽自動車は除く) 27.3%減(前年同月比) 
  11月としては過去最大のマイナス幅
 ※工作機械受注額 62.2%減(速報値、前年号月比) 
  単月で過去最大の下げ幅に
 ※街角景気判断指数 1.6ポイント低下(前月比) 過去最低を更新
 ※日経消費予測指数 6.8ポイント低下(前月比) 5年2ヶ月ぶりの低水準に

 ※企業倒産件数 1万4284件(1−11月で累計) 
  昨年一年間の実績を上回り高水準に 
 ※企業物価 1.9%下落(前月比) 過去最大の下げ率
 ※日経商品指数42種 8.6%低下(前月比) 過去二番目の下げ率
 ※ガソリン店頭価格 15.5%下落 単月では過去最大の下げ率
 ※東証一部の売買代金 37%減(前月比) 3年4ヶ月ぶりの低水準
 ※社債新規発行額 34.2%減 (前年同月比) 
 ※CPの新規発行額 28.7%減(前年同月比)
 ※全国銀行の貸出残高 3.6%増(前年同月比) 16年7ヶ月ぶりの高い伸び

 海外

 ※米国の雇用者数 53.3万人減(前月比) 約34年ぶりの減少幅
 ※米主要小売業の売上高 2.7%減 (前年同月比) 過去最大の下げ率
 ※NY原油 19.7%下落(前月比) 過去2番目の下げ率
 ※中国の輸出 2.2%減(前年同月比) 7年5ヶ月ぶりの減少
 ※中国の乗用車販売 10%減(前年同月比) 今年最大の下落率
 ※インドの乗用車販売 23.7%減 (前年同月比) 過去最大の落ち込み
 ※ブラジルの新車販売 25%減 (前年同月比)



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NO.230  2008/12/06(土) 日本経済新聞より

 米雇用 53万人減

 11月、34年ぶり減少幅  失業率6.7%


 【ワシントン=米山雄介】
 米労働省が五日発表した11月の雇用統計(季節調整済み)によると、非農業部門の雇用者数は前月に比べ五十三万三千人減少し、第一次石油危機の影響で景気が急激に悪化した1974年12月(六十万二千人減)以来、約三十四年ぶりの大幅な落ち込みとなった。失業率(軍人を除く)も6.7%と前月から0.2ポイント上昇。金融危機が実体経済に波及し、米雇用情勢は急激に厳しさを増している。

 雇用者数の減少は11ヶ月連続。同時に発表した改定値によると、9、10月の雇用者数の減少も、それぞれ四十万三千人、三十二万人に修正され、これまでの二十八万四千人、二十四万人から大幅に拡大した。

 今年1月からの合計での雇用者数の減少は約百九十一万人にのぼり、金融危機が信用収縮を伴って広がった9月以降、一段と悪化している。昨年12月以降の米景気後退の深刻化は避けられず、戦後最長・最悪の不況となる可能性が現実味を帯びてきた。

11月の雇用者数は三十二万五千人減を見込んでいた市場予想平均よりも大幅に悪化。失業率は市場予測の6.8%には達しなかったが、1993年10月(6.8%)以来、約十五年ぶりの高水準まで上昇した。

 雇用者数の内訳は民間部門が五十四万人減、政府部門が七千人増。製造業(八万五千人減)、建設業(八万二千人減)、小売(九万1千人減)など主要業種が軒並み不振だった。サービス部門全体で三十七万人減となり、雇用調整が先行した建設、製造業からサービス業にリストラの波が広がっている。


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NO.229  2008/11/27(木) 日本経済新聞より

 潜在リスク760兆円 
 
 米、相次ぐ危機対応策で・・・

 
さらに拡大も

 【ニューヨーク=藤井一明】
 金融危機に対応するため連発した救済策や安定化策により、米政府と米連邦準備理事会(FRB)が投融資や保証を通じて潜在的に抱えるリスクは最大で八兆ドル(約七百六十兆円)を越す見通しになった。すぐに焦げ付くわけではないが、対応に失敗すれば政府やFRBが巨額の損失を被る恐れはある。ドルの信用も揺らぎかねない危うさを伴う。

 最も果敢にリスクをとっているのはFRBだ。金融機関の資金繰りを支援するため、公定歩合で直接貸し出す制度を運用。各国の中央銀行とはドル資金を融通する協定を結ぶ。いずれも金額は無制限。さらに証券大手ペアー・スターンズなど個別の金融機関の救済策が加わる。

 政府も米連邦預金保険公社(FDIC)による預金保険の拡大や住宅ローンの借り換え支援のほか、金融機関への資本注入を柱とする総額七千億ドルの対策などを通じて、公的資金の投入や保証を積み重ねてきた。

 その結果、FRBの無制限の資金供給を除いても、公的部門が潜在的に抱えるリスクからみた主な対策の総額は単純に足し上げて八兆ドルに迫る。米国の国内総生産(GDP)の六割、日本のGDPの1.5倍にそれぞれ迫る水準だ。

 ポールソン財務長官は「新たな課題が発生し続ける」と予想しており、規模はさらに膨らみそうだ。


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NO.228  2008/11/21(金) 日本経済新聞より

 米、「量的緩和」も視野

 大量の資金供給、日本を参考に

 来年マイナス成長も


 【ワシントン=大隅隆、ニューヨーク=藤井一明】
米国では金融危機によって個人と企業の心理が萎縮し、消費や投資が一段と冷え込む恐れが強まってきた。米連邦準備理事会(FRB)は十九日発表の経済見通しで米経済が2009年にマイナス成長に転落する可能性を示唆。景気後退とデフレの回避へ向けた、追加利下げの公算が大きくなっているが、政策金利はゼロに近づいている。日本の量的緩和政策などを参考にした金融政策の枠組み見直しが視野に入ってきそうだ。

 金融政策 利下げの「次」探る

 FRBは経済見通しで08年の実質成長率の見直しを0.0−0.3%、09年はマイナス0.2−プラス1.1%に改定。「回復のペースはかなり遅い」と予想した。二年連続でゼロ近辺の低成長にとどまれば三十四年ぶりとなる。今年一月から減り始めた雇用の不振は三年続く恐れもあり、景気悪化の出口は当面見えそうにない。十九日に米商務省が発表した十月の住宅着工件数(季節調整済み、年率換算)は前月比4.5%減の七十九万一千戸。1959年の統計開始以来、過去最低だった。同日の株式相場も急落。シティグループ、フォード・モーター、ヤフーなど幅広い銘柄が軒並み二ケタの下落率を示した。

 米国は直近の景気拡大で住宅と株式の値上がりを支えに、消費と借り入れを力強く伸ばしてきた。住宅バブルの崩壊と株価急落で様相は一変消費と借り入れの双方が縮小する逆回転が生まれている。米国の家計は投資信託と株式で全体資産の四割強を占め、保険や年金でも株式で運用する割合が大きい。このため株安に反応して消費を手控える「逆資産効果」によって、金融危機が消費を直撃しやすい。

 家計が切りつめに動く一方、企業は人員削減に傾く。FRBは09年の失業率を最悪の場合、現状よりも一ポイント以上高い7.6%まで上昇するとみる。10年でも6.5−7.3%の予想だ。景気後退の局面が終わっても企業が採用の増加に転じるには時間がかかる見通しで、厳しい雇用情勢は長引きそうだ。
 
 こうした経済状況をにらみFRBが12月16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)でフェデラルファンド(FF)金利を引き下げるとの見方が強まっている。ただ、FF金利はすでに1%と低い水準だ。0.5%の利下げを決めた十月のFOMC議事要旨によると複数の委員が「利下げの余地が限られるようになってきたことは大胆な政策調整の根拠になる」と指摘した。

 政策見直しの参考にしていると見られるのが、政策目標を金利から資金量に切り替え市場に必要以上の資金を供給する「量的緩和」や、長期的な低金利維持を確約する「時間軸政策」といった、日本が採用したことのある金融政策だ。サンフランシスコ連銀の研究担当者が今月まとめた論文も量的緩和や時間軸政策に言及。「日本は、時間軸政策で長期金利を1%未満に抑えることに成功した」と指摘している。

 スイス、1%追加利下げ

 【ジュネーブ=藤田剛】
 スイスの中央銀行のスイス国立銀行は20日、政策金利である三ヶ月物金利を現行より1.0%引き下げ、誘導目標を同日から0.5―1.5%にすると発表した。利下げは欧州中央銀行(ECB)やイングランド銀行(英中銀)などと協調利下げした6日以来、二週間ぶり。スイス経済の減速が鮮明になってきたため、今回は利下げ幅を前回(0.5%)の二倍に広げ、単独で実行した。

 スイス国立銀行は利下げの理由を「金融市場にスイスフランを潤沢に供給するため」と説明。景気認識については「資源や原油の値下がりでインフレが沈静する一方、世界経済の悪化でスイス経済も来年以降減速するリスクが高まった」との見解を示した。同行の利下げは今年十月以降で三回目となる。



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NO.227  2008/11/12(水) 日本経済新聞より

 世界のマネー 伸び鈍化

 米など大量供給でも・・・

 金融機関、投融資絞る


 グローバルなマネーの伸びが急速に鈍化している。全世界で流通する米ドルの増加率は、今年10−12月期には10%すれすれに低下する見込み。金融機関の信用創造力が落ち、投資ファンドや産油国に集まっていた余剰マネーも急速に収縮しているためだ。こうした動きは実体経済に比べて肥大化した金融の自律調整の過程とも言える。

 国際通貨基金(IMF)などによると信用創造の元になる世界のドル合計額は2008年1―3月期は前年同期比24.5%増えたが10―12月期の伸びは同10.8%まで鈍化するとみられる。金融機関が融資や投資を絞っているのが背景。投資家からの解約が増えているヘッジファンドも資産を圧縮している。

 カネ余りの下で世界の金融資産は2000年代に入り急膨張し06年には百六十七兆ドルに達した(マッキンゼー調べ)産油国、アジアの金融当局、ファンド勢など、既存の監督体制の外側にあるマネーは00年から06年までに三倍に膨張し、米国などに投資してきた。そうしたお金を元手に米国の住宅バブルは膨らみ、経常赤字も拡大したが、住宅バブルの崩壊を機に大きくなり過ぎたマネーの水準訂正が本格化し出したといえる。

 原油などの商品価格も下落。1バーレル60ドルの原油価格を前提にすると、サウジアラビアとロシアの経常黒字は、合わせて年間二千億ドル以上減るとの試算(三菱UFJ証券)もある。その分だけ国外へ投融資する余力が減る。もっともマネーの急速な収縮は実体経済の落ち込みを加速させるだけに、米国を中心とする中央銀行による資金供給は空前の規模となっている。(ニューヨーク=滝田洋一)


 【解説】

 世界のマネー 伸び鈍化

 目詰まりの金融システム

 信用メカニズム逆回転


 米国を中心に世界の中央銀行が大規模な資金供給をしても、マネーの伸びが鈍化しているのは、金融システムが目詰まりを起こしているからだ。バブル崩壊後の日本のように銀行が傷ついているばかりでなく、既存の金融機関の外側にあり「影の金融システム」と呼ばれるヘッジファンドなどが痛手を被っている影響が大きい。

 金融システムが健全に動いている場合、民間銀行は中央銀行が供給したマネーを元手に、その何倍もの融資や投資をする。信用創造だ。

 最近ではファンドなどが銀行借入を元手に、リスクをとった投資を拡大してきた。住宅バブルの崩壊と金融不安の高まりで、こうした信用創造のメカニズムがいわば逆回転を起こしている。

 ファンドなどは資産の圧縮を余儀なくされ、売却圧力が一段と資産価格を押し下げる「負の循環」が強まっている。放っておくとマネーには収縮圧力が強まりやすい。

 米国では9月のリーマン・ブラザーズ破綻以降、信用収縮が本格化。そうした圧力を和らげようと、米連邦準備理事会(FRB)が資金供給のアクセルを踏んだ。

 民間への資金供給が増えた結果、現金や準備預金も10―12月には前年比四割以上も増える見込みで、FRBの総資産も初めて二兆ドルを突破した。大量のマネーの供給を受けても、銀行などの金融機関は資金を抱え込んだままのため、企業や家計は貸し渋りに直面する状況が続いている。

 マネーの供給だけではなく、資本の注入や不良資産の買取りを通じた金融機関の健全化が、緊急の課題となっている。(ニューヨーク=滝田洋一)


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NO.226  2008/11/07(金) 日本経済新聞より

 欧州、一斉利下げ
 
 日米欧マイナス成長に IMF来年予測

 戦後初 新興国も鈍化


 国際通貨基金(IMF)は六日、2009年に戦後初めて日米欧の成長率がそろってマイナスになるとの見通しを発表した。金融危機に端を発した世界経済の減速が一段と深刻になる公算が大きくなってきたためで、欧州中央銀行(ECB)は0.5%、英イングランド銀行が1.5%の利下げを決定。利下げで先行した日米に足並みをそろえた。世界同時不況回避には、機動的な財政出動による需要下支えが焦点になる。

 【ワシントン=大隅隆】
 IMFが発表した最新の世界経済見通しによると、09年の世界全体の実質経済成長率は10月8日時点の前回予測より0.8ポイントの下方修正となり、2.2%まで落ち込む。地域別のマイナス幅は米国が0.7%、ユーロ圏が0.5%。先進国で最も落ち込みが大きい英国は1.3%。日本は.02%。
中国は8.5%成長を見込むが前回予測を0.8%下方修正した。

 前回予測から一ヶ月足らずで大幅な修正を迫られたのは、金融危機の影響が世界経済に急速に波及したためだ。IMFは「雇用不安と利益減少の懸念が家計と企業で急速に台頭。一斉に消費抑制に動く一方、企業も投資絞込みに奔走している」と指摘。高成長を維持してきた新興国も、資本流出や通貨急落で大幅な成長減速に直面しているとした。

 世界各国は財政・金融政策による景気下支えに動いているが、信用収縮と実体経済の悪化が連鎖的に起きることで、世界経済がさらに減速するリスクも浮上している。IMFは「各国の財政出動は現時点では限定的な規模にとどまる」と指摘。実体経済の減速に合わせて、金融機関への資本注入拡大や需要刺激型の財政出動の追加が必要になるとの見通しを示した。

 

 欧州中銀 0.5%下げ

 英、異例の1.5%


 【ロンドン=吉田ありさ、フランクフルト=赤川省吾】

 イングランド銀行は六日、政策金利を1.5%引き下げ年3.0%とした。ECBは12日からユーロ圏15カ国に適用する主要政策金利を3.25%とする。スイス国立銀行も政策金利を0.5%引き下げ1.5%−2.5%とした。チェコ中銀は0.75%、デンマーク中銀は0.5%の引き下げを決めた。

 英中銀、欧州中銀、スイス中銀の利下げは、米連邦準備理事会(FRB)など米欧主要中銀が十月八日に実施した協調利下げに続くもので、二ヶ月連続。英中銀が英政府から金融政策運営の独立性を確保した1997年以来、0.5%を超える金利変更は初めてで、政策金利は1955年以来ほぼ半世紀ぶりの低水準となる。

 欧州中銀のトリシェ総裁は六日の記者会見で「インフレ率は七月から着実に低下している」と発言。「今後も下がり続けるだろう」と述べた。総裁はこの日の理事会では「複数の選択肢を協議し、0.75%の利下げも議論した」ことを明らかにし、追加緩和の可能性をにじませた。



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NO.225  2008/10/29(水) 日本経済新聞より

 米住宅価格、下げ最大

 8月指数 主要10都市で17.7%


 【ニューヨーク=米州総局】
 米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が28日発表した八月の「S&Pケース・シラー住宅価格指数」は、主要十都市平均で前年同月比17.7%下落し、調査開始以来、最大の値下がりとなった。主要二十都市平均も16.6%下落した。ともに下落は二十ヶ月連続。

 中略

 都市別で下落率が最も大きかったのはフェニックスで前年同月比30.7%。次いでラズベガスで同30.6%、マイアミが28.1%

以下略

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NO.224  2008/10/26(日) 日本経済新聞より

 世界の時価総額、半減
 
 株安・円高深まる混迷


 
世界的な金融危機をきっかけにしたマネーの激流は先週、日本の為替・株式市場を直撃した。円相場は一週間で対ドルで七円も急騰、日経平均株価は1000円を越す下げとなり、2003年につけたバブル崩壊後の安値に迫った。円高と株安の負の共振に歯止めがかかるのか。週明けの市場も波乱含みだ。

 昨年10月ピーク時から減少加速
 
 負の連鎖、3000兆円消失


 世界全体の株式時価総額が急減している。前週末は三十一兆ドル(約三千兆円)となり、昨年十月末のピークに比べて半減した。一年間で約三千兆円が目減りした。世界景気が予想を上回るスピードで悪化するとの懸念からマネーの株式離れに拍車がかかっており、先進国から新興国まで株安が加速している。急激な株価の下落が消費や投資の減少を通じて実体経済を一段と冷え込ませる可能性が強まっている。

 時価総額は各市場に上場する企業の株式数に株価を掛け合わせた金額の総計。国際取引所連盟(WFE)によると、世界の株式時価総額のピークは昨年十月の六十三兆五百億ドル。金融危機の表面化でその後は減少が続き、八月末で四十九兆六百億ドルと二割強減った。米モルガンスタンレーの算出する世界株指数を使って推計すると、24日現在は三十一兆ドルに減ったもよう。

 月間の減少額は七、八月は二兆ドルだったが、九月は七兆ドル、十月は十一兆ドルと加速。ピークからの減少額の三十二兆ドルは世界の名目国内総生産(GDP)の六割強に相当。日本の個人金融資産の二倍が世界で吹き飛んだ計算になる。ヨルダンなどごく一部を除いて、一年前に比べて株価が上昇している市場が見当たらない異例の事態だ。

 主要市場の騰落率を見ると、ロシアが75%も急落。株安が止まらず取引を一時停止した。中国やアルゼンチンも六割超下落している。日本も日経平均は半値以下。今年前半まで堅調だったカナダや南アフリカも資源価格下落の影響で低迷している。ここに来て欧州の下落がきつく、金融危機の震源地である米国の下落率を上回っている。東欧や中南米では株価が一年前の三分の一になったところが相次いでいる。

 株価下落は「家計の金融資産の含み損が『逆資産効果』となり、消費者心理を悪化させる」(大和総研)。株安に歯止めがかからなければ消費の落ち込みや企業の設備投資抑制で実体経済が悪化、更なる株安を招く悪循環に陥る懸念もある。


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NO.223  2008/10/19(日) 日本経済新聞より

 動揺、金融から実体経済へ
 市場、激動の2週間


 米国発の金融危機が世界中に連鎖し、株式・原油・為替市場の混乱が続いている。十月に入ってから二週間あまりの各市場の値動きは激しく、企業や家計にも影響を与えている。米欧が金融安定化策を打ち出したことで、金融危機の広がりには歯止めがかかる可能性も出てきた。ただ実体経済の悪化はこれから鮮明になるとの見方が多く。不安定な市場が続きそうだ。

 株式 乱高下収まらず

 米欧の金融危機と世界景気の後退懸念を背景に、株式相場は乱高下が続いている。

 日経平均株価は八日に前日比九百五十二円安、十日に八百八十一円安と大幅に下落した後、十四日には主要国の金融安定化策を好感し、史上最高の上昇率(十四%)で急反発した。ところが十六日、米景気の悪化を示す経済指標が相次ぐと、1987年のプラックマンデー(株価大暴落)に次ぐ史上二番目の下落率(11%)を記録した。

 日経平均は九月末から前週末までの値下がり率が二十三%に達した。2003年4月につけたバブル崩壊後の安値の7607円まで、あと1000円強に迫っている。

 「投資指標を見れば割安に映るが、投資家は実体経済の悪化を警戒して買いを見送っている」大和住銀投信投資顧問の稲葉豊樹執行役員はこう話す。国内では建設・不動産業の経営破綻が相次ぎ、百貨店の08年8月中間決算は総じて不調に終わった。急激な円高も輸出企業の採算悪化に拍車をかけている。

 外国人投資家は慎重姿勢を強めている。信用取引を手掛ける個人投資家をみると、投資額に対する含み損の割合は40%弱。歴史的な高水準にあり、積極的な買い手は乏しい

 週明けから企業の4―9月期決算発表が本格化する。業績予想の下方修正が相次ぐ場合には、引き続き荒っぽい展開になりそうだ。

 原油 ピークの半値に 新興国も需要減

 原油価格の下落は加速している。金融危機が実体経済に波及し始め、世界的な石油需要の減退懸念が台頭してきたためだ。ファンド勢が投機マネーを引き揚げ、換金売りに動いたのも引き金になった。

 ニューヨーク原油先物市場のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)価格の十七日終値は1バーレル71.85ドル。(7.5%)安い。7月11日につけた最高値の147.27ドルのほぼ半値になった。

 世界の石油消費量の四分の一を占める米国では、石油製品の需要が前年比4%のペースで落ち込んでいる。10月10日時点のガソリン在庫は一億九千三百八十万バーレル。前週比で七百万バーレル(3.7%)増え、三週連続の増加となった。原油在庫も三億八百二十万バーレルと三週連続で拡大した。

 欧米の金融危機はアジアの新興国の石油実需にも波及してきた。特に中国は「北京五輪前に積み上げた石油製品の在庫が多く残っており、輸入を大幅に絞り込んでいる」(コスモ石油)。インドなどの実需にも陰りがみられるという。

 市場では「株価下落による消費不振が深刻で実体経済の悪化が避けられない」(総合商社)との見方が急速に広がっている。

以下略


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NO.222  2008/10/07(火) 日本経済新聞より

 【大機小機】
 過剰流動性という怪物


 未曾有の金融危機に世界が揺れている。乱気流を読み解くカギは過剰流動性だ。混乱の遠因をたどると2000年のITバブルと、米同時テロ後の金融緩和で生じたカネ余りに行き着く。過剰流動性は米国の住宅や資源、新興国株式などに流れ込み「バブルの飛び火」が起きた。

 上がりすぎた米住宅価格が下げ始めた後に原油高騰に弾みがついたのも、行き場を失った過剰流動性が消去法的に原油市場に流れ込んだためだ。日本株のバブル崩壊が1990年に始まった後、不動産がしばらく命脈を保ったのと同じ現象だ。原油市場はおカネの緊急避難先となったにすぎず、実需とかけ離れた金融相場は早晩収束する運命だった。

 原油の調整は好ましいことだが、深刻なのは過剰流動性の受け皿がついに見当たらなくなったことだ。何かが下がっても別の何かが上がれば埋め合わせがきく。だが夏場以降、バブルの飛び火が途切れ、すべてが同時にしぼむバブル崩壊ドミノが始まった。世界経済の減速で上げシナリオが描ける市場が消えたのだ。

 問題は下落のペースと幅をどこまで抑制できるかだ。金融波乱を放置したままでは思わぬ急落を招きかねない。

 残念ながら、ようやく成立した米金融安定化法の実効性には疑問符がつく。不良債権買取は金融機関の債務超過を表面化させるし、当事者責任を厳しく求めている点も実際の運用には障害になる。

 そもそも米国は中央銀行の力に頼りすぎている。資金供給は緊急輸血にすぎず、病巣に直接働きかける力はない。

 一方で膨大な資金供給は再び金余りを招き、資産バブル(通貨価値下落)の温床となる。一時しのぎが制御不能の怪物をつくる繰り返しだ。このままでは二十一世紀の世界は、物価も成長率も資産価格も、過剰流動性の人質となってしまう。

 バブル崩壊は金融機関の資本不足に帰着する。資金供給で急場をしのいだら、一刻も早く公的資金を注入し、政策を総動員してでも問題を根治すべきだ。対応を誤れば、かつての日本のようにデフレと流動性のワナにはまり、出口を見失うことになる。

 小泉―竹中改革に学んだはずの米国は、今のところ日本が経た試行錯誤を早送りビデオのように繰り返しているだけだ。バブルは人間の知恵を超えた自然現象か。カネ余りとどう付き合い、飼いならすか正念場である。(六光星)

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NO.221  2008/10/01(水) 日本経済新聞より

 時価総額 2000兆円目減り

 金融危機直撃 GDPの4割

 世界の株、ピークから1年で


 世界の株式時価総額が急減している。9月末の主要な証券取引所の株式時価総額合計は、過去最高だった2007年10月末に比べ二千兆円以上減ったもようだ。米金融危機で株安に拍車がかかり、世界の名目国内総生産(GDP)の四割強に相当する価値が目減りした。株安による家計や年金の資産減少が消費や投資を冷やし、世界の実体経済に影を落とす懸念が広がっている。

 国際取引所連盟(WFE)が集計する世界の株式時価総額は八月末で四十九兆六百二十八億ドル(五千百兆円)と、昨年十月に比べ十四兆ドル減少。一方、世界の株価動向を反映する指数で、米モルガン・スタンレー系が算出する「MSCI世界株指数」は八月末に比べて直近は14%下落している。

 ここから推計すると、九月末の世界の時価総額は四十二兆ドル前後まで減少している公算が大きく、昨年十月末のピークの三分の一に当たる二十一兆ドル(二千百兆円)前後が目減りした計算だ。

 減少した二十一兆ドルは世界のGDP四十八兆ドル(06年)の四割強に相当し、日本の個人金融資産千五百兆円の1.4倍にあたる規模だ。

 昨年十月に比べて八月末の時価総額が一兆ドル以上減少した取引所は五ヶ所。ニューヨーク証取は二兆七千億ドル超、ロンドン証取とユーロネクスト、上海証取が一兆一千億ドル強、香港証取が一兆ドル強、それぞれ減った。

 これに対し東京市場は八千七百億ドル強(19%)の減少にとどまる。ただ、この間に為替相場が円高に振れた影響が大きく、円ベースではこの間に東証一部の時価総額が約百二十兆円(23%)目減りした。九月末ではさらに減り減少率は三割を超える。

 九月末時点の世界の株価騰落率をみると、昨年十月に比べ主要二十市場すべてで下落している。最も下落率が大きいのは中国・上海の六十一%。ロシアも四十六%のマイナスと、新興国市場での下落率が大きい。日経平均株価は三十三%下がった。

 昨年末までの世界的な株価上昇局面では株高が実体経済に好影響を与えてきた。特に米国では、個人が投資信託を通じて保有する株式の価値増加が旺盛な消費を支え、世界景気をけん引した。

 この循環が急速に逆回転を始めたことで「個人消費が抑えられ、企業経営にも悪影響を及ぼす」(米JPモルガン・チェース)との見方が増えている。企業は設備投資や研究開発費を抑制。「実体経済の悪化が、金融機関の一段の資産劣化や経営状態の悪化をもたらす」(田辺経済研究所の田辺孝則代表)懸念もある。

 銀行間取引マヒ続く 欧州中銀資金供給

 ドル資金の銀行間取引金利が高止まりしている。指標となるロンドン銀行間取引金利(LIBOR)は三十日、四半期末超えとなる翌日物金利が前日比4.31%上昇の6.88%と、過去最高を更新した。三ヶ月物金利は前日比0.17%上昇の4.05%と、八ヶ月ぶりの高水準となった。欧州中央銀行(ECB)は同日、通常は一日一回の翌日物のドル資金供給を二回実施した。

 前日に日米欧の各国中銀が米連邦準備理事会(FRB)からドル資金を調達して自国に供給する額を六千二百億ドル(約六十五兆一千億円)に倍増すると発表したものの、欧米金融機関の相次ぐ破綻で信用収縮が一段と加速している一週間物以上のドル資金の取引はほとんど成立していない異例の事態に陥っている。

 米金融法案、下院が否決

 29日のNY株 777ドル安、最大の下げ



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NO.220  2008/09/27(土) 日本経済新聞より

 米銀6位破綻  淘汰の波、銀行にも

 米金融危機による再編・淘汰の波が「証券」から「銀行」へと広がってきた。米貯蓄金融機関(S&L)最大手ワシントン・ミューチュアルは経営破たんし、米銀大手JPモルガン・チェースが銀行業務を買収。米史上最大の銀行破たんとなった。今後も預金流出から資金繰りが悪化する銀行は増えかねない情勢だ。決済を担う銀行の経営悪化が一段と広がれば、金融システムを揺るがす可能性もある。

 個人預金流出響く

 証券以上に家計に影響

 金融危機、より混迷


 ワコビア株急落

 ワシントン・ミューチュアルは預金量が全米六位の千八百億ドル超(約十九兆円)。日本の地銀最大手、横浜銀行の約二倍の規模を持つ同行を最終的に追い詰めたのは不安にかられた預金者の動きだった。リーマン・ブラザーズが破綻した今月15日以降、引き出された預金は百六十七億ドル。総預金の一割弱に相当する額で、資金繰りは一気に苦しくなった。ただ同行は国際事業は手掛けておらず、日本を含む海外への影響はほとんどない。

 一方、26日午前(日本時間同日夜)の米株式市場では米銀四位のワコビア株が急落し、一時前日終値比27%安い9.93ドルを付け、10ドルを割り込んだ。ワシントン・ミューチュアルの破綻を受け、同行と並ぶ住宅ローン大手のワコビアの経営が不安視されているようだ。中西部が地盤で十位のナショナル・シティも四割超安い二ドル台後半まで下げた。昨年夏から始まった金融危機は、まず証券会社を直撃した。保有資産を毎日のように時価換算する証券会社は、不動産担保証券などの評価損の度重なる計上で信用力が低下。株価急落や資金繰り悪化によりベアー・スターンズやリーマンなどが破綻や身売りに至った。ゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーが銀行持ち株会社に移行し、証券大手五社で専業は姿を消した。

 証券に比べ体力がある銀行も追い込まれている。預金保険の適用対象となる金融機関八千四百行が抱える不良債権と延滞債権の合計は六月末で二千七百四十八億ドル(約二十九兆円)と、一年間でほぼ倍増した。

 「問題行」117行も

 米銀の破綻は今年十三件と昨年の三件から急増。米連邦預金保険公社(FDIC)から自己資本や手元流動性が不足する「問題行」と指定された金融機関は117行(今年六月末)にのぼる。特に規模の小さい地銀への懸念が強まっている。

・・・以下略

 
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NO.219  2008/09/23(火) 日本経済新聞より

 米、銀・証の垣根消滅へ

 ゴールドマンとモルガン、  銀行持ち株会社に


 米連邦準備理事会(FRB)は21日、米証券ゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーの銀行持ち株会社化を承認、米金融業界は歴史的な転換点を迎えた。銀行と証券の垣根は事実上消滅し、証券専業大手は姿を消す。両社はFBIの監督下に移り、資金供給を受けやすくなる一方、自己資本の充実も求められる。

 再編 一段と加速

 規制緩和に逆行の指摘


 
モルガンが三菱UFJフィナンシャル・グループの出資を受け入れるのもこの一環とみられ、金融再編を一段と加速する可能性がある。だが、規制強化への傾斜を強める判断には拙速との指摘を受ける可能性もある。

 銀行持ち株会社になることで、ゴールドマンとモルガンは米証券取引委員会(SEC)からFRBと米連邦預金保険公社(FDIC)の監督下に入る。モルガンが三菱UFJの出資受け入れを決めたように、両社は自己資本拡充と保有資産の削減に動きそうだ。市場が安定性を欠く現在、金融機関には今まで以上に厚い自己資本が必要となる。

・・・以下略。 

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NO.218  2008/09/18(木) 日本経済新聞より

 AIG米政府管理下に

 救済策決定  株8割取得の権利


 米政府・連邦準備理事会(FRB)は16日、米保険最大手のアメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)に最大八百五十億ドル(約九兆円)のつなぎ融資を実施すると決めた。見返りとして同社の79.9%の株式を取得できる権利を政府が確保することにし、事実上、政府の管理下で再建にあたる。米国発の金融危機を防ぐ狙い。一方、FRBは同日、最重要の政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を現行の年2.0%のまま据え置くことを決めた。


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NO.217  2008/09/17(水) 日本経済新聞より

 リーマン破綻   バンカメはメリル合併

 連鎖危機回避へ資金供給  

 

 経営危機に陥った米証券大手リーマン・プラザースは15日、米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請し、経営破たんした。

 一方、米大手銀行のバンク・オブ・アメリカは株価が急落していた米証券大手メリル・リンチを総額五百億ドル(約五兆二千億円)で買収すると発表した。金融不安の高まりを受け、日経平均株価は16日、前週末比600円超下げ年初来安値を付けた。

 リーマンの負債総額は六千百三十億ドル(約六十三兆七千五百億円)で米国で史上最大の倒産となる。米大手金融機関の破産法申請は異例。

 米銀行二位のバンク・オブ・アメリカはメリルを事実上、救済合併する。合意によるとメリル一株に対しバンカメの0.8595株を割り当てる。2009年3月までに合併を完了する計画だ。

 
 日米欧、2日で36兆円

 日経平均が年初来安値   ドル急落、一時103円台


 米証券大手リーマン・ブラザーズ破綻のショックが世界の市場を駆け巡っている。16日の東京市場では日経平均株価が六百円を超える下げとなり、半年ぶりに年初来安値を更新。アジアの株式相場も軒並み急落した。外国為替市場ではドルが売られ、1ドル=103円台までドル安・円高が加速した。日米欧の中央銀行は16日、金融市場の不安を和らげるために二十三兆円超の資金供給を実施、前日と合わせた供給額は三十六兆円を上回った。ただ、16日の欧米株式市場は続落して始まり、市場の動揺は続いている。


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NO.216  2008/09/09(火) 日本経済新聞より

 鉄鉱石 追加値上げ要請
 
 今春の「65%」に続き

 鋼材価格、さらに上昇も 鉄鋼業界250億円負担増


 ブラジル資源大手のヴァ−レ(旧リオドセ)が新日本製鉄など鉄鋼大手に対し、2008年度の鉄鉱石価格の追加値上げを要請してきた。今春に07年度比で65%値上げしたが、世界的な需給逼迫を受け、今週からさらに約12%引き上げたい意向。年度途中の値上げが実現すれば異例で、鉄鋼業界全体で約250億円前後の追加負担が生じる。鉄鋼各社は電機や造船会社と鋼材の値上げ交渉を進めており、止まらぬ資源高が鋼材再値上げに波及する可能性が高い。

 鉄鉱石で世界最大手のヴァーレは今年二月、ブラジル産鉄鉱石の値上げで鉄鋼大手と合意。四月から前年度より65%高い1トン79ドル弱に引き上げた。今回、さらに約12%高い1トン89ドル弱に値上げする意向を示しており、早ければ十月から実施したい考え。鉄鋼大手は反発しているが、ヴァーレは追加値上げが通らなければ供給停止も辞さない姿勢のため、ある程度はのまざるを得ないと見られる。

 日本は鉄鉱石のほぼ全量を輸入し、約六割を豪州産が、二割強をプラジル産が占める。通常は年度を通じて取引価格は変わらず、プラジル産と豪州産も同額で決着していた。ところが今年は豪英系BHPビリトンが七月に豪州産を最大約二倍値上げすることで合意、プラジル産と初めて差がついた。ヴァーレが異例の追加値上げを要請してきた背景には、豪州産との価格差を是正したい思惑もあるとみられる。

 鉄鋼大手は当初、08年度の鉄鉱石値上げによるコスト上昇分を約五千億円と見込んでいた。しかしBHPの値上げで一千億円の追加負担が生じるみ込みになった。今回の値上げを受け入れれば、さらに250億円前後の負担が生じ、収益の圧迫要因になる。

以下略、
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NO.215  2008/09/07(日) 日本経済新聞より

 【社説】 
 強まるインフレ圧力 世界経済に波紋

 新興国賃金上昇の意味

 アジアをはじめとする新興国で速いピッチの賃金上昇が続いている。根本的な要因は比較的高い経済成長にあるが、最近は燃料や食糧などの価格高騰も賃上げ圧力となっている。日本を含む世界経済が「インフレなき成長」を持続できた前提の一つが、揺らぎ始めたように見える。その一方で、新興国の国民の所得向上は世界の経済成長の新たなエンジンにもなりつつあるだけに、インフレの管理が改めて重要になる。

 労働力の余剰感薄れる

 中国の輸出の三割を担う広東省の当局が「賃金倍増改革」を打ち出した。今年から五年間、毎年14%以上の賃上げを続け2012年の賃金水準を07年の倍にするという。

 当局が賃金に介入できるのか、インフレを悪化させないか、など様々な疑問が投げかけられており、今のところ強制力のある政策ではないようだ。ただ、当局があえて野心的な計画を掲げたのは、それなりの裏付けと必要性があるからだ。

 07年の同省の平均年間賃金は二万九千二百二十九元(約四十六万七千円)。03年から年率平均で10%上昇しており、「計画」はペースをやや速めることで達成できる。同省の高成長をけん引してきた加工輸出産業は豊富な出稼ぎ労働者に支えられてきたが、04年ごろから十分に手当てできなくなっている。

 一方で中国政府は、企業の解雇権を制約する労働契約法を今年一月に施行するなど、労働者の待遇改善と権利保護の姿勢を強めている。労働力の供給が引き締まっているところに政策面の要求も加わって、当局自ら賃上げの旗をふり始めた形だ。

 中国は地域によって賃金水準の格差が大きいが上昇傾向は全国的だ。内陸部の比較的貧しい青海省は五月、最低賃金を三割も引き上げた。

 1990年代、中国の農村部には「無尽蔵の余剰労働力がある」といわれ、80年代から高成長を持続してきた広東省でも出稼ぎ労働者の賃金は伸び悩んだ。ここにきて局面は変わったようだ。
 
 日本では高度成長期の60年代、農村部の余剰労働力が枯渇し賃金が急上昇し始めた。経済学で「ルイスの転換点」と呼ばれる変化だ。中国もこの転換点を迎えつつあるのも見方が出ている。特に三十年近い産児制限政策の結果、若年労働力が急に枯渇し始めたとの指摘がある。

 賃金上昇は他のアジア新興国でも目立つ。日経リサーチが現地に進出した日系企業を対象に実施している調査によると、インドやベトナム、インドネシアでは06年、07年と二ケタの上昇率で賃金が上がった。

 中国のように余剰労働力の枯渇といった議論は起こっていないが、やはり高成長や労働者寄りの政策への傾斜が背景にある。

 97年のアジア通貨危機を克服したあと、世界経済が「インフレなき成長」を実現した一因は、中国をはじめとする新興国が低廉な労働力を活用して比較的良質な製品やサービスを安価で大量に供給できるようになったことだった。

 先進国では割安な製品の輸入増で物価が安定し、同時に賃金を抑制する圧力が働いた。だが、新興国の賃金上昇の影響もあり製品価格は上がりつつある。特に中国の場合、人民元高も加わり影響が大きい。

 産業の高度化が課題に

 日本の中国からの輸入価格指数は04年度にプラスに転じ、07年度は7.7%上昇した。資源高騰も新興国の成長が一因だ新興国の産業発展はもっぱらインフレ抑制要因とみなされてきたが、いまやインフレ要因としての側面も大きくなった。

 一方で新興国との賃金水準の開きは依然大きいため、先進国は輸入物価の上昇と賃金デフレという二つの外部圧力に挟まれた形になる。

 もちろん、新興国の国民の収入が増えることは先進国にとってチャンスでもある。付加価値の高い製品・サービスの市場としても投資先や資金調達先としても魅力が高まる。

 先進国が新興国パワーの取り込みを競い合う時代を迎え、日本は経済連携協定(EPA)を軸に貿易・投資の一層の拡大を促す政策を加速すべきである。新興国マネーに「日本は魅力的だ」と感じさせる金融・為替政策も重要だろう。

 新興国ではインフレの管理が緊急の課題になる。やみくもな賃金上げは物価高を加速し、結果的に実質賃金は伸び悩む。70年代の石油危機を労使協調で克服した日本の経験も参考になるのではないか。

 中長期的には産業構造の高度化が大切だ。労働集約的な加工輸出産業を中心に工場閉鎖が相次ぐ広東省の当局は、ハイテク産業や先端的サービス業の育成を重視するという。その具体化がこれから問われる。

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NO.214  2008/08/24(日) 日本経済新聞より

 国民年金積立金 2047年度の枯渇
 基礎年金 国庫負担上げないと
 厚労省が試算


 
基礎年金の国庫負担割合を将来も二分の一に引き上げず、現行の36.5%にとどめた場合、自営業者が加入する国民年金の積立金が2047年度に枯渇するとの厚生労働省の内部試算が23日、明らかになった。国民年金を含む全国民共通の基礎年金の給付財源が賄えなくなり、すべての公的年金の給付財源が不足する事態に陥る。

 政府は04年の年金改革で09年度までに国庫負担を二分の一に引き上げると決めたが、必要な二兆円余りの財源のメドは立っていない。現行では今世紀半ばから積立金を計画的に取り崩し給付に当てる予定だが、国庫負担を上げなければ積立金の取り崩しが早まる。

 試算では、年金の給付水準を現行制度で約束している「現役世代の手取り収入の50%以上」よりも下げ、40%強に抑える前提。それでも現在10兆円弱の国民年金の積立金は約40年後に底をつく。継続審議となっている08年度の国庫負担割合を37%強に上げる法案が成立しても、53年度には枯渇する。

 近い将来に国庫負担引き上げが実現し対応が遅れた間の財源を補えれば制度は維持できるが、給付水準の引き下げや保険料アップが必要になる可能性がある。

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NO.213  2008/08/23(土) 日本経済新聞より

 外貨準備 ドル比率最低に
 世界の合計 3月末63% IMF調べ
 ユーロの台頭映す

 世界の外貨準備に占める米ドル比率の低下が止まらない。国際通貨基金(IMF)の調べでは3月末時点で、各国金融当局が保有する外貨準備のうち米ドルの比率は63%と、1999年のユーロ発足以来で最低となった。ユーロ台頭に加え、信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題をきっかけに、米経済力を象徴してきたドルの基軸通貨としての立場は侵食されつつある。

 【円は3%に半減】

 IMFによると、外貨準備のうちで通貨構成が確認されているのは米ドル換算で合計約四兆三千二百億ドル(約四百七十五兆円)。このうち米ドルで保有されているのは約二兆七千二百億ドルで、その比率(63%)は、昨年末に比べ1ポイント低下した。

 米ドルの比率は、ユーロが発足した99年当時は70%超だったが2001年6月の73%をピークに下落に転じた。半面、ユーロの比率は18%前後から、今年3月末に27%と最高を更新した。円の比率はこの間に6%から3%に半減した。

 ユーロ圏の景気は足元で減速基調が強まっているものの、ここ2、3年は経済成長率で米国を上回る場面も目立ち、ユーロの外貨準備への組みいれを促した。一方、ドルは主要通貨に対して02年以降、下げ基調が続いているため、為替リスクの観点から外貨準備のドル集中を見直す動きもある。サブプライム問題をきっかけにした米金融市場の混乱も、こうした動きを助長している。
以下略
 

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NO.212  2008/08/17(日) 日本経済新聞より

 中国産の輸入物価 上昇
 人件費高騰や人民元高響く
 日本の物価上げ要因に


 
中国からの輸入品が日本に物価上昇圧力をかけ始めている。中国産の割合が五割を越す輸入品の輸入物価を調べたところ、衣類や玩具、オーディオなどの物価が前年より軒並み上昇。ここへきて上昇基調がはっきりしつつある。中国はこれまで安価な工業製品を供給する「デフレ輸出国」と位置づけられてきたが、上昇が続けば製品の値上げを通じて日本の消費者物価を押し上げる可能性もある。

 日銀がまとめた七月の輸入物価指数によると、ポロシャツや手袋は前年同月に比べて九l上昇。今春あたりから上昇ペースがじりじりと速まっている。パジャマやトレーナーも四l上がっている。輸入衣類では中国産のシェアが八割に上がっており、輸入物価の上昇が先行きの値上げ圧力となりそうだ。

 衣類以外でもこうした傾向がはっきりしている。中国シェアが九割の玩具は10%、同じく五割のカバンは9%とそれぞれ上昇。輸入割合が五割強の音響映像機器では、コンポなどオーディオは3〜4%の上昇となっている。このほか寝具やワイシャツに使う中国製綿糸が九年ぶりの高値をつけるなど、輸入物価上昇のすそ野が広がっている。

 2007年度の中国からの輸入金額は約15兆円。日本の輸入総額の二割を占める。財務省の貿易統計によると、中国からの輸入品の価格指数は04年度にプラスに転じ、07年度は前年比7.7%上昇し、足元でも上昇が続いている。

 中国製品の値上がりは人件費上昇の影響が大きい。中国都市部の年間平均賃金は07年に前年比18.7%上がった。今年1月には労働者の長期雇用を促す労働契約法が施行され進出企業からは「労働コストの上昇は避けられない」との声も出ている。

 人民元高も円やドルに換算した物価を押し上げる要因だ。中国当局が05年7月に人民元相場を切り上げてから3年で人民元は対ドルで二割上がっている

 第一生命経済研究所は「原油価格高騰に隠れがちだが、輸入物価全体の上昇分の一割弱は中国要因」と分析。日銀内などからも「中国はインフレ輸出国となりつつある」との見方が出ている。

 今のところ企業は自社努力でコスト吸収に努めているもようだ。電子部品大手のTDKは中国で省人化投資を進め、09年3月までに雇用の二割弱を削減。低価格を売り物にした百円ショップなどでは、より人件費の安いベトナムなどから調達する動きもある。

 中国国内でも消費者物価は上昇傾向で、今後も更に上がる可能性が高い。人件費上昇と合わせて中国の輸出品価格の引き上げ要因になりそうで、中国産が日本の低価格を支える構図が少しずつ変わっていく可能性がある。

 

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NO.211  2008/08/15(金) 日本経済新聞より

 日米欧、景気に後退色
 ユーロ圏 初のマイナス成長
 4−6月GDP実質0.2%減少


 
【フリュッセル=赤川省吾】
 日米欧景気に後退懸念が出てきた。欧州連合(EU)は14日、ユーロ圏15カ国の2008年4-6月期の域内総生産(GDP)が前期に比べて実質ベースで0.2%減になったと発表した。年率換算では0.8%前後の減少で1999年の通貨統合以来、初のマイナス成長となった。日本も4-6月期にマイナスに陥り、昨年10-12月期にマイナスだった米国も先行き不透明感が強い。世界景気は新興国頼みの構図が鮮明になり不安定さを増してきた。

 欧州経済のマイナス成長は、通貨統合前の95年に現行方式で統計を取り始めてから初めて。国別にみると、ドイツが4年ぶりのマイナス成長に転落、フランスやイタリアも振るわなかった。東欧では年2%を越す成長を維持した国もあるが、ユーロ圏主要国の不振でEU加盟27カ国全体のGDPも前期比で0.1%減となった。

 ユーロ圏の4-6月期は、年4%を超えた高い物価上昇率が個人消費の重しとなった。世界的な金融市場の混乱でアイルランドやスペインは投資マネーの流入が止まり、失業率の上昇が目立つ。主要国では企業が設備投資を手控えたこともマイナス成長の一因。製造業の新規受注が伸び悩み、ユーロ圏の5月の鉱工業生産は前月比で1.9%減と通貨統合以来の減少幅を記録した。ドイツは「特に建設業が悪かった」(連邦統計庁)

 ただ年率換算で2%台後半の高い伸び率だった1-3月期の反動減という側面もあり、欧州委員会の報道官は14日、「楽観はしていないが、技術的な調整だ」と述べた。新興国需要に支えられ、輸出はなお底堅い。欧州景気は減速局面に入ったが、08年の伸び率は1%台後半の潜在成長率を維持し、「景気後退には陥らない」(独IWH経済研究所のリンドナー氏)との見方もある。

 日本の4-6月期のGDP速報値は物価変動を除いた実質の年率換算で2.4%減。政府は02年2月から続いた戦後最長の景気回復が事実上後退局面に入ったことを認めた。

 米国は昨年10-12月期にマイナス成長に陥った後、減税効果でプラス成長を維持してきたが、米金融不安がなおくすぶり、インフレ懸念も強まっていることから、7-9月期以降は不透明感が増している。

 一方、中国やインドなどの新興国の景気はなお堅調で、後退懸念が出てきた日米欧景気を下支えする形になっている。

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NO.210  2008/08/07(木) 日本経済新聞より

 中国、金融引き締め修正
 マクロ政策「景気」に軸足
 融資規制を緩和


 【北京=高橋哲史】
 中国政府は北京五輪後の景気下振れを防ぐため、金融引き締め政策の修正に乗り出した。中国人民銀行(中央銀行)は昨年秋に強化した銀行融資の総量規制を緩和。輸出低迷で苦境に立つ企業を支援する。中国政府はこれまでインフレ抑制のため金融引き締めを強化する一方、公共事業の拡大など財政を通じて成長維持を目指してきた。マクロ経済政策全体が景気重視に軸足を移すことで、インフレ加速を懸念する声も出ている。

 インフレ加速懸念も

 人民銀は昨年十月の共産党大会後、外資系銀行を含む国内の銀行に対し「窓口指導」と呼ばれる行政指導を通じて融資残高を一定の枠内に抑えるよう指示してきた。融資の急増により、不動産市場のバブル懸念など問題が生じていたためだ。

 各行は窓口指導に基づき、今年の融資残高計画を人民銀行に提出。人民銀行はこれまで、各行が計画を守っているかを厳しく監視してきた。しかし、人民銀は七月下旬から計画の増額修正に応じ始めたもよう。中国国営の新華社は六日、人民銀が中小企業を支援する狙いで、全国に支店を持つ銀行は5%、中小企業向けの融資が多い地方銀行は10%の融資枠拡大を認める方針を打ち出したと報じた。昨年から引き上げてきた預金準備率の水準については当面、維持するとの観測が金融市場では多い。

 中国の今年4-6月期の国内総生産(GDP)は前年同月比10.1%増。二ケタ成長を維持しているが、今年上半期の貿易黒字が前年同月比11.8%減ったことで成長率は前期より0.5ポイント低下。不動産相場も軟調に推移している。沿海部の輸出企業の経営は急速に悪化しており、胡錦濤政権内ではこうした企業への支援策を求める圧力が高まっていた。

 中国共産党は七月下旬の政治局会議でインフレ抑制を最優先に掲げつつ、マクロ経済政策の目標の一つを「景気過熱の防止」から「経済の安定的で比較的速い発展の保持」に変更。政府は今月一日から衣料品など繊維製品の輸出抑制策を緩和するなど輸出企業の支援策を実施している。

 今回の融資規制緩和は金融面での初の支援策となる。ただ消費者物価は依然、高水準で推移している。引き締めの手綱を緩めれば、インフレを制御できなくなるとの懸念も根強い。中国の輸出品の価格が上がると世界的なインフレ加速につながる恐れもあり、世界経済の新たな波乱要因になりかねない。


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NO.209  2008/07/30(水) 日本経済新聞より

 米住宅価格 最大の下げ
 5月16.9% 金融機関、損失増も


 【ニューヨーク=発田真人】
 米住宅価格の下落に歯止めがかからない。スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が29日発表した五月の「S&Pケース・シラー住宅価格指数」は主要十都市ベースで前年同月比16.9%下落し、過去最大の値下がりを記録した。ピークの2006年6月からの下落率は19.8%と二割近くに達したが、調整の底はなお見えない。金融機関の損失拡大、個人消費の低迷など米景気低迷が長引くとの懸念が強まりそうだ。

 個人消費にも影

 20都市ベースでも同15.8%下落し、すべての都市での下落が続いた。ラスベガス28.4%、マイアミ28.3%、ロサンゼルス24.5%など、住宅ブームに沸いたネバダ、フロリダ、カリフォルニア各州の主要都市で年率二割を超える値下がりとなった。

 自動車産業の拠点であるデトロイトの住宅価格が17.4%下落したほか、人口が集中するニューヨーク、ワシントンなどの主要都市でもそれぞれ7.9%、15.4%下落。全米で深刻な住宅価格の下落が止まらない。

 住宅市場の最新動向を最も反映する中古住宅販売でも、先週発表の六月の販売数は前月比2.6%減の四百八十六万戸と、現行統計が整備された1999年以来最低を記録した。在庫水準も過去最大に膨らんでおり、住宅市場に回復の兆しは見えない。

 住宅価格下落の影響は金融機関経営を直撃する。米銀の4―6月期決算では住宅ローンの不良債権増加による多額の損失計上が相次ぎ、中堅・中小銀行の破綻も目立ってきた。金融機関は一段と融資姿勢を厳しくしており、自動車販売の低迷、高額商品の買い控えなど個人消費への影響も出始めている。米経済は低空飛行ながらプラス成長を保っているが、米市場では戻し減税の効果が消える秋以降に景気が下振れするリスクを指摘する声もある。 


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NO.208  2008/07/15(火) 日本経済新聞より

 米、長期金利の上昇警戒
 住宅公社 550兆円の証券を保有・保証
 財政負担 増大懸念 かじ取り難しく


 【ニューヨーク=山下茂行】
 米政府が公的支援に言及した米連邦住宅抵当公社(ファニーメイ)と米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)は業績が急速に悪化しており、国有化などさらに踏み込んだ支援策を迫られる可能性もある。両公社が保有・保証する住宅ローン担保証券(RMBS)は約五兆二千億ドル(約五百五十兆円)にのぼる。公的関与を強めれば、財政負担増大への懸念から長期金利が上昇することへの懸念が米政府内にも浮上している。

 ファニーメイとフレディマックは民間の業者から買い取った住宅ローン債券をRMBSに仕立て直して市場で売却するのが主な業務。このRMBSには公社による元利払の保証が付くという特色がある。

 信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)を裏付けとする証券化商品などの保証で多額の損失を計上、経営が不安定になっている金融保証会社(モノライン)と同じ構図だ。
公社のRMBSは信用力の高い住宅ローン債券だけを込みこんでいるが、焦げ付きが生じて元利払が滞れば公社の負担となる。

 公社は投資目的でRMBSを保有もしてもおり、ここにはサブプライムローンなど信用力の低いローン債権も含まれる。公社が保証または保有するRMBSは合計五兆二千億ドルにのぼるほか、社債でも一兆六千億ドル強発行している。米政府が公社への公的関与を強めれば、米国債の市場での発行残高(約四兆七千億ドル)をも上回る巨額の「負債」を抱え込むリスクがある。

 このため公社の経営危機が深まるなかでも、米政府は「全面支援」の姿勢を打ち出しきれずにいる。13日の声明で米財務省は公社への資本注入について「一時的な権限」と限定条件を付けた。実際、先週末は公社支援による財政悪化が懸念されて、長期金利が大幅に上昇。赤字国である米国は国債発行で財政穴埋めを続ける必要があり、赤字体質に拍車をかける長期金利の上昇は容認できないシナリオだ。

 その一方、サブプライム問題で民間金融機関は住宅金融業務を相次いで縮小しており、公社の存在なしには米住宅市場の低迷が一段と加速するのがほぼ確実。公社の社債は「米政府の暗黙の保証」が付くとの見方から海外の投資家による保有も多く、債務不履行の恐れが強まるようなことになればドル相場の急落にもつながりかねない。

 こうした事情から「米政府は公社の業務拡大を支援し続けざるを得ない」(ゴールドマン・サックスのエコノミスト、ハチウス氏)との見方が市場では根強い。ただ、踏み込んだ対応には金利上昇リスクがつきまとうため、米政府は今後、きわめて難しい対応を迫られそうだ。


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NO.207  2008/06/28(土) 日本経済新聞より

 NY原油 一時142ドル台
 最高値更新、上昇続く


 【ニューヨーク27日共同】
 26日のニューヨーク・マーカンタイル取引所の原油先物相場は、供給不安から指標となる米国産標準油種(WTI)8月渡しが急騰し、初めて1バーレル=140ドルを突破した。27日の通常取引前の時間外取引でも、世界的な株式下落を受けた資金流入でさらに上昇、一時、1バーレル=142.26ドルをつけ2日連続で最高値を更新、歯止めがかからない状態。

 原油価格は2007年1月時点の1バーレル=約50ドルから2.8倍、100ドルを超えた今年初めと比べても4割上昇した。原油高を背景に食料品などの値上がりも加速、インフレ懸念が強まっており、原油急騰が世界経済を一段と圧迫するのは避けられない情勢だ。

 26日は、リビアが減産を検討中との報道などが買い材料となり、一時前日比5ドル以上急騰。終値も前日比5.09ドル高の1バーレル=139.64ドルでの最高値となった。27日は、主要通貨に対するドル安傾向を材料に、ドル建てで取引される原油の割安感が増し、一気に買い進まれた。通常取引開始後は利益確定の売りが出て、午前9時10分現在は前日比0.20ドル高の1バーレル=139.84ドル。

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NO.206  2008/06/25(水) 日本経済新聞より

 米住宅価格16.3%下落
 4月、主要10都市 下げ幅最大に


 【ニューヨーク=山下茂行】
 米住宅価格の下落に歯止めがかからない。米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が24日発表した4月の全米主要十都市の一戸建て住宅価格は前年同月比で16.3%下落し、1987年の調査開始以来、最大の下げを記録した。信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題を背景に、住宅ローンの焦げ付きや差し押さえが高水準で推移していることなどが影響している。

 発表したのはS&Pが米エール大学のロバート・シラー教授らと共同で開発した「S&Pケース・シラー住宅価格指数」で、一戸建て住宅の売買実績に基づいて算出する。同指数は07年1月から下げに転じ、今年1月から4ヶ月連続で二ケタの下落が続いている。

 対象を広げた「20都市指数」も前年同月比で15.3%下落し、2000年に20都市ベースの調査を開始して以来で最大の下げとなった。住宅価格の下げは全米に広がり、今回の調査では全20都市で下落した。

 住宅バブルが特に激しかったとされる地域での価格下落が顕著で、ラスベガス、ロサンゼルス、サンフランシスコ、マイアミ、などでは下落率が20%を超えたj。ただ、前月比で見るとクリーブランドやボストンなど住宅価格が小幅ながら上昇した地域も一部あった。


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NO.205  2006/06/08(日) 日本経済新聞より

 NY原油 139ドルに急騰

 米経済の変調にグローバルな市場が警戒感を強め、思ってもみない共振現象を起こし始めた。雇用に代表される米景気の悪化や、原油など商品価格の急騰には快刀乱麻を断つ処方せんが見つからない。主要8カ国(G8)の閣僚らは政策の解を探しあぐねている。

 5.5%ショック

 6月6日の5.5%ショック。5月の米失業率が予想外に悪化したのを引き金にダウ工業株30種平均は400ドル近く急落。ドルも売られた。商品先物市場には買戻しが殺到し、原油価格が10ドル余り急騰、1バーレル140ドルに迫ったj。

 日米と中、印、韓のエネルギー相会合は140ドル原油を「異常」と言い切った。雇用悪化の先に、米景気後退と世界経済の減速が控えているとみれば、そのさなかの原油高騰は間尺に会わないはず。新興国の需要増や供給面での制約を考慮しても、年初から40ドルもの上昇は実体経済とのバランスを失している。

 商品市況の高騰の裏側にあるのは米国発の金融不安だ。危機を封じ込めるため米連邦準備理事会(FRB)が昨年来、利下げを重ね、金融緩和で供給されたマネーが原油市場などに流れ込んで、世界的なインフレ心理を醸成した。FRBはリスクに気づき、軌道修正に動き出していた。

3日、バーナンキFRB議長は真正面からドル安をけん制した。米国内の物価上昇に火をつけかねないと警戒し、ドル安と原油高の悪循環に歯止めをかけようとしたのだ。だが、インフレ懸念に直面しているのは欧州も同じ。欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁が5日、利上げを示唆し、ドル安・ユーロ高を誘発する結果になったことで、バーナンキ発言は帳消しになった。

 そこへ6日の米失業率の上昇である。金融機関のリストラが本格化したうえ、消費不振からサービス業の雇用も落ち込み、FRBが利上げなどできる環境ではないいことがはっきりした。インフレと雇用悪化というジレンマに直面した米当局は身動きが取れない――。米欧の市場ではこんな警戒感がパッと広がった。

 現状は一見すると不況下の物価高(スタグフレーション)に見舞われた1970年代の石油ショック当時に似ている。だが米国など主要国の賃金は落ち着いたままで、二ケタの賃金上昇がインフレに拍車をかけた70年代と根本的に違う。日本が典型的だが、企業による原材料コスト上昇分の価格転嫁はあまり進まない。

 商品価格の上昇で懐の潤った資源国向けに、日米欧などからの輸出が増えていることで、これまでのところ世界的な資金の循環には支障は来たしていない。グローバル経済は、カエルを入れた水を徐々に熱しているような「ゆでガエル」状態にある。

 どの国がまず音を上げるか試す局面で、明らかに米国のきしみが大きくなりだした。減税や利下げの即効性には疑問符が付く。雇用悪化が景気全体の足を引っ張るようだと、金融の世界でも米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)ばかりでなく、90年代の日本のように不況型の不良債権が膨張しかねない。

 住宅ローンの焦げ付きや金融システム自体にメスを入れる政策が米国の課題だが、実際には、「金融危機の最悪期は終わった」が官民の合言葉になっている。大阪で開くG8財務相会合でも、米経済に焦点を当てた処方せんを書くのは難しそう。市場はますますもどかしさを募らせかねない。
(編集委員 滝田洋一)

 

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NO.204  2006/06/06(金) 日本経済新聞より

 東南ア、金融引き締め強化
 インフレ加速、景気減退も


 (ハノイ=長谷川岳志)
 東南アジア各国が原油価格高騰などによるインフレ加速に直面金融引き締めを一段と強化している。インドネシアとフィリピンの中央銀行は5日利上げを発表、ベトナムも相次ぐ利上げの影響で株価下落に拍車がかかっている。食料やエネルギーの国際価格の高まりで当面はインフレ基調が変わらないとみられ、景気への影響や社会不安につながる懸念も出ている。

 インドネシア中央銀行は5日、政策金利の誘導目標(中銀短期証券1ヶ月利回り)を年8.25%から同8.50%に引き上げた。フィリッピン中銀も同日、政策金利を0.25%引き上げた。

 5月下旬に石油製品を大幅に値上げしたインドネシアではインフレ率が年内に12%台にまで上昇するとみられ、政策金利も二ケタに引き上げる公算が大きい。

 ベトナムは5月の消費や物価上昇率が前年同期比25%超に達した。世界貿易機関(WTO)加盟を機に大量に資金が流入したうえ、低金利政策を続けたため、「バブル」状態となった。金融当局は昨年後半から不動産向け融資の総量規制などを強化、今年2、5月と立て続けに政策金利の大幅な引き上げに踏み切った。これを受け株価の下落傾向は一段と高まり、ホーチミン株式市場の株価指数VNインデックスは昨年三月に付けた史上最高値の三分の一の400ポイント割れまでに落ちた。

 マレーシアは5日にガソリン41%、軽油63%の値上げを実施、中銀の利上げのタイミングに関心が集まっている。タイ中銀も7月に金利引き上げに転じるとの見方も出ている。

 アジア開発銀行(ADB) は4月にアジア地域(日本など域内先進国を除く)の今年の実質国内総生産(GDP)を前年比7.6%と予想しているが、インフレ加速で景気が急減速する可能性が大きくなっている。物価上昇への不満からデモやストライキも発生しており、貧困層を抱える各国の社会不安の引き金になるのと指摘も出ている。

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NO.203  2008/06/04(水) 日本経済新聞より

 米金融政策、踊り場に
 インフレ懸念無視できず


 (ワシントン=藤井一明)
 米国の金融政策は踊り場を向かえる見通しとなった。昨年八月に信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題で市場が動揺してから急激な利下げを続けてきたが、原油高やドル安を背景にインフレ懸念が無視できないところまで高まり、政策を打ち出しにくい状況となったためだ。米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長は3日の講演でドル安に歯止めをかける意思もちらつかせた。

 為替相場について通常なら「推移を注視する」程度にとどめる議長が、ドル安について「輸入物価や消費者物価の歓迎できない上昇を招いている」と踏む込むのは異例だ。中央銀行が現状水準への不満を示した形で、市場もドル高の方向に反応した。

 米国経済の足元がぐらついていることに変わりはない。昨年10―12月、今年1―3月と2四半期続けて実質国内総生産(GDP)の成長率は一パーセントにも届かなかった。議長が描く年後半からの回復シナリオも、緊急減税などの効果を楽観的に織り込むことで実現を目指す弱みを抱える。米証券大手の格下げやトップの退任、中小金融機関で続発する破綻など金融システムもなお波乱含みだ。

 それでも適度な成長と物価の安定に資するとして、金融政策の現状を追認せざるを得ないところにFRBの苦悩がある。ガソリンや食品の値上がりから米国民の生活不安が膨らむ中、物価上昇をあおりかねない利下げのカードは切りにくい。

 利下げ休止の示唆は、一時の危機が後退した金融市場を心の支えに、しばらくは様子見を続けるしかないFRBの選択肢の狭さを映し出している。

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NO.202  2008/05/23(金) 日本経済新聞より

 NY原油 一時初の135ドル台
 景気に一段の逆風
 企業業績下押し 想定価格100ドル前後
 130ドル続けば利益2.8%減 140ドルなら3.7%減


 原油価格の高騰が加速し、日本経済への逆風が一段と強まってきた。22日のニューヨーク原油先物相場は通常取引前の時間外取引で一時、1バーレル135.09ドルまで上昇して最高値を更新。足踏みを続ける国内景気の足かせになっている。航空や製紙業界を中心に企業業績を押し下げ、電気やガソリン価格の更なる上昇を通じて家計にも影響を及ぼしそうだ。

 WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)期近の七月物は前日に需給逼迫懸念などから4ドル以上も急伸。22日朝も高値圏で推移、その後は利益確定の売りで一時131ドル台まで下げた。1月2日に100ドルをつけてから110ドルまで2ヵ月半、120ドルまでさらに2ヶ月弱を要したが、そこから2週間余りで130ドルを突破。1年前の2倍強に達している。

 原油高は企業収益を下押しする。日本経済新聞デジタルメディアの総合経済データバンク{NEEDS]の試算では、2008年4月−6月期以降、原油価格が130ドルで推移した場合、08年度の経常利益は100ドルのケースに比べ2.8%押し下げられる。140ドルになれば押し下げ幅は3.75に広がる。

 航空・製紙に打撃

 業種別で打撃が大きいのは航空業界。燃料の国際指標となるシンガポールケロシンは直近で1バーレル160ドル超に上昇。日本航空と全日本空輸の09年3月期の想定価格(110―119ドル)をすでに大幅に上回っている。日航の今期の燃料費は前期に比べ970億円増える見通し。4月末時点で年間調達量の66%の価格を確定済みだが、このまま現状の高値が続けば未確定部分の調達コストが膨らみ、さらに700億円弱の負担増となる見通し。3月末時点で80%を予約済みの全日空は、今期の負担増についてはコスト削減などで吸収可能とみているが、「来期以降の経営は厳しい」(山元峯生社長)

 重油を燃料に使う製紙業界も影響は大きい。王子製紙は今期の原油価格を100ドル(ドバイ原油)と想定しており、1ドルの上昇で経常利益が4億円減る。直近の水準で単純計算すると、すでに百億円近い減益要因となっている。日本製紙グループ本社は王子製紙よりさらに低い価格を想定。輸入価格の低下という円高メリットもあるが、それ以上に価格上昇が響く。

 商社など追い風

 一方、石油元売や商社にとっては原油高は業績押し上げ要因となる。石油各社は今期の原油価格(ドバイ)を93―96ドルと足元の価格より低く想定。原油価格が上がると、会計上の利益のかさ上げ(在庫評価益)が発生する。原油が1ドル上がると、新日本石油では在庫評価益が50億―70億円増える計算。海外油田権益を持つ大手商社5社は今期もそろって最高益になる見通しだ。

 年金など長期マネー流入

 原油市場で需給逼迫の長期化懸念が強まり、年金基金など長期に運用するマネーの流入が加速している。世界的な低金利を背景に、余剰マネーが決済期限の近い期近物からあふれ出して超長期先物に流れ込み、八年先に決済期限を迎える2016年物まで140ドル台に上昇。これが相場全体の急騰を主導している。

 21日の米市場では16年物が前日比4ドル弱高の142ドル台に急騰した。月初めからの上げ幅は35%。七月に期限を迎える期近物の上げ幅19%を大きく上回る。ばんせい証券の武田真市場調査室長は「ヘッジファンドの短期マネーに加え年金基金や商品指数ファンドなど長期マネーが流入している」とみる。

 一年以内で運用する短期マネーが期近物に投資して短期で収益を得るのに対し、長期マネーは3年後、5年後といった見通しを基に運用。この一部が超長期先物の相場を押し上げている。5月初めまでは長期先物の価格の方が短期より安い「期近高・期先安」が続いてきたが、今では長期の方が高い「期近安・期先高」に構図が変わり、先高感が強まっている。

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NO.201  2008/05/06(火) 日本経済新聞より

 NY原油 初の120ドル台
 4ヶ月で20ドル上昇
 需給逼迫懸念高まる
 投機マネー流入


 (シカゴ=毛利靖子)
 5日のニューヨーク原油先物相場は一時、一バーレル120.21ドルまで上昇し、4月27日夜間に付けた最高値(119.93ドル)を更新した。イランがウラン濃縮停止を拒否し米欧との間に緊張が高まるとの不安感が台頭。アフリカの主要産油国ナイジェリアで武装勢力が原油生産施設を爆破したとの情報も伝わり、需給逼迫懸念から投資マネーが原油先物への買い注文を膨らませている。

 ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)の原油先物市場で指標となるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)期近の6月物は一時、前週末比3.89ドル高い1バーレル120.21ドルまで上昇。その後は利益確定売りが出て、正午(日本時間6日午前一時)現在、前週末比3.46ドル高い一バーレル119.78ドル

 原油先物価格は1月2日に初めて1バーレル100ドルの大台を突破。3月12日に初めて110ドルを付け、5日に120ドル台に乗せた。金融機関がオプション取引などを使って活発に売買し、原油先物相場の上昇も加速。110ドル台から120ドル台へ上昇するまで、2ヶ月を切るスピードとなった。

 原油生産施設の爆破が伝えられたナイジェリアの原油はガソリン生産に適しており、米国の主要な原油調達先となっている。


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NO.200  2008/05/01(木) 日本経済新聞より

 米景気低迷、長期化の懸念
 1-3月 実質0.6%成長
 消費伸び悩み鮮明


 
【ワシントン=藤井一明】
 米経済の低迷が長引く恐れがでてきた。30日発表の1―3月の国内総生産(GDP)の実質成長率は前期と同じ0.6%にとどまった。在庫投資の拡大などにより、かろうじてマイナス成長を回避したものの、景気低迷が続いていることを裏付けた。特に個人消費の伸び悩みが鮮明となり、今後も原油や食品の値上がりなど消費の浮上を阻む要因が待ち構える。財政・金融両面からのてこ入れに期待せざるを得ない状況だ。

 在庫拡大 マイナス成長回避

 ゼロ%台の低い成長率が2・4半期続くのは、ゼロ%からマイナスで推移した1990年7―9月から91年1―3月以来、ほぼ十七年ぶり。信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題の影響が広がり、米国は近年でまれな景気減速を経験している。

 今年1―3月の0.6%の成長率に対し、個人消費がどの程度押し上げたかを示す寄与度は0.68ポイントにとどまった。これは2001年4―6月(0.67ポイント)以来、6年9ヶ月ぶりの低水準。耐久消費財の消費に限ると前期に比べ6.1%減り、寄与度もマイナス0.48ポイントに沈んだ。サービス部門が3.4%伸びなければ、GDPの約七割を占め、米景気のエンジン役を長く努めてきた消費の腰折れもあり得た。

 逆に1―3月に拡大したのは在庫投資だ。1ポイント近く成長率を押し上げ、プラス成長の維持に寄与した。ただ、在庫投資は4半期ごとの振れが大きく、積み上がりには受注のキャンセルなど企業活動のマイナス材料が潜む可能性もある。

 先行きは予断を許さない。ガソリンや食品の値上がりが懸念材料の筆頭で、行楽のためのドライブや耐久財の購入を手控える動きが広がりかねない。年明けからの労働市場の冷え込みが将来への不安を増幅する恐れも膨らむ。

 クレジットカードや学生向けのローンについては貸し倒れの急増から融資態度がきつくなるとの見通しが多い。

 住宅投資は底を打つどころか、むしろ深刻さを増した。1―3月の減少幅(26.7%)は前期よりも1.5ポイント拡大。20%を越す大幅な減少は3・4半期連続となった。住宅価格が反転する兆しも見えてこない。

 国際通貨基金(IMF)は08年の米国の成長率について0.5%と予測し、マイナス成長だった91年以来、17年ぶりの低迷を見込む。米政府は「悲観的すぎる」(財務省)と反発するが、起点となる1―3月はIMFの見解に沿う。

 当面の頼みの綱は政府と議会が緊急にまとめた減税と米連邦準備理事会(FRB)の連続利下げによる需要の下支えに限られる。ブッシュ政権は個人への小切手郵送などの手続きを早めて今週から始めるなど、減税の効果が4―6月に及ぶよう配慮している。

 ただ生活防衛のため減税の大半が貯蓄に回ったり、収益減におびえる企業が設備投資を見合わせたりすると、政府やFRBが描く「低成長は年前半の短期にとどまる」シナリオが崩れる。日本も含め世界経済の下押しも避けられない。


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NO.199  2008/04/25(金) 日本経済新聞より

 米住宅販売、3月8.5%減
 新築、16年半ぶり低水準


 【ワシントン=米山雄介】
米商務省が24日発表した3月の新築一戸建て住宅の販売件数は年率換算(季節調整済み)で52万6千戸となり、前月比で8.5%の大幅減となった。市場予測平均(58万戸)を大きく下回り、前年同月比では36.6%のマイナス。1991年10月(52万4千戸)以来、約16年半ぶりの低水準に落ち込んだ。

 前月比での減少は五ヶ月連続。在庫戸数は46万8千戸と前月比では1.1%減少したが、在庫の販売戸数に対する比率は11.0ヶ月分まで膨らみ、81年9月以来、26年半ぶりの高水準になった。
 

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NO.198  2008/04/09(水) 日本経済新聞より

 金融機関 損失97兆円に
 IMF推計、今後2年で
 サブプライム問題が直撃
 G7で対策議論


 
国際通貨基金(IMF)は8日発表した。「世界金融安定性報告」で米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題による世界の金融機関の損失が約九千四百五十億ドル(約九十七兆円)にのぼると推計した。同報告は公的関与の必要性を指摘。11日にワシントンで開かれる七カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は同報告をたたき台に金融安定化を議論する。

 昨年十月の前回報告では金融機関のサブプライム関連の損失を二千四百億ドルと推計したが、その後の住宅価格の一段の下落に加え、試算の対象を商業不動産担保融資などに広げたため、損失額が大きく膨らんだ。今回はサブプライム問題が表面化した昨年から、今後2年間に生じる可能性のある潜在的な損失を三月時点で推計した。

 報告は国際金融市場の現状を「リスクは以前高水準」と指摘。金融機関が住宅ローンと関連証券で被る損失は約五千六百五十億ドルに達する可能性があると試算した。これに商業用不動産の値下がりで生じる損失などを加えた額が約九千四百五十億ドルにのぼるとしている。
(ワシントン=米山雄介)

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NO.197  2008/03/26(水) 日本経済新聞より

 地価変調(上)
 冷水浴びたマンション需要

 
住宅地上昇、消費者が離反

 地価に変調の兆しが出てきた。2008年1月時点の公示地価は2年連続で上昇したが、07年後半から都心部などで伸び率が鈍った。一部では「すでに調整局面」との声が出ている。マンション販売や再開発など地価の現場を探った。

 「800万円値引き」

 「最大800万円値引きします」―― 。 東京都東村山市で建設が進む大型マンション。総戸数四百六戸を昨年7月から順次、売り出したが、立地や価格の高さが敬遠され、今年三月の完成を前に大幅な値下げを始めた。

 ここ2年間、地価と建築コストの上昇が原因で、マンション価格は急上昇した。民間の調査機関、トータルブレイン(東京・港)によると06年から2年間のマンション価格の上昇率は東京23区で30〜40%、埼玉や千葉でも25%に達する。

 それでも昨年半ばまでマンションは売れた。金利が今後高くなるとの見方に加え、昨年の参院選までは消費税が上がるとの観測があった。株高による資産効果や投資マネーも住宅価格を押し上げた。

 マンション事業者は強気の土地仕入れを続けた。今後も団塊や団塊ジュニアの世代による旺盛な需要が続くとの読みだ。

 だが昨年夏米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題で株価が冷え込むと、顧客が離れ始める。首都圏の契約率は8月以降、近畿圏でも今年1月以降、好不調の目安となる70%を連続して割り込んだ。高値で仕入れた土地に高騰した資材価格を上乗せした販売価格が消費者から嫌われた。金利の先高感や消費税導入の観測も薄れ、購入を急ぐ動きはなくなった。

 手ごろな価格さえ示せばマンションの需要はある。川崎市の武蔵小杉では06年から08年にかけ、三井不動産など各社が一千から二千戸のマンションを供給したが、売れ行きは比較的堅調だ。周辺で地価は前回調査に比べ10%超上がり、商業施設の開発意欲などは今も強い。

 ただ健闘しているマンションはごく一部。改正建築基準法の影響でマンションの完成が遅れ、新規発売戸数は減少。07年の首都圏の新規発売戸数は前年比18.1%減で、14年ぶりの低水準。それでも年末の販売在庫は積みあがり、5年ぶりに一万戸を突破した。

 「地価は今年いっぱい下落する」(中堅のマンションデベロッパー)。今では首都圏の事業者の間ではこんな見方が主流だ。東京・大田区が地盤のアゼルでは昨年10月ごろから無理な用地の仕入れを中止。今年6月末までに社員の2割強に当たる40人を削減する。

 顧客の目厳しく

 マンション事業者の土地取得意欲も弱まる。都心から30キロ圏の郊外の用地価格は足元で下落し始めた。大手ゼネコンによると昨年前半、4倍程度だった入札倍率は最近は1〜2倍程度で低迷した。

 マンション需要は大都市圏の住宅地価の上昇をけん引してきた。だが「マンション価格に対する顧客の目は以前にも増して厳しい」(東急不動産の植木正威社長)。家計所得が伸びない中、消費屋が買いやすい価格帯まで調整は続きそうだ。

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NO.196  2008/03/14(金) 日本経済新聞より

 マンション発売 15年ぶり低水準
 2月の首都圏28%減
 消費者の買い控え鮮明
 三菱地所など販売抑制


 不動産経済研究所(東京新宿)が13日発表した2月のマンション市場動向によると、首都圏の新規発売戸数は前年同月比28.0%減の三千四百六十戸だった。2月では1993年(三千二百七十一戸)以来の低水準で、売れ行きを示す契約率も好不調の目安である70%を割り込んだ。デベロッパー各社が用地・建築費の上昇分を販売価格に転嫁した結果、買い控えが鮮明になっており、三菱地所や藤和不動産など大手は新規発売を抑え始めた。

 首都圏でマンションの新規発売戸数が前年を割り込むのは六ヶ月連続。昨年11月(前年同月比43.6%減)以来の大幅な落ち込みとなった。

 近畿圏も34.4%減の二千二百二十六戸と、98年(二千百四十三戸)以来十年ぶりの低水準。

 契約率は首都圏が前年同月比17.4ポイント低下して60.1%。近畿圏も同7.7ポイント下がり、63.1%になった。不振の理由は「販売価格の高騰に顧客がついてこられない」(デベロッパー大手)ことだ。二月の販売単価(1u当たり)は首都圏が前年同月から5.5%上がり64万8千円、近畿圏も同6.0%上昇し47万4千円になった。販売価格が前年同月を上回るのは首都圏が18ヶ月、近畿圏は6ヶ月の連続となる。

 市場低迷は各社の販売を直撃している。三菱地所は07年度に当初四千三百戸を新規発売する予定だったが、昨年六月の改正建築基準法施行で着工に一部遅れが生じたことに加え、需要回復に時間がかかると判断、最終的に1千戸以上抑制する見通し。藤和不動産も当初四千三百戸だった08年度の発売計画から大幅に下振れするもようだ。

 業界では「本格回復までに一年以上かかる」(不動産経済研究所)との見方が出ている。消費者を呼び戻すには販売価格の引き下げが必要となるが、中小・中堅のデベロッパーやマンション業者には余力のない企業も少なくないため、淘汰が進む可能性がある。

 
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NO.195  2008/02/28(木) 南日本新聞より

 世界人口の半数 33億人都市集中
 08年末、国連
 東京圏が最大


 (ニューヨーク26日共同)
 国連経済社会局は26日、今年末までに世界人口の半数に当たる三十三億人超の人々が都市部に集中して居住するようになるとの推計を発表した。アジア、アフリカを中心に都市人口は今後も膨張、2050年には世界人口(推定九十二億人)の約三分の二(推計六十四億人)が都市部に集中する見通し。農村部の人口減とともに、都市部では社会、経済面のインフラ整備などの課題が深刻化しそうだ。

 推計によると、世界最大の都市圏は現在、三千六百万人(07年)の東京圏で、25年時点も同規模を維持し「世界一」の座を守る見通し。現在は東京圏に次ぎニューヨーク・ニューアーク圏、メキシコ市、インドのムンバイなどが上位だが、25年にはムンバイやバングラデシュのダッカなど南アジアの大都市の急増が目立ちそうだ。


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NO.194  2008/02/09(土) 日本経済新聞より

 国富 9年ぶり増加
 06年末、2.9%増の2716兆円
 資産デフレ 底入れ反映


 
内閣府が8日発表した2006年度の国民経済計算(確報)によると、土地や建物などの資産から負債を差し引いた国の正味資産(国富)は06年末時点で二千七百十六兆六千億円と、前年末に比べて2.9%増えた。増加は9年ぶり。地価の上昇を受けて土地の資産額が1990年以来、16年ぶりに増え、バブル経済後の資産デフレの底入れを反映した形だ。

 国民経済計算は国の経済活動を体系的に示す統計で、今回の確報は企業の決算所にあたる。

 06年末の国富の内訳をみると、土地資産が千二百二十八兆円で、前年末比で0.5%増加した。90年に二千四百五十二兆円と過去最大になってから、地価の下落とともに十五年連続で減少が続いていたが、土地の価値が目減りする資産デフレはひとまず終わった。

 金融資産のうち株式資産は七百二十五兆円。株値上がりに伴う価値の上昇で四年連続で増えた。ただ増加額は一千億円にとどまり、国富の伸びに対する貢献度は小さかった。

 国富のピークはバブル期にあたる90年の三千五百三十三兆円。土地資産額の前年比伸び率が86年に25.1%に達した後、89年まで二ケタの伸びが続き、国富が膨らんだ。

 91年に減少に転じ、96年(前年比0.8%増)と97年(0.5%増)を除くと、減少が続いていた。

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NO.193  2008/01/23(水) 日本経済新聞より

 米、0.75%緊急利下げ
 景気悪化回避狙う
 FF金利3.5%に
 市場混乱を懸念


 
【ワシントン=小竹洋之】
米連邦準備理事会(FRB)は22日、最重要の政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を緊急に0.75%引き下げ、年3.5%とすることを決めたと発表した。信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題を発端とする米景気の後退や世界同時株安に歯止めをかけるため、異例の大幅利下げに踏み切った。ブッシュ大統領が表明した景気対策と協調し、財政・金融政策を総動員して米経済の危機回避を目指す。市場では根本的な問題解決になりにくいとの見方から、同日の米株式が一時460ドル下落するなど不安定な動きをしている。

 緊急利下げ後に発表した声明は「景気下振れリスクがかなり残る。必要に応じ迅速に行動する」と指摘。29、30日に開く定例の米連邦公開市場委員会(FOMC)でも一段の金融緩和に踏み切る可能性を示唆した。
 
 FRBは21日夕、臨時のFOMCを開き、0.75%の緊急利下げを賛成多数で決定。22日朝に正式発表し、即日実施した。FF金利引下げは、四年三ヶ月ぶりの金融緩和に転じた昨年九月から連続4回目。FF金利変更が金融政策運営の主流になった1990年代以降、一回で0.75%の大幅利下げを決断したのは初めて。臨時FOMCによるFF金利の緊急利下げは、米同時テロ発生直後の2001年9月以来となる。
 
 金融機関向けの貸出金利である公定歩合も0.75%引き下げ、年4%とした。91年12月の1%以来の大幅な利下げ。昨年8月の緊急利下げから連続5回目の引き下げとなった。

 22日の声明は世界的な株安などを受けて「金融市場の状態は幅広く悪化してきた」と指摘。「景気下振れのリスクが高まった」と判断し、月末の定例FOMCを待たずに大幅な追加利下げを実施したと説明した。

 米国では市場の混乱や信用の収縮が予想以上に長引き、01年以来の景気後退局面に突入するとの懸念が広がる。米景気への不安を背景に各国市場で株安が加速し、米国発のサブプライム問題が世界経済全体の危機に発展する恐れも出てきた。

 FRBのバーナンキ議長は原油高などによる物価上昇圧力の高まりも警戒し、1%ではなく0.75%の利下げを決断したもようだ。FRBは大量の資金供給も続行し、危機回避に全力を挙げる構えだが、流動性の維持と金融緩和では問題を解決できないとの見方も出ている。


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NO.192  2008/01/04(金) 日本経済新聞より

 原油、一時100ドル NY市場
 投機マネー、商品へ
 穀物急騰 金、現物で最高値


 【シカゴ=毛利靖子】
 二日のニューヨーク原油先物市場で、代表的指標であるウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)が急騰し、初めて1バーレル100ドルを付けた。ナイジェリアなどの政情不安に伴う需給逼迫感を背景に、投機マネーが原油や金、穀物の国際商品市場に流入し、米株式とドル相場が急落した。三日のWTIは99ドル台で推移している。信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題で米景気が減速する中で、原油高は世界経済の不透明さを強めることになりかねない。

 ドル急落、一時108円台
 
 ニューヨーク・マーカンタイル取引所のWTIの二月物は二日正午(日本時間三日午前二時)すぎに、昨年十二月三十一日より4.02ドル高い100ドルを付け、最高値を更新した。終値は99.62ドルで、06年末から約六割上昇した。WTIは三日早朝の時間外取引で99.98ドルまで上げた後、通常取引では99ドル台で推移している。

 最近の原油高はヘッジファンドなど投機マネーが主導している。二日の市場では、ナイジェリアなど産油国やパキスタンの政情不安、米国の石油在庫の減少を手がかりに、ファンドなどは指標原油であるWTIに資金を集中、企業の景況感を示す米サプライマネージメント協会(ISM)の製造業景況感指数が予想を下回ったため、米景気悪化の見方からドル安が進み、ドル建て取引の原油に割安感が出てきたことも買いを促した。

 原油相場は1970年代の二度の石油危機で高騰した後、1990年代終わりに1バーレル10ドル台に下がった。2004年以降、中国やインドなど新興国の需要増を背景に相場が上昇。04年9月下旬に50ドルを突破した。

 ドル安を受け、マネーは金や穀物などの国際商品にも流れている。金相場の国際指標であるロンドン市場の金現物価格が三日、一トロイオンス865ドル台に乗せ、二十八年ぶりに最高値を更新した。大豆,小麦など穀物も大幅上昇。国際商品の総合的な値動きを示すロイター・ジェフリーズCRB指数(1967年平均=100)は、二日時点で昨年末に比べて8.15ポイント高い366.86と最高値をつけた。

 サブプライムローン問題が米国景気に波及している中で、原油高はガソリンや暖房湯価格の上昇につながり、消費にさらにプレーキをかけかねない。急成長を続ける新興国など世界経済に影響を与える恐れもある。

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